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【ネタバレ解説】『DUNE/デューン 砂の惑星』のアレって何?

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督待望の最新作DUNE/デューン 砂の惑星が大ヒット上映中だ。人類が宇宙に帝国を築いたはるか未来、砂漠に覆われたデューンと呼ばれる惑星アラキスを巡る壮大な宇宙戦争を描いた本作では、この惑星を統治するアトレイデス家の後継者ポールの成長を軸に、陰謀と策略がうずまく壮大な人間ドラマが展開する。“究極の映像体験”を体感できる超大作だが、一度観ただけでは「アレって何?」と疑問に思ったこともあったかもしれない。そこで、『DUNE/デューン 砂の惑星』をより深く楽しむために改めて本作に登場する言葉やポイントを紹介する。(以下、本編の内容に触れています)

主人公ポール・アトレイデスとは?彼はなぜ“選ばれし子”なのか?

ポール・アトレイデス

 主人公ポール・アトレイデスティモシー・シャラメ)はアトレイデス家の後継者。宇宙に進出した人類はこの時代、有力な領家で構成されており、アトレイデス家はその一大勢力の一つ。父のレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、家臣からの信頼も厚い人物で、ポールにとっても尊敬できる父親である。そんな父親のもとで日々訓練に明け暮れるポールだが、時が来れば否応なしにアトレイデス家を、父から受け継ぐことになる。なぜなら彼は“選ばれし子”であるからだ。

ポールの母ジェシカが所属するベネ・ゲセリットの目的は?

政治的な理由から結婚していない公爵とジェシカだが、その愛情は本物

 ポールの母レディ・ジェシカは女性集団ベネ・ゲセリットの一員。彼女たちの目的は、遺伝の組み合わせで救世主クイサッツ・ハデラックを生むこと。そのため権力者に取り入りながら、何世代にもわたって婚姻を操ってきたという、女性のみで構成される秘密結社だ。

 実はジェシカもベネ・ゲセリットの教母より、女の子を産むよう命じられていた。しかしジェシカは、寛大で人格者であるレト公爵を愛していた。命令に背き、レト公爵が望んだ後継者、そして宇宙の未来を救う“救世主”となる男の子を産む道を選んだのだ。“選ばれし子”である彼の誕生により大きく物語は動き始める。そして、使命と愛の間で揺れ動くジェシカの苦悩もまた、物語をよりエモーショナルな展開へと導いていく。

ポールと武術の達人ダンカンの関係って?

頼れる戦士ダンカンを演じたのはアクアマン役で知られるジェイソン・モモア

 皇帝からほぼ強制的に砂の惑星デューンの統治を命じられたアトレイデス家。アトレイデス家に仕える軍人ダンカン・アイダホジェイソン・モモア)はポールの武術指南を務めており、デューンへの先発隊を任されるほどレト公爵からの信頼も厚い。ポールとダンカンのにこやかなやり取りや、ポールがダンカンに向ける信頼のまなざし、何より、彼の身を案じて一緒にデューンに向かうと訴える姿勢から、強い信頼関係がうかがえる。公爵の子として周囲が家臣だらけの環境のなか、兄弟もいないポールが、兄のようなダンカンを慕うのも当然といえる。

 そんな親密な関係の2人ゆえに、アトレイデス家に危機が迫るなか、命からがら砂漠の中を逃げるポールと再会したダンカンが、若き公爵に忠誠を誓うシーンは感情を揺さぶられる名シーンだ。その直後、ポールを守るため、圧倒的な武力で迫ってくる敵にたったひとりで戦いを挑む姿は号泣もの!

今から約8000年後の世界なのに…なぜ剣で戦う?

シールドの存在など剣が主力武器なことにも数々の理由が

 舞台は10191年の未来だが、ダンカンをはじめ兵士たちは、戦いで剣を使っている。その理由のひとつが、彼らの身を護るシールドの存在。劇中赤と青の光で表現され、自身を攻撃から守るのがシールドだ。高速攻撃は防げるが、動きが遅いものを防げないため、剣での攻撃が有効だ。だからレト公爵はハルコンネン家からの攻撃を防げず、逆にハルコンネン男爵はシールドがあったから毒から身を守ることができた。

メランジ(スパイス)ってそもそも何?

香料を含むアラキスの空気がポールに大きな変化をもたらす

 メランジとはデューンで産出される抗老化作用を持った香料。長寿のほか、精神を高揚させる力を持ち、全宇宙の航行輸送を担うギルドによる航宙ルートの算出などあらゆる能力がメランジに支えられている。メランジはデューンの砂漠地帯でのみ採取され、この惑星を制する者は全宇宙を制すると言われるほど重要なもの。だからこそアトレイデス家の前にデューンを統治していたハルコンネン家は皇帝にも勝る巨大な富を得ることに成功していた。またデューンの先住民フレメンの青い目は、メランジの作用によるものだ。

ポールが手を入れた箱の意味は?

 映画の冒頭、ベネ・ゲセリットの教母の訪問を受けたポールは、箱の中に手を入れるゴム・ジャッバールの試練を受ける。これは、心理的に苦痛を与えることで意識や精神の力を試すもの。ジェシカを通じてポールの夢の話を聞いた教母が、彼を確かめるためテストを行ったのだ。炎の中に焼かれた右手が映し出されていたが、箱の中で物理的に何かが起きていたわけではない。直接的な描写はないものの、目に涙を浮かべ、必死に痛みに耐えるポールのけなげな姿、その苦痛を知りながら息子を送り出し、無事を祈るしかないジェシカの姿も胸をうつ。

ポールは映画の序盤からいつか会うチャニの姿を見ていた

 ポールがひんぱんに見る夢は予知夢で、ベネ・ゲセリットの遺伝計画により持って産まれた能力。母からベネ・ゲセリットの訓練を施されたことで、能力が覚醒していったのだろう。やがて出会うことになる運命の相手・チャニゼンデイヤ)の姿など、当初ぼんやりとしていたが、デューンに来てから加速度的に鮮明になっていく。この惑星の空気や土など、あらゆるものに混ざったメランジの作用で能力が増したのだ。ただしポールはこのとき、まだ未来を正確に予知できてはいなかったようだ。

アトレイデス家の敵とは?

男爵が浮いているのは重力を操作するテクノロジーによるもの

 人望の厚いレト・アトレイデス率いるアトレイデス家は水の惑星カラダンを見事に統治していた。自身の権力保持に敏感な皇帝は、そんなアトレイデス家の勢力とレト公爵の人気の高さに嫉妬し、アトレイデス家の宿敵であるハルコンネン家と結託。デューンの統治権をハルコンネン家からアトレイデス家に移し、争いを起こそうと計画する。長きにわたってアトレイデス家を目の敵としているハルコンネン家にとっては、アトレイデス家を抹殺するチャンスでもあった。だから、メランジ採掘に使用するクローラーも最新のものではなく故障寸前のもののみデューンに残していったのだろう。

 憎きハルコンネンのなかでも、最も存在感を発揮したのが、領主であるウラディミール・ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)だ。巨漢に丸刈り頭で宙に浮き、睨みをきかせる憎々しい姿は大迫力! そんな男爵は過度の肥満のため、自身の重さを支えられず重力中和技術を使用し、宙に浮揚している。彼の背骨のあたりに垣間見えたマシンがそれだろう。屋敷の中を照らしていた浮揚ランプや、飛行マシンから音もなく舞い降りてくるサーダカーなど、この世界では、さまざまな場面で重力をコントロールするテクノロジーが使われている。

過酷な環境を生き抜くフレメンの知恵とは?

吸水スーツなどアラキスを生きるうえで欠かせないテクノロジーを抱えるフレメン。独特の習慣がポールに試練をもたらす

 砂漠で暮らすデューンの原住民フレメン。独自の言語を話し、独自の風習や掟をもつ彼らにとって水は何よりも重要なもの。彼らは過酷な環境を生き抜くため様々な道具を開発している。そのひとつが保水(スティル)スーツだ。全身をすっぽり包むこのスーツは、体熱を外に放散するいっぽう、排泄物から水分をろ過・蒸留する機能を持つ。回収された水分は畜水ポケットに蓄えられ、チューブで飲むことができる。この保水スーツがなければ砂漠には2時間もいられないと言われるほどに砂漠で生き抜くには必要とされている。初めて保水スーツを着たポールが、完璧に着用していた姿にフレメンは救世主の誕生を予感する。

 レト公爵が砂漠を知るフレメンと同盟関係を築こうとしたのは、皇帝やハルコンネンの陰謀を察知してのこと。残念ながらハルコンネンに先手を打たれたが、彼の遺志はポールに受け継がれた。

スター・ウォーズやジブリ作品にも影響?

本作の砂虫もド迫力! 数々の名作にその影響を感じることができる

 フランク・ハーバートの原作「デューン 砂の惑星」が刊行されたのは1965年。壮大な世界観や作り込まれた設定の数々は、メディアを問わず多くのSF作品に影響を与えた。たとえば『スター・ウォーズ』シリーズのフォースで相手を操るシーン、辺境の砂漠の惑星タトゥイーンの景観や、砂漠で暮らす荒々しい住人タスケン・レイダー、サルラックなどシリーズを通して類似点が多い。

 日本に目を向けると風の谷のナウシカ(1984)の腐海や王蟲関係の描写に加え、ナウシカが密かに腐海の植物を育てていた地下実験室は、本作に登場する生態学者カインズの植物の試験所のよう。また『天空の城ラピュタ』(1986)の羽ばたく飛行機械フラップターは、検討段階で本作に登場するオーニソプターの構造が参考にされていたという。ヴィルヌーヴ監督のように、原作にふれたことが映画作りを志すきっかけになったクリエーターも少なくないはず。「デューン」はエポックメイキングと呼ぶにふさわしい作品だったのだ。(神武団四郎)

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は全国公開中
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