『ピーターラビット2』ドーナル・グリーソン、体張りすぎて脳震とう状態に!壮絶コメディーの舞台裏
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ピーターラビットとマグレガーの仁義なき戦いを描いたハリウッド実写版『ピーターラビット』の続編、『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』がついに6月25日から公開されます。マグレガー役を続投したのは、『スター・ウォーズ』続3部作や『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』でおなじみのアイルランド人俳優ドーナル・グリーソンです。はちゃめちゃなコメディーだからといって、彼が気楽に取り組んでいたと思ったら大間違い! ドーナルがいかに徹底的にマグレガー役を読み込み、全身全霊で撮影に挑んでいたかがインタビューで明らかになりました。(取材・文:編集部・市川遥)
道端で「マグレガーだ!」と言われるようになったドーナル・グリーソン
2018年に公開された前作『ピーターラビット』の反響を身をもって知っていたドーナルは、続編にも喜んで参加したといいます。
「実際に『ピーターラビット』を上映している映画館へ行って子供たちみんなが笑っているのを聞いていたし、道端でも子供たちに『マグレガーだ!』って言われたりするんだ。髪の色も違うのに(笑)(※ドーナルの地毛は赤毛)。彼らがどれだけこの映画を気に入ってくれたかというのを知っていたから、またこのシリーズに戻ってきてマグレガーを演じられたのは素晴らしかったよ。何といっても、第1作の目標は『子供たちをハッピーにすること』だったからね」
ドーナルが役づくりのプロセスで大事にしているのは、アクセントを極めるとともに、そのキャラクターがどういう人間なのか理解する時間を十分に持つこと。『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』では、ひょろっとした体形をキープしつつ、スタントをこなすためのトレーニングも必要となりました。
「僕は彼を以前にも演じているわけだから、彼のアクセント、彼がどんな人物かということはすでに知っていた。必要になったのは、独特なトレーニング。強く見えないようにしないといけないけれど、ケガをすることなくスタントもやらないといけなかったから。そしてウィル(監督のウィル・グラック)と全てのシーンについて徹底的に議論した。これはおかしいシーンなのか、それとも物語を伝えるシーンなのかといったことをね。本作は1作目とはかなり違う作品だから、マグレガーがこの映画でどういう働きをするのかということを理解しないといけなかった。彼はもう、1作目でのような悪役ではないんだ。だから、彼の本作での働きを明確にしていったんだけど、ウィルはとても寛大でそれに付き合ってくれたよ」
本作でのマグレガーとピーターは相変わらず火花を散らしてはいるものの、敵同士ではなく父とティーンエイジャーの息子のような関係に。ドーナルはマグレガーのそんな変化も巧みに演じています。
監督はドーナルを苦しめるのが好き!本編よりずっと壮絶だった撮影
「僕はドーナルが好きで、彼をフィジカルなシチュエーションに置くことで苦しめるのが好き。彼はそうしたコメディーをやるのがものすごく上手いんだ。この映画でもいろいろな場面でそれができるように、機会を探していったよ」と豪語するグラック監督だけに、ドーナルは前作に続いて体を張りまくることに。オープニングの結婚式のシーンから壮絶でした。
「撮影ではもっともっといろんなことをやったんだよ。バルーンで上下逆さまにつるされたり、地面に落ちたり、たくさんの叫び声が上がって、バイオリンで人々の顔面を殴ったり(笑)。1週間にわたって、本当にたくさんの異なる狂気が撮影されたんだ。だから完成した映画を観た時、『何でこれだけしかないんだ!?』と思った(爆笑)。四分の一程度しか使われてなかったんだ(笑)。でもそれでよかったんだと思うよ。だってあれはちょっとした空想シーンだからね」
マグレガーがなだらかな芝生の丘を転がってうさぎたちのように遊ぼうとするも、スピードが出過ぎて悲劇が起きるシーンもドーナル自ら行いました。
「このシーンの撮影後、2日くらいはめちゃくちゃ具合が悪かった。ちょっとした脳震とうみたいな感じだったんじゃないかと思う。僕は本当に速く転がりたくて、本当に何度もやったんだ。でも2回もやると、すっごく気持ち悪くなった。その日の残りの撮影をやるのは本当に大変だったし、その後2日間は何か変だった。記憶力がおかしくなったんだ(笑)。もうめちゃくちゃだったよ。だけど、面白いシーンになってはいたよね(笑)」
ドーナルは単に体を張るだけでなく、それが実際にどのように見えるかという細部にもこだわって撮影を進めており、そこにフィジカルコメディーの奥深さがあると言います。
「僕が撮影中におもしろいと感じても、それがおもしろく見えるとは限らない。あることをやって『うまくできたな』と思っても、モニターで実際の体の形やフレームを見てみると、思ったほどおもしろくない、ということがままあるんだ。そのジョークを本当に成立させたいなら、もっと違う角度やリズムにしなくちゃいけない、ってね。僕はその違いを見つけ出すのがすごく好きなんだ。それにバカげたことに身を投じるのも好き。自分にこうしたことをやる機会があるとは思いもしなかったし、そうしたことが得意だとも思わなかったけれど。だけどそれがうまく行った時には、喜びにあふれるんだ。人々を笑わせるのは素晴らしいことだしね」
告白…うさぎとの共演はあんまり好きじゃない
CGアニメーションのうさぎたちとの共演はこれで2度目。しかし、2度目だからといって簡単になるということは全くなく、「すごく難しかった。彼らとの共演はあんまり好きじゃない」とドーナルはこぼします。
「うさぎを交えたシーンはすごく大変なんだ。時間が余計にかかってアングルがたくさん必要になる上、ちょっとしたことでシーン全体がダメになってしまい、撮り直さないといけなくなる。それ以外がいかに素晴らしく撮れたかは関係ないんだ。だって僕の指がウサギの頭を突き抜けたりしたら、子供たちは楽しいとは思えないだろうからね(笑)。そうした中でやっていくのはすごく難しかったけれど、上手くできた時の満足感はすごくあったね。だから、いいことも悪いこともあるということ。全てのことと同様にね」
一方のグラック監督は「ドーナルは1作目でうさぎとの共演を学び、2作目ではすごく上手くなっていた」と称賛。しかし「うさぎと演じているシーンを見るのは楽しかったよ。彼はすごくストレスがたまっていたから」と苦悩するドーナルを見るのは愉快だったとジョークを飛ばすのも忘れませんでした。
俳優としてのキャリアをどうコントロールしてきたか
本作には、新キャラクターとして大手出版社に勤めるナイジェル(デヴィッド・オイェロウォ)が登場。大金を稼ぐことを第一に考える彼は、マグレガーの妻となったビア(ローズ・バーン)が手掛けたピーターラビットの絵本に目を付け、それを商業的なものに改変しようと甘い言葉をささやきます。ハリウッドの裏側そのものともいえそうな描写ですが、ドーナル自身は仕事でナイジェルのような人間を相手にしなくてはならなかったことはないと言います。
「僕は周囲の人々にすごく恵まれていたんだと思う。一緒に仕事をしてきたのは『ただ、心からいい作品が作りたい』という人たちばかりだったんだ。僕も裏側は知っているし、みんな利益を上げて成功するために仕事をしているのもわかっている。だけど僕の考えでは、それを達成する一番の方法は“いいもの”を作ること。僕たちは、それだけに専念するべきなんだ」
ハリウッド大作からインディペンデント映画、シリアスなドラマからコメディーまで、さまざまな作品で異なる顔を見せ、確固としたキャリアを築いてきたドーナルですが、「キャリアはコントロールできるものではない」と語ります。
「キャリアはただ出来上がるものなんだと思う。僕はキャリアではなく、ただ次の仕事について考えているんだ。最終的には、それらの仕事全部がキャリアになるわけだからね。キャリアはコントロールできないけれど、次の仕事に関してはちょっとコントロールできる。だから僕はいい人たち、いい脚本、以前やったものとは何か違うものを探そうとしている。そうしたものを見つけることができれば、興奮して一生懸命仕事をし続けることができる。僕にコントロールできるのはそれくらいなんだ」
「例えばコメディーをやった後には、人を笑わせるだけじゃなくて、観客とつながれるシリアスな物語をやりたいと思ったりする。そういう映画をやった後は、コメディーをまたやりたいなと思ったりする。演技における一番素晴らしい喜びというのは、そのどちらにも挑戦できることなんだ。そのどちらが得意なのかはわからないけれど、僕の目的はどちらも上手くやり、全てに挑戦すること。それは不可能かもしれないけれど、挑戦する価値はあると思う」
笑い上戸で太陽のように温かな雰囲気をまといながら、自らを冷静に分析して、目の前の作品に常に全力で取り組んできたドーナル。俳優という仕事に対する彼の真摯な姿勢が、『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』のコメディーレベルを一段上に押し上げていると言っても過言ではありません。
映画『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』は6月25日より全国公開