櫻井翔~青春群像劇から“違和感”を与える怪演まで 体温の変化をも感じさせる俳優
銀幕のジャニーズ
映画で活躍する銀幕ジャニーズの俳優としての面に注目して、デビュー作から最新作まで、どんな俳優なのかを見ていきます。第22回は、櫻井翔。(文・新亜希子)
1999年、嵐のメンバーとしてCDデビュー。2006年の映画『ハチミツとクローバー』にて単独初主演を果たす。同年には報道番組「news zero」の月曜キャスターに就任。アイドルとしてのみならず、マルチに活動している。
映画デビュー作:『ピカ☆ンチ LIFE IS HARD だけど HAPPY』(2002年10月18日公開)鴨川忠(チュウ)役(当時20歳)
グループでの初主演映画。東京・品川にある架空のマンモス団地・八塩団地に住むくされ縁の5人組の青春を描いた。櫻井が演じたのは、八塩限定老舗原付バイク暴走族「鮫洲一家」の第二十五代ヘッド、リーゼント頭のチュウ。青春時代ならではのバカバカしさや、2002年当時の時代を感じるアイテムが、今振り返れば眩しい作品。V6・井ノ原快彦の青春時代を原案としており、井ノ原自身もチュウの兄役で出演している。堤幸彦監督らしい遊びも散りばめられている。
ドラマデビュー作:「熱血恋愛道」第9話(1999年3月7日)武内アキラ役(当時17歳)
星座と血液型をキーとした、ジャニーズJr.出演のオムニバスドラマ。各回の主人公には、嵐の相葉雅紀、二宮和也、松本潤ほか、生田斗真や長谷川純、横山裕や村上信五ら、当時の人気ジャニーズJr.メンバーが名を連ねている。櫻井は第9話にて、主人公である牡羊座×AB型男子を演じた(※星座・血液型による性格傾向は本作オリジナルのものであり、櫻井のプロフィールとは異なる)。
映画俳優としての主な活躍:
『ピカ☆ンチ』シリーズ、『ハチミツとクローバー』『黄色い涙』とさまざまな若者像を演じ、俳優としてもアイドルとしても貴重な青春時代をスクリーンに残した。宮藤官九郎作品『木更津キャッツアイ』シリーズも、笑いあり涙ありの青春が描かれている。本作で演じたバンビは、櫻井にとって当たり役のひとつといえる。20代最後の映画作品『神様のカルテ』では抑えた演技を見せて、作品の深みを伝えた。いずれの作品もビジュアル面から役をつくっており、それゆえ印象に残るキャラクターが生まれている。
ドラマでは、メッセージ性の強い作品やコメディータッチの作品にも出演する一方でクセのある難役も多く、ときに怪演ともいえる演技を見せてきた。腹に一物ある役、壮絶な過去をもつ役、プツンと切れたように感情を爆発させる役……主人公でありながら「なにを考えているのか」「信用して良いのか」と視聴者にある種の違和感を与える演技が得意だ。
『謎解きはディナーのあとで』シリーズや最新作『ラプラスの魔女』、ドラマ「ネメシス」など、どこかリアルでない世界の住人が似合うのも、それをリアルに見せるのも、櫻井翔の個性と力量である。
最新作:『ラプラスの魔女』(2018年5月4日公開) 青江修介役
人気作家・東野圭吾のベストセラー長編小説を実写化。物語のはじまりは、温泉地で起こった硫化水素中毒による初老男性の死亡事件。刑事の中岡(玉木宏)は、妻による遺産目当ての殺人を疑うが、地球化学の専門家・青江(櫻井)は事件性を否定する。しかし数日後、被害男性の知人が、別の地方都市で硫化水素中毒により死亡。自然現象下での硫化水素中毒死を連続殺人と仮定するならば、犯人は自然現象を正確に予測できる人間ということになる。
行き詰まる青江の前に現れたのは「ラプラスの魔女」を自称する謎の女・円華(広瀬すず)。円華は青江の目の前で、これから起こるできごとを予知。さらには、硫化水素の性質についてもスラスラと語る。円華とともに、事件の秘密を知るという謙人(福士蒼汰)を捜すうち、青江は第三の事件に巻き込まれていく。
三池崇史監督とは2009年3月公開の『ヤッターマン』以来のタッグ。プロデューサー、CGチームも同じだったという。また、本作で初共演となった広瀬すずとは、2021年4月期のドラマ「ネメシス」でダブル主演を務めている。
フィルモグラフィー(映画)
『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』(2002年10月18日公開)鴨川忠(チュウ)役(嵐初主演映画)
『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(2003年11月15日公開)中込フトシ(バンビ)役(主題歌は嵐の「a Day in Our Life」)
『ピカ☆☆ンチ LIFE IS HARDだからHAPPY』(2004年3月1日公開)鴨川忠(チュウ)役(前作から3年後の5人を描いた)
『ハチミツとクローバー』(2006年7月22日公開)竹本祐太役(人気漫画の実写化作品。エンディングテーマは嵐の「アオゾラペダル」)
『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』(2006年10月28日公開)中込フトシ(バンビ)役(シリーズ完結編)
『黄色い涙』(2007年4月14日公開)向井竜三役(ボサボサ頭とメガネ姿、京都弁で小説家を演じた)
『ヤッターマン』(2009年3月7日公開)ヤッターマン1号(高田ガン)役(「タイムボカンシリーズ」作品初の実写映画化)
『神様のカルテ』(2011年8月27日公開)栗原一止役(夏川草介の小説を実写化)
『映画 謎解きはディナーのあとで』(2013年8月3日公開)影山役(人気ドラマの劇場版)
『神様のカルテ2』(2014年3月21日公開)栗原一止役(前作同様、長野県松本市を中心に撮影が行われた)
『ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARD たぶん HAPPY』(2014年8月~12月、5都市にて公開)鴨川忠(チュウ)役(30代となった5人が再会するスピンオフ作品)
『ラプラスの魔女』(2018年5月4日公開)青江修介役(地球化学の教授役として、講義を行うシーンも)
フィルモグラフィー(ドラマ)
「熱血恋愛道」第9話(1999年3月7日)武内アキラ役
「Vの嵐」(1999年10月11日 - 29日)櫻井翔役
「2000 FNSの日27時間テレビ~家族 愛Love You」ドラマスペシャル「父さん」(2000年7月8日)大村彰役
「天国に一番近い男 教師編」(2001年4月13日 - 6月29日)藤堂あゆみ役
「少年タイヤ」名作劇場ドラマシリーズvol.3「青木さん家の奥さん」(2002年1月8日 - 全4回)ショウ役
「木更津キャッツアイ」(2002年1月18日 - 3月15日)中込フトシ(バンビ)役
「よい子の味方 新米保育士物語」(2003年1月18日 - 3月15日)鈴木太陽役
「池袋ウエストゲートパーク スープの回」(2003年3月28日)中込フトシ(バンビ)役
演技者。「蝿取り紙~山田家の5人兄妹」(2003年10月14日 - 11月11日)山田陽平役
「ドラマスペシャル ナースマン」(2004年4月6日)岩田正也役
劇団演技者。「アンラッキー・デイズ~ナツメの妄想~」(2004年4月13日 - 5月18日)カントク役
「トキオ 父への伝言」(2004年8月30日 - 9月30日)宮本時生役
「ヤンキー母校に帰る 旅立ちの時」(2005年3月27日)義家弘介役
劇団演技者。「石川県伍参市」(2005年6月28日 - 7月26日)川瀬ジュン役
「世にも奇妙な物語2007 春の特別編」の「才能玉」(2007年3月26日)太田真和役
「山田太郎ものがたり」(2007年7月6日 - 9月14日)御村託也役
「歌のおにいさん」(2009年3月6日)櫻井翔役
「ザ・クイズショウ」(2009年4月18日 - 6月20日)神山悟役
「マイガール」(2009年12月11日)佐藤役
「最後の約束」(2010年1月9日)富澤友紀夫役
「阪神・淡路大震災から15年 神戸新聞の7日間 ~命と向き合った被災記者たちの闘い~」(2010年1月16日)三津山朋彦役
「特上カバチ!!」(2010年1月17日 - 3月21日)田村勝弘役
「謎解きはディナーのあとで」(2011年10月18日 - 12月20日)影山役
「もう誘拐なんてしない」(2012年1月3日)影山役
「謎解きはディナーのあとで スペシャル」(2012年3月27日)影山役
「ブラックボード ~時代と戦った教師たち~/第一夜 軍国主義[未来]」(2012年4月5日)白濱正平役
「パパドル!」(2012年4月19日)櫻井翔役
「家族ゲーム」(2013年4月17日 - 6月19日)吉本荒野/田子雄大役
「謎解きはディナーのあとでスペシャル~船上探偵・影山」(2013年7月30日 - 8月2日)影山役
「謎解きはディナーのあとでスペシャル~風祭警部の事件簿~」(2013年8月2日)影山役
「大使閣下の料理人」(2015年1月3日)大沢公役
「世界一難しい恋」(2016年6月15日)櫻井翔役
「君に捧げるエンブレム」(2017年1月3日)鷹匠和也役
「先に生まれただけの僕」(2017年10月14日 - 12月16日)鳴海涼介役
「ノーサイド・ゲーム」(2019年9月15日)赤木一輝役
「ネメシス」(2021年4月11日 - 6月13日)風真尚希役