【ネタバレ解説】『エターナルズ』のアレって?7つのギモンと謎
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)待望の最新作『エターナルズ』が劇場公開中だ。『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督が手がけるヒーロー群像劇には、えっ、それって何? と思うギモンや謎が散りばめられている。鑑賞後のモヤモヤを、ここでスッキリ解消させよう!(文・平沢薫)
※本記事はネタバレを含みます。映画『エターナルズ』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
ギモン・謎その1:ミッドクレジットシーンに登場したアイツって?
映画のミッドクレジットシーンで、地球を去ったセナ(アンジェリーナ・ジョリー)、マッカリ(ローレン・リドロフ)、ドルイグ(バリー・コーガン)の前に、いきなり新キャラクター2名が登場する。実はこの二人、1970年代からマーベルコミックに登場する古参キャラクターで、今後のMCUで重要になりそうな要注意人物なのだ。
まず、人気ミュージシャンで『ダンケルク』など役者としても活動するハリー・スタイルズが演じるエロスは、映画で紹介されている通り原作コミックでもサノスの弟である。名前の通り人々を魅了する能力を持つ。原作コミックではスターフォックスというヒーローとしてアベンジャーズと共闘したことがあり、シー・ハルクの恋人だったこともある。シー・ハルクが主人公の実写ドラマシリーズは、2022年にディズニープラスで配信されることが決定済み。となると、エロスがそちらに登場する可能性もあり?
そしてもう一人、コメディー俳優パットン・オズワルドが声を当てたのがピップ・ザ・トロール。ある惑星の王子だが、トロールに姿を変えられている。原作コミックではサノスに殺されそうになったことがあり、アダム・ウォーロックの相棒だったこともある。アダム・ウォーロックといえば、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』第3弾に登場することが決定しており、『ガーディアンズ』シリーズとの関係性も気になるところ。
ギモン・謎その2:ポストクレジットシーンに出てきた剣
エンドクレジット後のおまけシーンでは、デイン(キット・ハリントン)がとある剣を取ろうとする。この剣は、マーベルヒーロー・ブラックナイトの剣エボニー・ブレイド。アーサー王の魔術師マーリンによって創られた剣で、所持者は次第に暴力と血と死に魅せられていくという呪いの剣でもある。エボニー・ブレイドは、アーサー王の円卓の騎士パーシー卿の子孫が代々引き継いできた。
キットが演じたデイン(コミックではデイン・ウィットマン)は、原作コミックにおける三代目ブラックナイトの名前。つまり、彼が将来的にブラックナイトになることは間違いない。原作コミックでは、二代目ブラックナイトは彼の叔父であり、ヴィランとなってしまうが、最後にはデインに剣を継承させる。映画でセルシ(ジェンマ・チャン)がデインとの電話で、叔父さんと仲直りするようにと言うのはこのエピソードを踏まえたものだろう。
ギモン・謎その3:デインに語りかけた声の正体は?
デインがポストクレジットシーンで剣を手に取ろうとする際、本当に剣を手にする準備はできているのかと問う声が、どこからともなく聞こえてくる。本編で声の正体は明かされなかったが、ジャオ監督がFANDOMのインタビューで、その正体はとんでもないキャラクターであると明かしている。マハーシャラ・アリが演じるブレイドだったのだ。
ブレイドは半分吸血鬼、半分人間のヴァンパイアハンター。彼がブラックナイトの物語にどう関係してくるのかは、今度の発表を待とう。原作コミックでは、ブラックナイトがアベンジャーズに協力したり、ドクター・ストレンジに助けられて魔剣の誘惑を退けたエピソードが存在しており、ブラックナイトとして戦うデインが、今後のMCUで活躍する可能性は高い。
ギモン・謎その4:ユニ・マインドって?
映画では、ファストスが発明した装置を使って、複数のエターナルズのパワーが融合されて生み出されたエネルギーがユニ・マインドと呼ばれていた。セルシたちはこれを使って、新たなセレスティアルズ・ティアマトの誕生を阻止しようとする。
原作コミックのユニ・マインドも本質は同じで、エターナルズたちによって生み出される純粋なエネルギー体のこと。ただし、生み出すのに装置は不要。また、生じたエネルギー体は人間の脳のような形状をしている。
ギモン・謎その5:セレスティアルズの目的
セレスティアルズの最終的な目的は、新たなセレスティアルズを誕生させること。エターナルズは、そのために創造された存在だったという驚愕の事実が判明する。
劇中では、その経緯の説明もある。新たなセレスティアルズは惑星内部に埋め込まれ、その惑星の知的生命体のエネルギーを用いて誕生する。その誕生には、一定量のエネルギーが必要なので、知的生命体=人類の数を増やさなくてはならない。そこでセレスティアルズは、人類を餌にする生物を攻撃させるため、ディヴィアンツを創造する。しかし、ディヴィアンツが人類も襲うようになったため、人類を守る種族エターナルズが生み出された。エターナルズは人類のためではなく、セレスティアルズのために創造された存在という設定はかなり衝撃的で、原作コミックもそうなのかとギモンが沸いてしまう。
結論から言うと、これに似た設定のマーベルコミックは存在する。とはいえ、エターナルズが初めてマーベルコミックに登場したジャック・カービーによる「The Eternals」にはこの設定はない。同作では、セレスティアルズが地球で類人猿による実験を行い、人類、彼らを守るエターナルズ、それに敵対するディヴィアンツを創造したという設定だった。
映画に似た設定が描かれるのは、2018年刊行の「Avengers: The Final Host」。同コミックでセレスティアルズは、人類の遺伝子に自分たちの天敵である寄生生物を滅ぼす可能性があることを知り、その研究に人類が必要なことから、エターナルズを生み出して人類を守らせていた。エターナルズがセレスティアルズのための存在だったという設定は、映画と同じなのだ。
ギモン・謎その6:2体のセレスティアルズ、アリシェム&ティアマト
劇中では、2体のセレスティアルズ、アリシェムとティアマトが登場する。どちらも原作コミックに登場するキャラクターで、映画でも原作を踏まえた設定になっている。
エターナルズたちに命令をするアリシェムは、かなり原作コミックに近い設定。コミックでは、地球を破壊するか残すかを判断するためにやってくる9人のセレスティアルズのリーダー。審判を下すことからアリシェム・ザ・ジャッジ(裁判官、判事)と呼ばれている。判断を下す役目なのは、映画も同じだ。
また、地球の内部で誕生を待つティアマトは、コミックでの別名はドリーミング・セレスティアルズ。アリシェムの命令に従わなかったため、精神を身体から分離させられ、身体は地球に埋められている。
ギモン・謎その7:マーベル映画にDCヒーロー?
ファストスの息子はイカリスを見て「スーパーマンだ」と言い、ギルガメッシュはカメラを回し続けるキンゴの付き人・カルーンを見て「バットマンのアルフレッドか?」と突っ込む。スーパーマンやバットマンは、マーベルではなくDCコミックスのヒーロー。つまり『エターナルズ』の世界にはDCヒーロー、またはDCコミックスが存在する世界なのだ。マーベル映画におけるDCヒーローのレファレンスは本作が初めてではなく、サム・ライミ監督の『スパイダーマン』(2002)にも登場している。メイおばさんが、主人公ピーター・パーカーに「あなたはスーパーマンじゃないのよ」と言っていた。ちなみに、ファストスの居間には『スター・ウォーズ』の塗り絵があり、『エターナルズ』の世界には『スター・ウォーズ』も存在する。
さまざまなギモンを解いていくと、『エターナルズ』には今後のMCUにリンクする要素が山ほど存在することがわかる。もちろん、アリシェムの審判を待つセルシたちの行方、スターフォックスと出会ったセナたちの行動など、『エターナルズ』の続きも気になるところ。エターナルズがMCUでどのような役割を担うのか、アベンジャーズとの共演はあるのか、今後の展開から目が離せない。
映画『エターナルズ』は全国公開中
(C) Marvel Studios 2021