【完全ネタバレ】『ゴジラvsコング』をもっと楽しむ!トリビアまとめ
大ヒット中の映画『ゴジラvsコング』は映画界を代表する2大スター、ゴジラとコングが激突する超大作。レジェンド同士の激突だけに、アダム・ウィンガード監督はじめスタッフたちの思いも強く、歴代ゴジラ・コング映画をはじめ、さまざまな映画のオマージュや引用が見て取れる。そんなトリビアの数々を、映画の時系列に沿って追ってみたい。(文:神武団四郎)
※本記事はネタバレを含みます。映画『ゴジラvsコング』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
コングを発見したあのキャラが大学名に
コングが映画デビューを飾った『キング・コング』(1933)の主要登場人物に、コングを見つけひと儲けを企む映画監督カール・デナム(ロバート・アームストロング)がいる。ピーター・ジャクソン監督による2005年版『キング・コング』では、ジャック・ブラックが演じていた人物だ。『ゴジラvsコング』において、ネイサン・リンド博士(アレキサンダー・スカルスガルド)が勤める大学名デナム倫理科学大学はそのラストネームと同じ。
ちなみに、ウィンガード監督とコングの馴れ初めはジャクソン監督のリメイク版。その続編企画『Skull Island』(※編集部注:『キングコング:髑髏島の巨神』とは全く別物)で、ジャクソン監督はウィンガードを監督候補に挙げていた。残念ながら企画自体がボツになり、ウィンガードの怪獣映画デビューはお預けとなった。(この時のプロデューサーの一人が、後にモンスター・ヴァースを立ち上げるレジェンダリー・ピクチャーズのメアリー・ペアレント。彼女は『ゴジラvsコング』に製作として名を連ねている)
コングの回避アクション、元ネタは『ダイ・ハード』
輸送中のコングをゴジラが襲撃する、ゴジラ対コングの第1ラウンド。この時、ゴジラは海中から空母めがけて放射熱線を吐いたが、それを察知したコングは海にダイブし、間一髪で攻撃を回避する。VFXスーパーバイザーのブライアン・ヒロタは Screen Rant のインタビューで、このコングの脱出アクションは1980年代を代表する刑事アクションの金字塔『ダイ・ハード』(1988)が元ネタだと明言している。つまり、コングはブルース・ウィリスが演じたジョン・マクレーン刑事の怪獣版でもあったのだ。1980~90年代のアクション映画に心酔するウィンガード監督は、現在『フェイス/オフ』(1997)のリメイク企画を準備している。
怪獣デリバリーいま昔
何とかゴジラをかわしたコングと人間たちは南極に到着。地下世界への入口までは、ヘリコプターやオスプレイでコングを運搬した。このシーンは『キングコング対ゴジラ』(1962)で、気球を使ってコングをゴジラのいる富士山麓に運んだ方法が参考にされた。ヘリにした理由についてウィンガード監督は、気球で運ぶのは時代に合わないからだと Screen Rant に語っている。ちなみに、東宝が製作したコング映画第2弾『キングコングの逆襲』(1967)では、ヘリコプターでコングを北極に移送していた。
コングの戦い方に凶悪殺人鬼へのオマージュ
特殊な輸送船(HEAV)で地下世界を訪れたコングたちは、そこに棲息していたワーバットに襲撃される。この時コングはHEAVに飛びかかるワーバットの尻尾をつかみ、もう一匹のワーバットに叩きつける荒っぽいファイトを披露。ウィンガード監督はRedditにて、これはホラー映画『ジェイソンX 13日の金曜日』(2001)が元ネタだと明かしている。
もとのシーンは、ジェイソンが裸の女性が入った寝袋を振り回し、叩きつけているというもの。ちなみにワーバットがコングに巻き付き締めつける姿は、オリジナル版『キング・コング』で大蛇のような古代生物がコングに巻き付く姿にそっくりだ。
人気アニメのアクションを再現!
コングの機転でワーバットをかわしたHEAVは、すかさずミサイルで応戦する。10数発のミサイルが噴煙を引きながら次々に被弾していく映像は、人気アニメ「超時空要塞マクロス」(1982~1983)へのオマージュだと、ウィンガード監督がPolygon.comのインタビューで明かしている。アニメーターで演出家の板野一郎が生みだしたメカアクション板野サーカスの再現である。
伝統的なラフファイト
夜の香港で第2ラウンドを展開するコングとゴジラ。地底の王室で見つけた斧を手にしたコングは、ゴジラとの肉弾戦のさなか、斧の柄をゴジラの口の中にねじ込んだ。この戦法は『キングコング対ゴジラ』へのオマージュ。オリジナルでは木を突っこまれたゴジラが放射熱線で木を焼き捨てたが、今回は放射熱線の威力を知るコングが斧で放射熱線を止める頭脳プレイ風に描かれた。
ちなみに、コングがゴジラの口に木を突っこむのは、オリジナル版『キング・コング』のコング対ティラノサウルスが元祖。ただしこれは宣伝用写真でのみで存在する架空のシーンで、映像化したのは『キングコング対ゴジラ』だった。
無茶な荒療治はあの刑事そっくり
リンドの強引な電気ショック療法で復活したコングは、脱臼した左肩をビルに叩きつけてメカゴジラとの戦いに臨んだ。この強引な荒療法は『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(1989)でメル・ギブソンが演じたリッグス刑事そっくり。彼は肩を脱臼したのを機に関節を自由に外せるようになり、署内のパーティションに外れた肩を叩きつけて治していた。
脚本家のマックス・ボレンスタインが Cinema Blend に語ったところによると、編集段階でカットされたが『リーサル・ウェポン2』ネタは多く、エンドロールの権利表記にも作品タイトルが表記されている。なお、電気ショックでコングが蘇生する姿はゴジラの猛攻で虫の息のコングが落雷パワーで復活する『キングコング対ゴジラ』へのオマージュか。
最新ゴジラ事情も参考に
映画の中でも特に印象的な情景が、ゴジラとコングが激突する夜の香港。サイケデリックなネオンカラーの街並みは、ウィンガード監督の過去作『ザ・ゲスト』(2014)などでも見られた独特のカラーリング。そんなウィンガード監督は『シン・ゴジラ』で夜の東京を火に染めた赤や紫色の放射熱線がお気に入りで、本作のゴジラもインスピレーションを受けているとRedditで明かしていた。
監督が最も愛するゴジラ像
ゴジラシリーズの中で『ゴジラVSデストロイア』が一番好きだと公言しているウィンガード監督。この作品では体内の炉心が暴走したゴジラが、体が赤く変色したバーニング状態で香港を襲撃する。前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)で放射能が漏れ出たゴジラはそのまま本作にも登場し、怪しい光を放ちながら香港に上陸している。ウィンガード監督は気分を盛り上げるため、映画の制作中『ゴジラVSデストロイア』のサウンドトラックを聴き続けていたという。
まだまだあるぞ!小ネタ&オマージュ
映画のオープニング、目覚めたコングが大あくびをしてお尻をボリボリかくオジサンぶりは、心優しい怪物が大活躍する『シュレック』(2001)風だが、この作品は『ゴジラvsコング』の原案を書いたテリー・ロッシオの代表作である。
また、香港での死闘でコングは両手でゴジラの口をこじ開けようとしていたが、敵の口を裂くワイルドな戦法はオリジナル版から続くコングの代表的な戦法。『キングコングの逆襲』や1976年と2005年のリメイク版でも描かれた。香港での戦いのさなか、コングはゴジラの攻撃を避けビルの上に退避するが、その建物のネオンサインはオリジナル版の舞台になったエンパイア・ステート・ビル風。右手でビルをつかみ、左手にクレーンを持ったコングのポーズもそっくりだ。
他にも、地底王国での不気味な生き物たちの姿がオリジナル版や2005年のリメイク版を彷彿させるなど、見ようによってはオマージュに思えるシーンは山ほどある。そんな「これってもしかして……」というシーンを探すのも『ゴジラvsコング』のお楽しみといえる。
映画『ゴジラvsコング』は全国公開中
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