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2021年 第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門21作品紹介(2/2)

第78回ベネチア国際映画祭

『モナリサ・アンド・ザ・ブラッドムーン(原題) / Mona Lisa and the Blood Moon』

モナリサ・アンド・ザ・ブラッドムーン

製作国:アメリカ
監督:アナ・リリー・アミールポアー
キャスト:チョン・ジョンソケイト・ハドソン

【ストーリー】
米ルイジアナ州ニューオーリンズの精神病院を抜け出した女性。不可思議で危険な力を持つ彼女は実社会に戻り、なんとか一人で生き延びていこうとするなかで、思いがけない仲間を得ることになる。

【ここに注目】
ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』のアナ・リリー・アミールポアーが監督・脚本を務めたファンタジックなミステリー。カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した『バーニング 劇場版』のチョン・ジョンソが英語作品に初出演し、ほかにケイト・ハドソン、クレイグ・ロビンソンエド・スクラインが共演している。『へレディタリー/継承』『ミッドサマー』の撮影監督パヴェウ・ポゴジェルスキが手がけた映像に要注目だ。

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『アン・オートレ・モンド(原題) / Un Autre Monde』

アン・オートレ・モンド

製作国:フランス
監督:ステファヌ・ブリゼ
キャスト:ヴァンサン・ランドンサンドリーヌ・キベルラン

【ストーリー】
フィリップ・ルメルは妻が出て行く様子を見守っていた。妻が去ったのは、アメリカの企業で上級管理職を務めるフィリップが、上役の理不尽な要求に悩み、その重圧にのまれていったことが理由だった。

【ここに注目】
第73回本映画祭コンペティション部門に出品した『女の一生』が、国際批評家連盟賞を受賞したステファヌ・ブリゼ監督作。ヴァンサン・ランドンはブリゼ監督とは『ティエリー・トグルドーの憂鬱』など5度目のタッグ。ヴァンサンと彼の元妻でブリゼ監督の『シャンボンの背中』でも共演したサンドリーヌ・キベルランが、危機を迎えた夫婦を演じる。第68回ベルリン国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した『ザ・プレイヤー(英題) / The Prayer』の若手俳優アントニー・バジョンも出演している。

『アメリカ・ラティーナ(原題) / America Latina』

アメリカ・ラティーナ

製作国:イタリア、フランス
監督:ダミアーノ・ディンノチェンツォファビオ・ディンノチェンツォ
キャスト:エリオ・ジェルマーノアストリッド・カサリ

【ストーリー】
歯科医院を営むマッシモ・システィは、プロ意識が高く、礼儀正しい穏やかな人物で、望むことは何でもかなえることができた。妻と2人の娘は、彼にとって生きがいと喜びであり、彼の自己犠牲と正直さがもたらした人生のご褒美だった。しかし、思いがけない事態により、その人生を奪われてしまうことに。

【ここに注目】
長編2作目の『悪の寓話』が第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀脚本賞)を獲得したイタリアの双子監督、ダミアーノ&ファビオ・ディンノチェンツォが手掛けた恋愛スリラー。2018年にデビューしたローマ出身の新鋭で、マッテオ・ガローネ監督作『ドッグマン』の脚本にも参加した2人。『悪の寓話』に続いて主演を務めるエリオ・ジェルマーノは、第63回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞の『我らの生活』、第70回ベルリン国際映画祭最優秀男優賞の『私は隠れてしまいたかった』に続いて、地元イタリアで3大映画祭男優賞受賞達成となるかに注目したい。

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『コンペテンシャル・オフィシャル(原題) / Competencia Oficial』

コンペテンシャル・オフィシャル

製作国:スペイン、アルゼンチン
監督:ガストン・ドゥプラットマリアノ・コーン
キャスト:ペネロペ・クルスアントニオ・バンデラス

【ストーリー】
億万長者の男性は、自らの功績を残すため、最高の映画を製作しようと思いつく。彼は金に糸目を付けず有名な映画監督と2人の名うての俳優を集め、ドリームチームを結成。だが、彼らひとりひとりは素晴らしい才能を持っているものの、お互いのエゴがぶつかり合い、撮影は困難を極める。

【ここに注目】
ペイン・アンド・グローリー』でも共演したオスカー女優ペネロペ・クルスと、アントニオ・バンデラス主演の異色ドラマ。『笑う故郷』などのガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーン監督が再び組み、同作で第73回本映画祭の最優秀男優賞を受賞したオスカル・マルティネスらが出演。スペインとアルゼンチンチームの強力タッグによる、オリジナリティーあふれる力作に勝利の女神は微笑むか!?

『サンダウン(原題) / Sundown』

サンダウン

製作国:メキシコ、フランス、スウェーデン
監督:ミシェル・フランコ
キャスト:ティム・ロスシャルロット・ゲンズブール

【ストーリー】
しばらくアカプルコで家族と休暇を取ることにした資産家のイギリス人男性。休暇中はすべてのしがらみから逃れ、久しぶりに自由を謳歌(おうか)しようとしていた。避暑地での時間はゆったりと流れていくように思えたが、ある一本の電話によって彼らの平穏な時間は突然終わりを告げる。

【ここに注目】
父の秘密』『或る終焉』『母という名の女』などのメキシコの鬼才、ミシェル・フランコ監督が手掛けた人間ドラマ。『或る終焉』でもフランコ監督と組んだティム・ロスが主人公を演じ、『アンチクライスト』などのシャルロット・ゲンズブール、『フーリガン』などのヘンリー・グッドマンらが共演。昨年の本映画祭で『ニュー・オーダー(英題) / New Order』が銀獅子賞(審査員大賞)に輝いた監督は、最高賞の金獅子賞の射程圏内にいる。

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『イリュージオン・ペルデュ(原題) / Illusions Perdues』

イリュージオン・ペルデュ

製作国:フランス
監督:グザヴィエ・ジャノリ
キャスト:バンジャマン・ヴォワザンセシル・ドゥ・フランス

【ストーリー】
若き詩人のリュシアンはまだ無名だが、将来について思い描いていた。彼は田舎にある実家の印刷所を発ち、チャンスをつかもうとパリへ向かう。そこで彼は利益を追求する世界の舞台裏を知ることになる。

【ここに注目】
偉大なるマルグリット』などのグザヴィエ・ジャノリ監督が、19世紀のフランスを代表する作家オノレ・ド・バルザックの小説「人間喜劇」シリーズに収められた「幻滅」を映画化。希望を胸に田舎からパリへ出てきた青年を主人公に、メディアや政治への批判を込めた物語。『Summer of 85』などのバンジャマン・ヴォワザンや『少年と自転車』などのセシル・ドゥ・フランスをはじめ、ジェラール・ドパルデューヴァンサン・ラコストグザヴィエ・ドランジャンヌ・バリバールなど豪華キャストがそろった。

『スペンサー(原題) / Spencer』

スペンサー

製作国:ドイツ、イギリス
監督:パブロ・ラライン
キャスト:クリステン・スチュワートティモシー・スポール

【ストーリー】
1991年のクリスマスホリデー。イギリス王室のメンバーと共にノーフォーク州にあるサンドリンガム・ハウスで過ごすダイアナは、すでに関係が冷え切っていた夫チャールズ皇太子との離婚を決意する。

【ここに注目】
米女優のクリステン・スチュワートが、今もなお英国民に愛され続けるダイアナ元妃を演じた話題作。『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』『エマ、愛の罠』のパブロ・ララインが監督を務め、『イースタン・プロミス』『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』のスティーヴン・ナイトが脚本を手がけた。世紀の大スキャンダルとなった離婚に至るまで、ダイアナ元妃が抱えた苦悩をスチュワートがいかに演じているかが最大の見どころ。

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『フリークス・アウト(原題) / Freaks Out』

フリークス・アウト

製作国:イタリア、ベルギー
監督:ガブリエーレ・マイネッティ
キャスト:クラウディオ・サンタマリアピエトロ・カステリット

【ストーリー】
マティルデ、センシオ、フルヴィオ、マリオら4人は、第2次世界大戦の被害を受けたローマのサーカスで兄弟のように暮らしていた。彼らのいるサーカスの団長イスラエルは、彼ら4人を海外に脱出させると豪語したもののそのまま姿を消す。サーカス以外に行く当てのない彼らは、ただ混乱するばかりだった。

【ここに注目】
皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』でイタリアのダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の最優秀新人監督賞などを受賞した、ガブリエーレ・マイネッティ監督によるファンタジー。『水を抱く女』などのフランツ・ロゴフスキ、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』でもマイネッティ監督と組んだクラウディオ・サンタマリアらが共演。ナチスドイツが台頭する1940年代のローマを舞台にしたダイナミックな物語が、審査員の心をつかむ確率は高い。

『クイ・リド・イオ(原題) / Qui Rido Io』

クイ・リド・イオ

製作国:イタリア、スペイン
監督:マリオ・マルトーネ
キャスト:トニ・セルヴィッロマリア・ナツィオナーレ

【ストーリー】
1900年初頭、ベル・エポックのころのイタリア・ナポリでは劇場と映画が大人気だった。俳優たちの中でも興行収入の高さでは、人気喜劇俳優エデュアルド・スカルペッタの右に出る者はいなかった。そんな中、スカルペッタはキャリアの絶頂期に、詩人ガブリエレ・ダヌンツィオによる悲劇のパロディー作品に挑戦しようとする。

【ここに注目】
『カプリ島のレボリューション』などのマリオ・マルトーネ監督がメガホンを取り、19世紀初頭のナポリを舞台に描くヒューマンドラマ。『LORO 欲望のイタリア』などの名優トニ・セルヴィッロ、『ゴモラ』などのマリア・ナツィオナーレ、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』などのアントニア・トゥルッポらが豪華共演。本映画祭のコンペ部門に過去5回ノミネートしているだけに、今度こそはと期待がかかる。

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『リーブ・ノー・トレーシーズ(英題) / Leave No Traces』

製作国:ポーランド、フランス、チェコ
監督:ヤン・P・マトゥシンスキ
キャスト:トマシュ・ジェンテクサンドラ・コルゼニアク

【ストーリー】
1983年、ポーランド。高校生のグジェゴシュ・プジェミクが民兵に暴力を振るわれて死亡した事件に、国中が揺れる。唯一の目撃者であるユレクは、一晩にして国家の敵になった。政権はメディア、裁判所などあらゆる手段を使って、ユレクや両親、グジェゴシュの母親など、事件に近しい人物をつぶしにかかる。

【ここに注目】
共産主義国家だった1980年代のポーランドで起きた実話を基にした社会派ドラマ。ワルシャワで少年が民兵に殺される現場を目撃した主人公が、政府に立ち向かう。監督は『最後の家族』がロカルノ国際映画祭など各国の映画祭で上映されたヤン・P・マトゥシンスキ。『聖なる犯罪者』などのトマシュ・ジェンテクや『杉原千畝 スギハラチウネ』などのアグニェシュカ・グロホフスカ、『マイティ・エンジェル』で第27回東京国際映画祭最優秀男優賞を受賞したロベルト・ヴィェンツキェヴィチなどが出演する。

『キャプテン・ヴォルコノゴフ・エスケープド(英題) / Captain Volkonogov Escaped』

製作国:ロシア、エストニア、フランス
監督:ナターシャ・メルクロワアレクセイ・チュポフ
キャスト:ユーリー・ボリソフアレクサンドル・ヤツェンコ

【ストーリー】
1938年のソビエト連邦で起きていた大粛清を背景に、内務人民委員部の指揮官が死の床で後悔の念にさいなまれる。

【ここに注目】
ロシアの監督コンビ、ナターシャ・メルクロワとアレクセイ・チュポフによる歴史ドラマ。前作の長編『ザ・マン・フー・サプライズド・エブリワン(英題) / The Man Who Surprised Everyone』はベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で上映されている。主人公の指揮官を演じるのは、『スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望』や『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』などのユーリー・ボリソフ。

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『ザ・カード・カウンター(原題) / The Card Counter』

ザ・カード・カウンター

製作国:アメリカ、イギリス、中国
監督:ポール・シュレイダー
キャスト:オスカー・アイザックティファニー・ハディッシュ

【ストーリー】
かつて軍の尋問官だったギャンブラーのウィリアムは、怒りを抱えた青年サークから話を持ちかけられ、共に恨みを抱く大佐への復讐を試みる。一方、謎の女性リンダからもポーカーで荒稼ぎする仕事を提案されるのだが……。

【ここに注目】
タクシードライバー』『レイジング・ブル』の脚本家で、『アメリカン・ジゴロ』『魂のゆくえ』の監督としても知られるポール・シュレイダーが、自らの脚本をもとにメガホンをとったリベンジスリラー。盟友マーティン・スコセッシが製作総指揮に名を連ね、オスカー・アイザックが服役中にカードゲームの裏技・カードカウンティングを体得したウィリアム役で主演した。ほかに、ウィレム・デフォーが大佐役、タイ・シェリダンがサーク役、ティファニー・ハディッシュがリンダ役で共演している。

『ラ・カハ(原題) / La Caja』

製作国:メキシコ、アメリカ
監督:ロレンソ・ビガス
キャスト:エルナン・メンドーサハツィン・ナバレテ

【ストーリー】
メキシコシティに住む10代の青年が、メキシコ北部の共同墓地に父の遺骨を受け取りに行く。しかし、その道中、彼は父によく似た男性と偶然出合い、父が生きているのではと希望を持ち始める。

【ここに注目】
第72回本映画祭で最高賞にあたる金獅子賞に輝いた『デスデ・アジャ(原題) / Desde Alla』のロレンソ・ビガス監督。本作はベネズエラ出身のビガス監督による長編第2作で、『プライズ ~秘密と嘘がくれたもの~』のパウラ・マルコビッチとビガス監督が共同で脚本を執筆した。この10年、メキシコ北部で2万人以上の女性の行方がわからなくなっている現実や、工場での労働力搾取の実態を映し出している、骨太な社会派ドラマだ。

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『リフレクション(英題) / Reflection』

製作国:ウクライナ
監督:ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ
キャスト:ロマン・ラツキーニカ・ミスリツカ

【ストーリー】
ウクライナの外科医師セルヒーは、ウクライナ東部の紛争地帯でロシア軍に拘束される。捕虜として捕らえられた彼は、日常的に屈辱や暴力やさらには命の危険にさらされ、背筋の凍るような日々を過ごすことに。ようやく解放されてアパートに戻ったものの、心に傷を負ったセルヒーは、娘や元妻との関係を一から築き上げなくてはならなかった。

【ここに注目】
ザ・トライブ』で製作を担当した、ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチが監督を手掛けた社会派ドラマ。火種がくすぶり続けているウクライナ問題をテーマに、紛争に巻き込まれた一般市民の苦悩を映し出す。『アトランティス』が第32回東京国際映画祭で審査委員特別賞や、第76回本映画祭オリゾンティ部門オリゾンティ賞(最優秀作品賞)などに輝いたウクライナの気鋭監督の真価が、コンペティション部門で問われることになる。

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