『都会のトム&ソーヤ』城桧吏 単独インタビュー
主人公は自分に近い存在
取材・文:高山亜紀 写真:上野裕二
『万引き家族』で世界中から熱い視線を浴びた城桧吏が『都会のトム&ソーヤ』で映画初主演。原作の通称「マチトム」はシリーズ累計200万部を超える人気児童小説。どこにでもいそうだがサバイバル能力に優れた内藤内人と財閥御曹司の秀才、竜王創也の凸凹中学生コンビが、都会が舞台のリアルRPGに挑戦、頭脳と体力でゲームクリアを目指すストーリー。内人役の城は主演としてキャラクター同様、持ち前の明るさで、周囲のみんなを引っ張った。
内人は性格も似ていて、自分に近い存在
Q:以前に原作を読んでいたそうですね。
小学校の時に図書室で見つけて、画がかわいくて気になって読み始めたのがきっかけです。周りのみんなにもよく知られている、人気の作品でした。日常の生活からいきなり冒険が始まるのが面白くて、身近で想像しやすくて、まるで自分たちもその世界に入り込んだような気持ちになるんです。そのころから内人は僕と性格も似ている部分があるなと思っていて、内人の目線で物語を読むのが楽しかったです。
Q:今回はその内人役で、初主演映画ですね。これまでと違いましたか。
いつもとはまた違った空気でした。緊張、プレッシャーもありましたし、これまでにない責任も感じていました。それと同時にうれしいという気持ちもありました。
Q:どうやってプレッシャーを押しのけたんですか。
創也役の(酒井)大地が現場でいつも冗談とか言って笑わせてくれて、おかげで気持ちが軽くなり、撮影にも楽しく臨むことができたと思います。
Q:初共演ですよね。どんな風に仲良くなったんですか。
撮影が始まる前にリハーサルがあったのですが、僕は途中からの参加だったんです。僕の印象では大地はおとなしそうだし、あまり話さないのかなと思っていたのですが、すごく気軽に話しかけてきてくれて、その場にすっと溶け込むことができました。
Q:内人と創也とは逆のパターンの出会いですね。城さんは創也みたいにいつも一人でいる子がいたら、内人みたいに話しかける側ですか。
僕は話すのが大好きで、いろんな人ともすぐ仲良くなれるタイプなので、一人でいる子がいたら、放っておけないかもしれません。
「マチトム」コンビがビビった市原隼人の洗礼
Q:酒井さんはこの作品が初めての演技だそうですが、アドバイスをしたりしましたか。
内人と創也の距離感など、よく二人で話をしました。大地はこの作品がデビュー作だったので、演技も初めてで緊張していたんですけど、撮影が始まる前に台本の読み合わせをして、しっかり練習をしました。いま思うと、あの読み合わせがすごく大事だったと思います。あれがあったから、本当に内人と創也みたいに息が合っていきました。
Q:城さんは、なぜ内人と創也は仲良くなったのだと思いますか。
創也が内人のことを認めたからじゃないかなと思います。内人はほかの人にはないサバイバル能力を持っていて、創也の砦まで一つも罠にかからず、入って来られた。だからこそ、「こいつ、やるな」と創也は興味を持ったんだと思います。それで仲良くなれたのかな。二人が互いに足りないものを補い合って、いいコンビネーションだと思います。
Q:劇中、内人が創也にはっきり意見を言う場面がかっこよかったです。
創也が友だちを犠牲にしてでもゲームクリアを重視している反面、内人は友だち思いで、危険を冒してでも必死に友だちを助けようとする。自分で言うのもおかしな話ですが、あの内人はかっこいいと思いましたね。創也がクリアしたい気持ちもわからなくもないですが、僕自身も「そこは友だちを助けようよ」と思います。
Q:正体不明のゲームクリエイター・栗井栄太との対決シーンも迫力がありました。
緊張しました。特に印象に残っているのは栗井栄太と初めて会う部屋のシーンです。創也が神宮寺(市原隼人)に顔をつかまれるんですけど、台本には書いてなかったので、後ろから見ていた僕もびっくりしました。あまりの迫力に大地も本当にビビっていて、お昼ご飯ものどを通らないようでした。でも、市原さん本人は優しくて気さくな方で、撮影の合間に「なにが好きなの?」など話しかけてきてくれたりしました(笑)。
剣を使った武術アクションをやってみたい
Q:城さん自身が気に入っているシーンはありますか。
太陽をバックに内人と創也がスローモーションで走っているところが自分は一番、好きです。きれいで楽しかったし、その時、現場で大地と二人で「青春だね~」って話をしていたことが心に残っています。
Q:創也とは美晴(豊嶋花)をめぐって、淡い三角関係にもなりますね。
冒険物語でありながら若干の恋愛要素も入ってきます(笑)。面白い関係性ですよね。三人が揃ってからストーリーがより面白くなるんです。内人は美晴が気になっているけど、美晴は創也のことを見ていて、内人が落ち込んでしまう。そういうシーンも楽しんでもらいたいです。
Q:今後は恋愛映画にも出演していくんでしょうか。
やりたくないわけではないんですけど、ちょっと恥ずかしいです(笑)。
Q:今回は念願のアクションもありましたね。
かなりハードな動きもあって、やってみると大変でした。普段、痛くならないような、腿の前側とかが筋肉痛になることもありました。最初の方の会場のところでは、これまでにやったことのないような動きをして、ところどころぶつけたりしながら、頑張りました(笑)。
Q:アクションをもっとやりたくなりましたか。
やりたいです! 昔から体を動かすことが大好きで、やんちゃな子どもだったんです。今度は剣とかを使った武術のような闘いに挑戦してみたい。好きな映画は『GANTZ』と『るろうに剣心』なんですが、どちらも剣を使ったアクションが素晴らしくて、何度も観ています。特に『GANTZ』は近未来のストーリーで、動きもかっこいい。『GANTZ : PERFECT ANSWER』の電車の中のアクションシーンが気に入っています。
Q:今後の目標は?
アクションをすごくやりたいです。それから、やったことのない役をやってみたい。元気な役、かっこいい系の役は経験させていただいたので、怖い系の役もやってみたいです。物語で言うと敵側。ダークな悪役などにも挑戦してみたいです。
友だちは大切なもの
Q:友だちと一緒にこの夏、したい冒険はありますか。
バンジージャンプをやってみたいです。みんな怖いというけれど、一度、どんな感じか経験してみたいんです。遊園地の落下するアトラクションなどでは味わえない感覚になりそう。掴まるもののない怖さを体験してみたいです。人生で一度はやってみたい。それ一回きりかもしれないですけど(笑)。
Q:怖いものはないんですか。
いっぱい、ありますよ。おばけと虫は怖いです。
Q:スカイダイビングも大丈夫?
僕、上も下も苦手なんです。飛行機も潜るのも得意じゃないと思います。飛行機に乗るとすぐ耳が痛くなるし、海も怖いので(笑)。
Q:それなら劇中にあるようなリアルRPGが都会に出現したら、生き残れそうですか。
実際にやってみたら、本当に楽しそうですよね。友だちと一度、挑戦してみたい。考えたら、ワクワクしてきました。ただ、生き残れなさそうです。走って逃げるのは得意なんですけど、今回みたいな謎解き要素が含まれていたとしたら、僕は解けないから友だちに任せるしかありません。解けそうな友だちを集めないと(笑)。
Q:城さんにとって、友だちとはどんなものですか。
大切なものです。自分一人では解決できないことを相談することもありますし、友だちがいなければ、できないこともたくさん、あります。友だちはなにがあっても変わらず接してくれて、僕らしくいられます。みんな優しいです。
元気にハキハキ話す城は『万引き家族』のころと変わらない目の輝きをしながら、スタイル抜群の都会の少年に成長していた。現在、14歳。急激に大人びる年ごろだが、初主演の責任を担い、アクションや淡い恋の三角関係も披露、心情的にも大きな変化があっただろう。とはいえ、取材中、顔がほころんだ瞬間の愛らしかったこと。かわいさとかっこよさの比が変わっていく時期。「マチトム」で見せるさまざまな表情一つひとつが貴重なショットだ。
映画『都会のトム&ソーヤ』は7月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、イオンシネマほか全国公開