共感ハンパない!『ミラベルと魔法だらけの家』でまさかの涙
提供:ディズニー
ディズニー長編アニメーション60作目という記念すべき映画『ミラベルと魔法だらけの家』は、色彩豊かで魔法にあふれた世界観に心が躍り、本格ミュージカルの趣に思わず踊り出したくなる作品。しかしそれだけではなく、一つの家族の人間関係を深く掘り下げた本作は、主人公のミラベルから姉たち、家長である祖母まで、リアルな登場人物たちの苦悩と葛藤に共感しかないシーンの連続! 明るく楽しげなビジュアルからは想像もつかないほど、涙腺を刺激する作品になっていました。(編集部・市川遥)
どこにでもいる普通の主人公に共感!
主人公のミラベルは、魔法に満ちた不思議な家に暮らすマドリガル家の少女。この家の人々は5歳の誕生日を迎えると一人一人独特な“魔法のギフト(才能)”を家から授かるのですが、なぜかただ一人だけ魔法をもらえなかったのが彼女です。魔法で町の人々を助ける人気者の家族たちに囲まれていることで募る「なぜ自分だけ?」という苦しみと疎外感を押し込めて、明るく振る舞うミラベルのけなげさといったら。つい周囲の人たちと自分を比べて、自分の小ささに思い悩んでしまうという経験は誰しもあるのではないでしょうか? そんな、自分を重ねることができるごく普通の主人公がミラベルなのです。
大好きな家族であっても、そのメンバーとの一対一の関係はちょっと複雑だったりするもの。姉妹でも価値観が全く違っている一方でいとことは馬が合ったり、かつては特別な絆で結ばれていた相手でも今はどう振る舞えばいいかわからなくなってしまっていたり……。本作は、そんな家族内の興味深い関係についても目を向けています。ミラベルと特に仲が良いのはいとこのアントニオで、5歳の儀式を迎える前に不安がってベッドの下に隠れてしまった彼を、ミラベルが安心させてあげる場面は感動的です。カラフルな楽曲に彩られた本作の音楽がやみ、痛みを抱えながらもミラベルがその大きな優しさを示す姿が繊細なアニメーションで表現されるシーンに目頭が熱くなります。
呪いでもある?“魔法”が表しているのは家族における個人の役割
自在に花を咲かせる長姉イサベラに、超人的なパワーを持った次姉ルイーサ、癒やしの力がある母フリエッタ……と“魔法のギフト(才能)”を授かったマドリガル家の人々を描く本作はとびきりマジカルでありながら、実のところ、その魔法が表しているのは“家”によって定められた各々の役割です。
長姉イサベラは何をしても完璧な皆の“お気に入りの子供”だから歩けばそこに花が咲き、次姉ルイーサは責任感があって誰もが頼りたくなってしまうから何でも支えられる怪力がある、といった具合。家族内での個人の役割が決まるのは5歳頃だから、“魔法のギフトが与えられるのは5歳の誕生日”というのにも説得力があります。ジャレド・ブッシュ監督は「家族というものは、人のことを決めつける傾向があります。おまえは運動選手向きだとか、音楽家向き、数学者向きだとか言ってね。そういう言葉は生涯、頭の中に残るものです」と説明しています。そして、そうした決めつけが過ぎると、本来は祝福であるはずの魔法も呪いに変わってしまうことに。魔法の家に危機が訪れ、家と家族を守るために立ち上がったミラベルは、傍からは完璧な人生を送っているように見えた姉たちも、その役割にがんじがらめにされて苦悩していたことを知ることになります。
キャラクターの苦悩・心情を歌った楽曲に共感!
本作のために8曲のオリジナル楽曲を書き下ろしたのは『モアナと伝説の海』や大ヒットミュージカル「ハミルトン」を手掛けた超売れっ子のリン=マヌエル・ミランダで、三姉妹それぞれの心情をつづった楽曲がとにかく最高です。魔法を持たないミラベルが抱え続けてきた胸の痛みを吐き出す「奇跡を夢みて」、“お姉ちゃんでしょ”と家族の重荷を一身に背負わされてきた次姉ルイーサの「増していくプレッシャー」、物心ついた頃から完璧であることしか許されなかった長姉イサベラが歌う「本当のわたし」。斎藤瑠希(ミラベル役)、3時のヒロインのゆめっち(次姉ルイーサ役)、平野綾(長姉イサベラ役)ら日本版声優陣の歌唱力&表現力は圧倒的で、共感を呼ぶ歌詞がダイレクトに胸に響きます。
ミランダの生き生きとした楽曲の数々や、アニメーターたちが振付師やダンサーと約1年にわたって作り上げた大掛かりなミュージカルシーンは、伝統的なディズニー・ミュージカルというよりも、まるで舞台ミュージカルのようなライブ感が楽しい仕上がり。その一方で、ミラベルにつらく当たるマドリガル家の家長、アルマおばあちゃんの過去についての楽曲「2匹のオルギータス」など、心の琴線に触れる美しいメロディーとそれにぴたりとハマった情感豊かなアニメーションにボロボロに泣かされるシーンも。誰よりも近くにいるはずなのについ決まった“役割”としてだけで見てしまいがちな家族一人一人に、そして自分自身の真価にも目を向けることの大切さをキャッチーな楽曲と共に説く本作は、多くの人の心を震わすはずです。
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