会話劇好きに刺さる!日常にあふれる偶然と想像
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは海外の批評家たちから熱い支持のある濱口竜介監督の映画『偶然と想像』。偶然が生む予想できない結末にウーマンの2人の反応は!(取材・文:森田真帆)
今回の映画は、12月17日公開の『偶然と想像』です。
第71回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリを受賞したヒューマンドラマ。かつての恋人に親友が思いを寄せていることを知った女性を筆頭に、偶然と想像をテーマにした三つの物語が展開する。メガホンを取るのは『ドライブ・マイ・カー』などの濱口竜介。『十二人の死にたい子どもたち』などの古川琴音、『グッド・ストライプス』などの中島歩、『水の声を聞く』などの玄理のほか、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真らが出演する。
パラ兄、初めての短編映画を楽しむ!
中川パラダイス(以下、中川):短編は初めてやったんだけど、話しもポンポン進むし、めっちゃ観やすかった。正直、「世にも奇妙な物語」みたいな短編って今まで避けてきたんだけど、短編3つで1本35分とか、ちょうど観やすい時間やったわ。
村本大輔(以下、村本):オレは濱口監督の映画が好きなんや。『寝ても覚めても』がニューヨークで上映された時に、想田和弘監督に誘われて一緒に観て、それから、『ドライブ・マイ・カー』とかけっこう濱口監督の作品観るようにしていて、ぜんぶめっちゃ好きやねん。どの作品も共通して、出てくる女性たちがみんなめっちゃ魅力にあふれていて、男がちょっとダメな人が多い。ウディ・アレンもそうやんか、出てくる男性がちょっと情けなくて、女性たちがいいんよね。
中川:会話の中にズレが生じてどんどん面白くなっていく、みたいなのめっちゃいいよな。3つ短編ある中では、3本目の同級生たちのやつがオモロかった。
村本:オレも3本目! 見心地もよくて、セリフまわしもオモロくてさ。もうあれごとキングオブコントに出ればいいのにって思ったよ。オレは銃撃戦がド派手なアクション映画じゃなくて会話劇が好きやから、こういう映画が好きっていう女の子めっちゃ好きやわ。
中川:僕も会話劇が好きやから、ドラマとかも「最高の離婚」とか「カルテット」とか会話がオモろい作品はめっちゃ観てきてん。この映画の会話もなんかすごいユニークやし、リアルやし、センスあるよな。なんかどれも日常の中でありそうなネタが多いやん。そういえばこないだ、3:3で飲んだとき、女の子の一人に旦那さんが芸人って子がおったんや。「え、僕より先輩かな?」って言ったら「多分先輩と思う」って言うててんけど、その子ハタチくらいの子でさ。20歳の嫁おる先輩って誰やねんって思ったら怖くなって、その先聞かれんくなったわ。
村本:いきなり、何の話やねん(笑)!
中川:会話の中からいろいろな恐ろしい偶然が見えてきたって話や!
自然すぎる俳優たちの会話に感動
村本:セリフが日常を切り取った感じで、そういう映画ってなかなかないからええなって思う。非現実的なのに、どこか現実的。この映画って、俳優がほんま自然にセリフを言ってて、まったく演技には見えんかった。どうやったらあんなにナチュラルにセリフを話せるんやろなって思っていたけど、監督が何回も何回もリハーサルして、俳優の口からスラスラと言葉が出てくるまで練習したって聞いたわ。コントのセリフを覚えるパラダイスみたいやな!
中川:オレらのコントの中で、早口でクイズみたいなんをバーッていうネタがあって、あのネタんときは、ほんまにスラスラ出てくるまでひたすら練習したわ。電車の中でマスクしてずーっとぶつぶつ練習して、朝起きて一発目にスラスラ言えるようになってるか何回もやる。ようは思い出しながら言うんじゃなくて、朝起きてボケっとした状態でも言えるようにしてたの思い出すわ。
村本:オレの作ったネタで、パラダイスの息子にパパでもなくママでもなく、村本さんミルクごちそうさまでしたっていうネタがあんねんけど、それは普段から言ってることやから、オレはスラスラどんどん話せんねん。普段から思っていることをそのまま話そうと思ってるし、それってなかなか慣れないけど、最近は舞台の上に立つことに慣れたから、いつもの話し方のまま話せんねん。
万人受けするタイトルを考える
中川:なんかでも最初に3本の短編って聞いたとき、物語がつながってるんかなーって勝手に考えてたけど、特になんも関係なかったやんな。
村本:なんでもかんでもつながってるわけないわ。派手なメジャー映画ばっかり観すぎてるアホが観ると、パラダイスみたいに「あれってもしかしてなんか意味あってつながってるんかな?」とか勝手に考察始めんねん!
中川:そら会話劇見慣れてない人は、ぜったい何かしらつながってるやろって詮索するやろ。僕は映画の終わりに「5年後……」とかテロップ出るとめっちゃワクワクするねん!
村本:『アベンジャーズ』の観すぎや! 映画が終わっても期待しながらずっと座り続けるやつやん。お前も絶対何か期待してまっとったんやろ。
中川:NG集とかあるかなって思ってん。でも、この連載しててめっちゃ良かったなって思うんは、『奇跡と想像』なんてめっちゃ難しい題名の映画ぜったい観ないからさ。普段やったら絶対観ない映画も、こうやって観たときにオモろいなーって思えるのはうれしいねん。
村本:普段スプラッターしか観ないパラダイスがそんなこというなんて珍しい! あと、タイトル『偶然と想像』やからな!!
中川:タイトルってめっちゃ観る人選ぶと思うねん。やっぱり『スパイダーマン』って言われたら絶対に観るけど、それってわかりやすさあるやん。ホラーやったら『13日の金曜日』とかさ。
村本:『13日の金曜日』って全然ホラー感ないやんか(笑)!
中川:でも観たいタイトルかどうかってめっちゃ大切やない? 僕はこの映画を僕みたいな人にも観てほしい。
村本:じゃあパラダイスやったらなんていうタイトルにするん?
中川:『イカれた女たち』。
村本:昭和の映画か!
中川:それやったら、『ミラクルガールズトーク』は?
村本:なんか吉本の若手コンビみたいな名前やんか! 濱口監督にこの映画のタイトル、『ミラクルガールズトーク』はどうやろって提案してみようぜ!
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『偶然と想像』12月17日公開
映画『偶然と想像』公式サイト
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ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。