秋こそホラーだ!注目作を一気にチェック
今週のクローズアップ
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の大ヒットも記憶に新しく、日本でもハロウィンをはさんだ秋にホラー映画が劇場で封切られるようになってきた。人気シリーズの最新作や名作の30年来の続編、現実問題を盛り込んだ社会派もの、そしてホラー界の巨匠によるオリジナル作品など、この秋の注目作を一気に紹介する。(編集部・大内啓輔)
その名前を5回唱えると…忌まわしき都市伝説ホラー
『キャンディマン』10月15日より劇場公開
鏡に向かってその名前を5回唱えると現れる、伝説の殺人鬼キャンディマンの恐怖を描く。原作は「ヘルバウンド・ハート」を『ヘル・レイザー』として自身の手で映画化した小説家クライヴ・バーカーの「禁じられた場所」。1992年にもバーナード・ローズによって映画化されており、今作はその精神的続編となる。製作・共同脚本を『ゲット・アウト』『アス』などの監督であるジョーダン・ピール、監督を『ヘヴィ・ドライヴ』などのニア・ダコスタが担当した。
本作では、シカゴに現存した公営住宅カブリーニ=グリーン地区を舞台に、伝説の殺人鬼キャンディマンをめぐる忌まわしき都市伝説の恐怖が描かれる。恋人とともに新築の高級コンドミニアムに引っ越してきたヴィジュアルアーティストのアンソニーが、恐ろしい過去と遭遇する。主人公カップルを演じるのは、『アクアマン』で強敵・ブラックマンタ役を務めたほか、『マトリックス』シリーズ最新作に主要キャストとして出演することも決定しているヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世と、ドラマ「ワンダヴィジョン」や『キャプテン・マーベル』の最新作に出演するテヨナ・パリス。話題作が控える二人の共演にも注目だ。
ジャネール・モネイの一人二役の熱演が光る社会派ホラー
『アンテベラム』11月5日より劇場公開
“アンテベラム”とは、アメリカでは南北戦争以前のことを指す言葉。アメリカ南部の綿花畑で奴隷として重労働を強いられているエデンは、悲劇に見舞われながらも奴隷仲間と脱走を企てていた。一方、社会学者にして人気作家でもあるヴェロニカは招かれたニューオーリンズでスピーチをこなし、友人たちとディナーを楽しんでいた。この二つの人生が意想外のアイデアで結びつく……。現代社会のさまざまな問題を取りあげてきたジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツの長編監督デビュー作であり、驚きの設定にその手腕が遺憾なく発揮されている。
黒人奴隷のエデンと現代を生きる社会学者のヴェロニカを一人二役で演じたジャネール・モネイの演技も見どころ。『ゲット・アウト』などでプロデューサーを務めたショーン・マッキトリックが製作に参加しており、引用されるウィリアム・フォークナーの「過去は死なない、過ぎ去りさえしない」という言葉が象徴するメッセージが痛烈に刺さる。共演にはエリック・ラング、ジェナ・マローン、ジャック・ヒューストン、カーシー・クレモンズ。
帰郷した姉弟を怪異が襲う…
『ダーク・アンド・ウィケッド』11月26日より劇場公開
農場を営むテキサスの実家から離れて、別々に暮らしてきたルイーズとマイケルの姉弟。病身の父親の最期を看取るべく実家を訪れた二人の姿を目にした母親は「来るなと言ったのに」と突き放したような態度を取ったかと思うと、その夜に首を吊って死んでしまう。そこから姉弟に恐ろしい出来事が次々と降り掛かる……。M・ナイト・シャマラン監督による『ヴィジット』などで、田舎を訪れた姉弟を襲う恐怖は描かれてきたが、今作ではどのような体験が待っているのか。
監督は、人里離れた別荘での戦慄(せんりつ)の一夜を描いたスリラー『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』などのブライアン・ベルティノ。ファンタジー・SF・ホラー・アニメといったジャンル映画に特化したシッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭では2部門で受賞を果たしている。田舎の農場という場所の不穏さに身の毛もよだつ。
ホラー界の巨匠が完全オリジナルで描く新たな恐怖
『マリグナント 狂暴な悪夢』11月12日より劇場公開
『死霊館』『ソウ』シリーズなどを手掛けてきたジェームズ・ワン監督が完全オリジナルストーリーで新たな恐怖を描く。『悪魔のいけにえ』シリーズをはじめ、ダリオ・アルジェントやブライアン・デ・パルマ、デヴィッド・クローネンバーグといった先達への愛情がほとばしっており、映画の完成時に「さまざまなジャンルをミックスしたオリジナル映画を作りたかった」というワン監督の熱量を存分に感じることができるはず。
マリグナントとは「悪性」などを意味するが、アナベル・ウォーリスふんする主人公は、現実に起きた殺人事件の瞬間を夢に見てはリアルな幻覚のように凄惨な殺人現場を疑似体験する。自らの幻視の謎を追ううちに、自身の幼少期へと導かれていくことになるのだが……。その曰くありげな言葉が意味するものとは? なお、本作にはバイオレンス描写が含まれており、R18+での上映となる。
人気シリーズ最新作!街がマイケルの恐怖にのまれる
『ハロウィン KILLS』10月29日より劇場公開
ジョン・カーペンター監督の1978年の映画『ハロウィン』の続編として2018年に公開された『ハロウィン』の第2作。燃え盛る家に閉じ込められたマイケル・マイヤーズが炎から生還し、自身の過去と深い因縁のある街ハドンフィールドで次々と人々を惨殺していく。監督のデヴィッド・ゴードン・グリーンをはじめ、キャストのジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリアといった顔ぶれが結集している。
製作には『ゲット・アウト』『ハッピー・デス・デイ』『透明人間』などヒットホラーを量産する制作会社ブラムハウス・プロダクションズのジェイソン・ブラムも名を連ねている。3部作として構想されており、次作でどのようなかたちで完結するのか、今作とともに注目だ。
岡田将生&川口春奈が兄妹役!オール韓国ロケで描かれる惨劇
『聖地X』11月19日より劇場公開
岡田将生と川口春奈が共演したオール韓国ロケのホラー。だらしない夫との生活に耐えられず、韓国の別荘に暮らす兄・輝夫(岡田)を訪ねた要(川口)。穏やかに過ごすつもりの二人だったが、立ち入った者は奇妙な死を遂げるとされる聖地Xに足を踏み入れてしまい、不可解な現象に見舞われるようになる。祈祷師のおはらいを受けるが、次々と惨劇が彼らを襲う……。
原作は、黒沢清監督が映画化した「散歩する侵略者」でも知られる劇団・イキウメを活動拠点とする劇作家・演出家の前川知大の戯曲。『SR サイタマノラッパー』シリーズなどの入江悠が監督を務め、「恐怖の村」シリーズ(『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』)のプロデュースチームが参加した。共同制作として『犯罪都市』『悪人伝』などを手掛けた制作会社B.A.エンタテインメントが参加しており、日韓のタッグでいかなる恐怖が描かれるのか。
ハロウィンシーズンだけもこれだけの作品が控えているという充実ぶり。それにしても大ヒットした『ゲット・アウト』の系譜に連なるような現実の社会問題を反映したような作品も目を引くところ。奇想天外なアイデアや斬新な物語の設定で、新たなホラーの傑作誕生となるのか、ぜひともスクリーンで目撃したい。