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過激な味わいの復讐劇!7月の5つ星映画5作品はこれだ

今月の5つ星

 背筋を凍らすモノクロスリラーからオスカー受賞の強烈な復讐劇、熱気あふれるミュージカルにゲイの水球チームのスポ根ドラマ、そして記録破りの大ヒットとなった中国映画まで、この夏見逃せない作品をピックアップ。これが7月の5つ星映画5作品だ!

狂気と正気の狭間を直視するアブないスリラー

ライトハウス』7月9日公開

嵐で孤島に閉じ込められたベテラン灯台守と新米助手が狂気にとらわれていく過程を描く、気鋭スタジオA24による心理スリラー。出演者は、頑固なクセモノ老人トーマス役のウィレム・デフォーと、彼にこき使われる若者ウィンズロー役のロバート・パティンソンのほぼ2人だけ。デフォーの怪演もさすがだが、一見ナイーブな青年の変貌を体当たりで演じてみせたロバートの驚くべき表現力には目を奪われる。1.19:1のアスペクト比を採用したフィルム撮影によるモノクロ映像は、孤島の閉塞感をより高める。この空間が彼らに幻覚を見せているのか、それとも、最初から彼らの内に狂気が宿っていたのか。正気と狂気の境目はあいまいとなり、その狭間に立たされた人間を目の当たりにしているような気分になる。17世紀アメリカの魔女騒ぎを描いた『ウィッチ』でも、静かな狂気を映像化したロバート・エガース監督が、今回も遺憾なくその手腕を振るっている。(編集部・ 入倉功一)

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日本を舞台に凸凹コンビが大活躍!

唐人街探偵 東京MISSION』7月9日公開

全世界オープニング週末興行収入No.1を記録した中国の人気映画シリーズ第3弾となる本作では、日本を舞台に、中国の探偵のチン・フォンと、彼の叔父タン・レンが密室殺人の謎に挑む。空港でのド派手な乱闘シーンに始まり、見慣れた日本の景色が色彩鮮やかに活写され、スピード感あふれる展開は息つく暇を与えない。冷静なチン・フォンとテンションが高く人情味溢れるタン・レンによる凸凹コンビっぷりはコミカルで愛おしく、日本人探偵・野田役の妻夫木聡をはじめ、彼らと関わることになる役を担った長澤まさみ染谷将太鈴木保奈美浅野忠信三浦友和ら日本人キャストの演技も見応えたっぷり。総製作費65億円のうち日本国内の製作費は31億円が掛けられ、ド派手な演出や日本になじみ深い音楽で目にも耳にも楽しい作品だが、真実・正義とは何かというテーマがしっかりと描かれ、ただの娯楽ではない芯がある作品に仕上がっている。(編集部・梅山富美子)

人生を楽しむことこそが生きること

シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』7月9日公開

フランスに実在するゲイの水球チーム「シャイニー・シュリンプス」をモデルに、偏見と差別に悩みながらも明るく楽しく生きる彼らの姿を映し出したヒューマンドラマ。新任コーチに任命されたマチアス(ニコラ・ゴブ)は、ふざけてばかりのメンバーたちを毛嫌いしながらも、LGBTQ+による世界最大のスポーツと文化の祭典「ゲイゲームズ」に参加するという目標のもと、彼らと心を通わせていく。人と人を結びつける力こそが、スポーツの持つ意義であり、オリンピックイヤーにふさわしい作品としてのメッセージが込められている。そして、どんな状況でも、何が起こっても人生を楽しむことを忘れない、彼らの生き方は力強く希望にあふれている。モデルとなったシャイニー・シュリンプスの一人であるセドリック・ル・ギャロが監督を務めているだけに、メンバーたち一人ひとりが愛すべきキャラクターとして描かれており、彼らを応援せずにはいられなくなる。(編集部・香取亜希)

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どこにでもいる普通の女性の復讐劇だからこそ強烈

プロミシング・ヤング・ウーマン』7月16日公開

七色に染めた髪に濃いメイク、ナースのコスプレをまとった女性を捉えた強烈なビジュアルが目を引く本作。オリジナル脚本で長編監督デビューを果たしたエメラルド・フェネルのアカデミー賞脚本賞受賞も納得の、過激な味わいの復讐劇だ。ナース姿の主人公は、ある事件を機に医大を中退し、親元で暮らしながらコーヒーショップの店員として働く29歳のキャシー。一方で、彼女には夜な夜なバーやクラブで酔ったフリをしては、男たちを懲らしめる奇妙な一面がある。その目的は一体何なのか? 次第にキャシーの過去が明らかになっていく。フェネル監督は女性蔑視や自己防衛のための傍観など、無自覚の罪を浮き彫りにしていきつつも「現実の世界で普通の女性が復讐するリアリティのある映画」を目指したと言う。その言葉通り、復讐に燃える主人公は、あくまでどこにでもいる女性として描かれており、ナースのコスプレは、ある意味彼女が行動を起こすための武装を象徴しているようである。(編集部・石井百合子)

アメリカの今を反映した、熱気ほとばしるミュージカル

イン・ザ・ハイツ』7月30日公開

「ハミルトン」でおなじみのリン=マヌエル・ミランダが原案・作詞作曲・主演を務めてその才能を世に知らしめた名作ミュージカルの映画化作品。ラテン系の移民が多く暮らす地域を舞台に、若者たちが夢を追い、挫折を経験し、それでもまた立ち上がる姿が、ラップ、サルサ、ヒップホップなど思わず体が動き出してしまうほどノリノリの楽曲に乗せて描かれる。オリジナル版の初演は2005年とあって、映画は現在の移民問題を巧みに反映したアップデート版。移民と一口に言っても、彼らの祖国やアメリカへの思い、境遇はそれぞれであり、そんな一人一人にスポットを当て、彼らが自分の本当の“ホーム”を見いだしていく過程を感動的に描き切った。『クレイジー・リッチ!』のジョン・M・チュウ監督は映画ならではの壮大なスケールの群舞を多分に取り入れ、ラテンコミュニティーの強い絆と底抜けの明るさをスクリーンに刻んでいる。(編集部・市川遥)

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