『DUNE/デューン 砂の惑星』総予習!押さえておきたい5つのポイント
SF小説の金字塔「デューン 砂の惑星」を『メッセージ』『ブレードランナー 2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化した『DUNE/デューン 砂の惑星』(10月15日全国公開)。あまりの壮大さに映像化困難とまでいわれた作品の基礎知識など、鑑賞前に押さえておきたいポイントをまとめた。(文・平沢薫)
原作はどんな内容?
「デューン 砂の惑星」は、SF小説界における3大賞のうちの2賞、ヒューゴ賞とネビュラ賞をダブル受賞した名作。後のSF映画に与えた影響は大きく、『スター・ウォーズ』(1977)に登場する砂漠の惑星、救世主、東洋的教義を持つ集団、『風の谷のナウシカ』(1984)の砂漠、巨大な昆虫、虫と交信する少女などは同小説に影響を受けたと言われている。
また「デューン 砂の惑星」は単独作品ではなく、シリーズ作品のうちの1作。「デューン」は、米SF作家フランク・ハーバートが発表した6作(「砂の惑星」「砂漠の救世主」「砂丘の子供たち」「砂漠の神皇帝」「砂漠の異端者」「砂丘の大聖堂」)と、1986年に彼が死去した後、彼の息子ブライアン・ハーバートが他作家と共著で発表した続編や関連作からなるシリーズだ。
シリーズで描かれるドラマは壮大で、ハーバートによる6作だけでも、同じ宇宙の数千年間に及ぶ壮大な歴史が描かれていく。今回の新作映画の原作となるのは、シリーズ第1作「デューン 砂の惑星」だ。
第1作「砂の惑星」は、レト・アドレイデス公爵が、皇帝に命じられて砂の惑星(デューン)を統治することになるところから始まる。公爵は息子ポールとその母ジェシカと共に惑星移住するが、そこには広大な砂漠と先住民フレメン、そして宿敵ハルコンネン男爵の罠が待ち受けていた。
3大勢力が激突!壮大な世界観
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』の設定も小説と同じ可能性が高いので、原作「デューン」の世界観を整理しておこう。この宇宙では皇帝、領主会議、ギルドの3勢力が拮抗し、この3者が締結した宇宙平和協定(大協約)によって平和が保たれている。その3勢力とは別の集団も存在する。
宇宙を支配する3大勢力
皇帝
帝国を統治する。古い家系の当主が務めている。
領主会議(ラーンスロード)
実業家階級である領家たちによる組織。ポールが属するアトレイデス家や宿敵ハルコンネン家も領家のひとつ。
ギルド
別名航宙ギルド。全宇宙の航行輸送を仕切る機関。皇帝も領家も彼らの協力なしには事業ができないため、同等の権力を持つ。
上記以外の集団
ベネ・ゲセリット
女性のみ所属し、独自の技術によって精神と肉体を鍛錬する組織。人類の営みには継続性が必要であり、その実現のために特別な存在が必要だという理念を持つ。
フレメン
惑星アラキスの先住民。砂漠の惑星で生きていくための独自の文化を持つ。
密輸業者
帝国に統治されず、ギルドとは別の宇宙船で密輸をする集団。領家たちも裏では彼らに仕事を依頼する。
映画にも登場?重要キーワード
ヴィルヌーヴ監督は原作の大ファンなので、原作のキーワードは映画にも登場するはず。以下の重要ワードは押さえておきたいところ。
香料/メランジ
砂の惑星アラキスでしか産出されず、化学合成も出来ない希少な物質。宇宙航行に不可欠な物質のため、高値で取引される。服用すると意識を覚醒させ、多様な未来を予知させる。
砂蟲/サンドワーム
砂の惑星アラキスの砂漠に棲息する生物。巨大なものは全長400メートルを超える。
クウィサッツ・ハデラック
ベネ・ゲセリットが、何世紀にも及ぶ計画的な婚姻によって誕生させようとしている未知なる存在。この語は同時に多数の場所に存在できる者という意味。
繰り声(からくりごえ)
ベネ・ゲセリットの技術の一つ。この技を極めると、命じる声の調子によって、相手を思い通りに操ることが出来る。
メンタート
高度な論理演算の訓練を受け、雇い主に助言する特殊技能者。アトレイデス家には当主三代に仕えてきたスフィル・ハワトがいて、ハルコンネン家にはパイター・ド・フリースがいる。
サーダカー
皇帝直属の親衛隊。幼少時からの過酷な特訓により育成され、1人で通常の兵士10人分の殺傷力を持つ。
テレビシリーズ化も!過去の映像化作品
『DUNE/デューン 砂の惑星』以前に製作された、原作の映像化作品には下記の3作がある。ヴィルヌーヴ版と比べてみるのも一興だろう。
『砂の惑星』(1984)
『イレイザーヘッド』(1976)や『エレファント・マン』(1980)で注目を集め、当時新人だったデヴィッド・リンチが監督と脚本を担当し、小説シリーズ第1作を映画化。興行的に成功はしなかったが、デザインや演出はリンチ色が色濃く、本作を愛するファンも少なくない。1988年にテレビ放送用に再編集された、劇場版より52分長い長尺版もソフト化されている。
「デューン 砂の惑星」(2000)&「デューン 砂の惑星 II」(2003)
米サイファイ・チャンネルによるテレビドラマ(ミニシリーズ)とその続編。エミー賞において撮影賞、特殊効果賞などを受賞した。「砂の惑星」は小説第1作、「II」は小説第2作の一部分と第3作を映像化。両シリーズとも各話約95分の全3話、各シーズン計4時間半という長さを活かして、原作のストーリーに忠実な映像化を目指し、原作ファンに支持された。「砂の惑星」の監督は『クライヴ・バーカー 血の本』(2009)のジョン・ハリソン、「II」の監督は「トワイライト・ゾーン」(2019)のグレッグ・ヤイタネス。
『ホドロフスキーのDUNE』(2013)
『エル・トポ』(1969)、『ホーリー・マウンテン』(1973)のアレハンドロ・ホドロフスキー監督が、1975年に小説第1作の映画化を試みて頓挫した顛末を振り返るドキュメンタリー。『ブレードランナー』に影響を与えた人気バンド・デシネ作家のメビウスや、後に『エイリアン』に参加するH・R・ギーガーによる当時のイメージ画が多数登場。ホドロフスキー監督がリンチ版について語るシーンもある。
『DUNE/デューン 砂の惑星』はココに期待!
監督は原作の大ファン
SF作家テッド・チャンの短編を映画化した『メッセージ』、SF映画の金字塔の続編『ブレードランナー 2049』と、近年のSF映画の話題作を手がけたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、歴史的名作SF小説の映画化に挑むというだけで注目度大。そのうえ、監督は子供の頃からの原作ファンだと公言しており、さらに期待値がアップ! これまでの映像化作品とは別の何かを見せてくれるだろう。
主役級の豪華キャスト
キャストにはティモシー・シャラメを筆頭に、オスカー・アイザック、レベッカ・ファーガソン、ジェイソン・モモア、ジョシュ・ブローリン、ゼンデイヤ、ステラン・スカルスガルド、ハビエル・バルデム、デイヴ・バウティスタといった人気俳優が集結。しかも、配役は原作への敬意を感じさせるものだ。
例えば、原作でのポールは16歳で、これまでの映像化作品では年上に見えたが、本作の主演であるティモシーには原作同様の少年っぽさがある。また、原作にはポールの父レトが、ポールの母ジェシカについて「ジェシカはアトレイデスの血統に王侯然とした美しさを取りもどさせてくれた。ポールが母親似なのはまことに喜ばしい」と思うシーンがあり、今回のキャスティングはそんな場面も連想させる。その一方で、惑星学者リエト・カインズは、原作では男性だが、本作では女性(演じるのはシャロン・ダンカン=ブルースター)に変わっている。キャスティングにも、さまざまな意味が込められているに違いない。
スピンオフも企画中!
映画公開前から、本作に登場する集団ベネ・ゲセリットを描くスピンオフ「デューン:ザ・シスターフッド(原題)/ Dune: The Sisterhood」の企画も誕生。ヴィルヌーヴ監督が製作総指揮を担当し、パイロット版は彼自身が監督する。ヴィルヌーヴ版『デューン』の世界は映画を超えて、さらに壮大な物語へと広がっていく予定だ。
『DUNE/デューン 砂の惑星』は、現地時間9月3日に第78回ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映される予定。同作は小説シリーズ第1作の前半部分を映画化した作品だが、ヴィルヌーヴ監督はCBCラジオカナダで、小説シリーズ第2作「デューン/砂漠の救世主」の映画化を含む三部作の構想があると発言しており、本作はシリーズの今後を占う重要作となりそうだ。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は10月15日全国公開
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