年末年始にイッキ観したいおススメ海外ドラマシリーズ12選(2021-2022)
いよいよ間近に迫った年末年始。依然としてコロナ禍の不安に終わりが見えないため、昨年に続いて今年も、なるべく外出を控えるという向きも少なくないだろう。そんなお正月シーズンにおススメの過ごし方のひとつが、海外ドラマのイッキ観である。そこで今回は、近年話題になった作品の中から、映画ばりのスケール感やタブーもいとわないテーマなど、海外ドラマならではの醍醐味の詰まった12本をご紹介。海外旅行もままならない今、ドラマを見て海外気分を味わうのもまた一興だ。(文・なかざわひでゆき)
「クィーンズ・ギャンビット」(全7話)
幼くして両親と死に別れて養護施設で育ち、養父母のもとへ引き取られた複雑な生い立ちの女性ベス・ハーモン(アニャ・テイラー=ジョイ)が、やがて天才的なチェス・プレイヤーとして世界の注目を集めるものの、その一方で薬物やアルコールなどの依存症に悩まされるようになる。
舞台は女性の地位がまだ低かった1960年代のアメリカ。女性ゆえに男性ばかりのチェス界で軽んじられ、天才ゆえに周囲から変わり者扱いされる主人公が、自分自身の心の闇を克服しながら成長していく物語。アメリカが最も豊かだった1960年代を鮮やかに再現した、レトロなファッションや豪華なセットも見どころ。
さらに、夫に先立たれて未亡人となった養母アルマ(マリエル・ヘラー)や、養護施設で一緒に育ったアフリカ系女性ジョリーン(モーゼス・イングラム)など、社会的に弱い立場にある女性たちとの友情も感動的だ。
★この人に注目!
主人公ベス役を演じるのは、最新映画『ラストナイト・イン・ソーホー』が話題のアニャ・テイラー=ジョイ!
「クリックベイト」(全8話)
良き家庭人の真面目な男性ニック(エイドリアン・グレニアー)。ある日、家族はネットで話題の動画を見て愕然とする。そこには、「わたしは女性を虐待している」「再生回数500万に達したら死ぬ」というメッセージを掲げたニックの姿が映されていたのだ。彼が誘拐されたものと判断して捜査を始める警察。懸命に無事を祈る妻や子供、妹に母親。しかし、その先には予期せぬ展開が次々と待ち構えていた。
いったい誰がニックを誘拐したのか。動画に書かれたメッセージは本当なのか。二転三転する先の読めないストーリーが話題を呼んだサスペンス・スリラー。クライマックスで明かされる失踪事件の全貌と、意外すぎる犯人の正体を予測できる視聴者は少ないだろう。
さらに、情報リテラシーが求められるネット社会に潜む危険性、見た目ではわからない人間の複雑な多面性が浮かび上がる。社会派ドラマとしても人間ドラマとしても見応え十分だ。
★この人に注目!
大ヒットサイコスリラー映画『ゲット・アウト』の使用人役で強烈な印象を残した女優ベッティ・ガブリエルがニックの妻ソフィーを演じる!
「サーヴァント ターナー家の子守」(シーズン1:全10話、シーズン2:全10話)
生後間もない息子ジェリコを失ったショーン(トビー・ケベル)とドロシー(ローレン・アンブローズ)のターナー夫妻。ショックのあまり心を病んだドロシーのため、医者の薦めで赤ん坊の人形を使ったセラピーを試すことにしたショーンは、その人形の世話をするため住み込みの子守リアン(ネル・タイガー・フリー)を雇う。するとある日、ベビーベッドの人形が本物の赤ん坊になっていた……!
映画『シックス・センス』や『サイン』を大ヒットさせたM・ナイト・シャマランが製作総指揮と脚本を担当したホラーミステリー。赤ん坊はどこからやって来たのか。本当に死んだジェリコがよみがえったのか。子守リアンに疑いを向けて調べ始めるショーンだが、ターナー家はさらなる不可解な現象に見舞われていく。まるで先の読めない不条理なストーリー展開に引き込まれる。
シーズン3が来年早々に配信される予定で、シーズン4で完結することが既に決まっている本作。あのスティーブン・キングも自身のTwitterで大絶賛しているだけあって、ホラーファンやミステリーファンならば必見だ。
★この人に注目!
映画『ハリー・ポッター』シリーズのロン役でおなじみのルパート・グリントが、ドロシーの弟ジュリアン役で出演!
「サーヴァント ターナー家の子守」Apple TV+ にて配信中
「ザ・ボーイズ」(シーズン1:全8話、シーズン2:全8話)
舞台は大企業に所属するスーパーヒーローたちが、社会の平和と安全を守るために活動する世界。その華やかな活躍の陰で、悪者との戦いで巻き添えを食らい、愛する人を失った市民たちが自警団「ザ・ボーイズ」を結成し、地に堕ちたスーパーヒーロー軍団に復讐を果たそうとする。
正義の味方であるはずのヒーローたちが裏では名声に溺れて私利私欲の限りを尽くし、彼らを管理する大企業も実は政財界のコネを使って暴利をむさぼっていた……! という設定がユニークな異色のアメコミヒーロードラマ。金と権力がものをいう資本主義の不条理、強い者を無条件で賛美する大衆心理が浮き彫りとなる。
スーパーパワーを持たない「普通の人々」が、いかにしてヒーローたちに挑んでいくのか。ハードな残酷描写や性描写を交えながら、名もなき市民の意地を賭けた戦いがスリリングに描かれる。
★この人に注目!
ヒーローに恋人を殺された青年ヒューイ役のジャック・クエイドは、あのデニス・クエイドとメグ・ライアンの息子!
「ザ・ボーイズ」はAmazon Prime Videoにて配信中
「Sweet Home -俺と世界の絶望-」(全10話)
ある日突然、人間が次々と狂暴なモンスターに変貌するという怪現象が発生し、韓国全土が戒厳令下に置かれることに。貧困層ばかりが暮らす古いマンションに引っ越したばかりの若者ヒョンス(ソン・ガン)は、いつ誰がモンスター化するかわからないという状況の中、生き残りを賭けて近隣住民たちとマンションに立てこもる。
終末世界を舞台にしたサバイバル型パニックホラー。最先端のVFXや特殊メイクを駆使した壮大なスケール感もさることながら、自殺願望を抱えた孤独なヒョンスをはじめ、それぞれに人生の痛みや苦しみ、悲しみを抱えた住民たちの背景事情を掘り下げることで、格差や貧困、差別などの社会問題を浮き彫りにする骨太なストーリーも見応えがある。
社会の底辺で他人をいたわる余裕すら失った人々が、絶体絶命の状況下でお互いを必要とし合い、やがて強い絆で結ばれていく。血生臭い残酷な世界に人間の美しさを見出そうとする力作だ。
★この人に注目!
暗い過去に苦しむ美少年ヒョンスを演じるソン・ガンの、寂しげで悲しげな眼差しに魅了される!
「Sweet Home -俺と世界の絶望-」はNetflixにて独占配信中
「ヴィンチェンツォ」(全20話)
マフィアの顧問弁護士だった韓国系イタリア人ヴィンチェンツォ・カサノ(ソン・ジュンギ)が秘かに韓国へ帰国。とある古いマンションの地下に埋めた金塊を回収するつもりだったが、そのマンションが土地開発をもくろむ悪徳巨大企業に買収されたため、ヴィンチェンツォは立ち退きを拒否する住民グループに力を貸すことになる。
目的のためなら手段を選ばない悪徳企業側に対して、さらに容赦のないイタリアン・マフィアの流儀で対抗していくヴィンチェンツォの狡猾(こうかつ)な策士ぶりが痛快! 「毒を以て毒を制す」とはまさにこのことだろう。
また、貧しさゆえに行く当てのない住民たちとの触れ合いを通じて、社会正義に目覚めていくヴィンチェンツォの心の変化にも共感できる。ハードボイルドな韓流ノワールの世界に、庶民のたくましさを描く人情コメディーを融合した極上の娯楽作である。
★この人に注目!
クールなヴィンチェンツォ役のソン・ジュンギと、爽やかなインターン弁護士チャン・ジュヌ役のオク・テギョン、好対照なイケメンの共演も見逃せない!
「フライト・アテンダント」(シーズン1:全8話)
仕事で世界中を飛び回る客室乗務員のキャシー。滞在先のバンコクで一夜のアバンチュールを楽しんだ彼女だったが、翌朝二日酔いで目覚めるとホテルのベッドには相手男性の死体が!? パニックになって逃げ出したキャシーは、アメリカへ帰国するとFBIにマークされたことから、自らの手で犯人を突き止めようとするも、さらなる謎と陰謀と殺人が彼女を待ち受ける。
本年度のエミー賞で9部門にノミネートされた話題作。中でもユニークなのが、酒とパーティーと男に弱い主人公キャシーのキャラクターだ。国際線の客室乗務員としてバリバリ仕事をこなしつつ、私生活では問題だらけ。そんな彼女が酔ったせいでおぼろげな記憶を手繰り寄せつつ、悪戦苦闘しながらも意外な真相へと迫っていく姿は、ハラハラすると同時に笑いをも誘う。
王道的な「巻き込まれ型サスペンス」のスリルと、スタイリッシュなブラックユーモアのバランスも絶妙な作品。一度観はじめると止まらなくなるはずだ。
★この人に注目!
テレビドラマ「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」で有名なテレビ界のスーパースター、ケイリー・クオコがキャシー役でコメディエンヌぶりを発揮!
「ホークアイ」(シーズン1:全6話)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』から1年後。ニューヨークで子供たちと休暇を過ごしていたホークアイことクリント・バートンは、ひょんなことから事件に巻き込まれた若い女性ケイトを助けたところ、かつて正体不明の殺し屋ローニンとして世界中の犯罪者を暗殺していた頃の宿敵と対峙することになる。
アベンジャーズの一員であるホークアイが初めて単独主人公を務めるドラマシリーズ。今は家族と平穏な暮らしをしているホークアイが、かつてニューヨークの戦いで彼に命を救われたことから、憧れのあまりヒーローの真似事をするリッチなお嬢様ケイトとタッグを組む。無鉄砲で怖いもの知らずのケイトと、そんな彼女に振り回されるホークアイの、ユーモラスでほほ笑ましい師弟関係が見所だ。
もちろん、ホークアイを演じるのはジェレミー・レナー。ほかにも、ブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフの“妹”エレーナ・ベロワ役のフローレンス・ピューや妻ローラ役のリンダ・カーデリーニなど、映画シリーズのキャストが登場するのもファンにはうれしい。
★この人に注目!
映画『トゥルー・グリット』でオスカー候補になった元人気子役スターのヘイリー・スタインフェルドがおてんばなケイトを好演!
「ホークアイ」はDisney+(ディズニープラス)にて配信中
「マーベラス・ミセス・メイゼル」(シーズン1:全8話、シーズン2:全10話、シーズン3:全8話)
1950年代のニューヨーク。優しい夫と2人の子供に恵まれ、何不自由ない生活を送っていた裕福な専業主婦ミッジ(レイチェル・ブロズナハン)は、その夫からいきなり離婚を切り出されたことをきっかけに、スタンダップコメディアンとしてショービジネスの世界へ足を踏み入れる。
第70回エミー賞で主要5部門に輝く傑作コメディー。結婚して子供を産んで夫の夢を支えるのが女性の幸せ。そんな理想の生活が崩れ去ったことで、むしろ自らの才能と可能性に気づいたヒロインが、今度は自分自身の夢を追い求めてまい進していく。その姿に勇気をもらえることだろう。
人生の喜びも悲しみも笑い飛ばすシニカルな毒舌ユーモアが満載で、まるで各エピソードがスタンダップコメディーのよう。実在のコメディアンやナイトクラブ、当時のヒットソングなどを織り交ぜながら再現された、古き良きニューヨークのおしゃれなムードも魅力的だ。
★この人に注目!
レイチェル・ブロズナハンが演じる主人公ミッジの、下ネタや悪口が次々と飛び出す超ブラックな話芸は抱腹絶倒!
「マーベラス・ミセス・メイゼル」はAmazon Prime Videoにて配信中
「マンダロリアン」(シーズン1:全8話、シーズン2:全8話)
舞台は『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』で銀河帝国が崩壊してから5年後。凄腕の賞金稼ぎとして知られるマンダロリアンは、銀河帝国の残党に依頼された獲物を捕獲するのだが、それは伝説のジェダイ・マスターであるヨーダと同じ種族の幼い子供(=ザ・チャイルド)だった。いつしかザ・チャイルドに情の移ってしまったマンダロリアンは、無垢な幼子を守るため放浪の旅へ出ることとなる。
映画『アイアンマン』シリーズのジョン・ファヴロー監督が企画・製作総指揮・脚本を手掛け、映画『スター・ウォーズ』シリーズ初の実写ドラマシリーズとして大反響を呼んだ作品。最先端のVFXを駆使したスペクタクルなビジュアルに圧倒されつつ、主人公マンダロリアンとザ・チャイルドの疑似親子的な絆に癒され、彼らが繰り広げる危険な冒険にワクワクさせられる。
さらに、往年のマカロニ・ウエスタンにインスパイアされた渋い世界観や、孤独に生きるニヒルな一匹狼マンダロリアンのキャラクターも魅力的。黒澤明監督の『七人の侍』を下敷きにしたエピソードも必見だ。
★この人に注目!
「ベビーヨーダ」とも呼ばれるザ・チャイルドのキュートなしぐさに思わず胸キュン!
「マンダロリアン」はDisney+(ディズニープラス)にて配信中
「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」(全7話)
ペンシルバニア州の田舎町イーストタウン。地元警察の女性刑事メアは1年前に起きた未解決の少女失踪事件を再捜査することに。そんな折、今度はシングルマザーの少女の遺体が森で発見される。こちらの捜査も兼ねることになったメア。やがて事件を巡って小さな町に疑心暗鬼が渦巻き、メア自身の複雑な家庭事情も彼女の肩に重くのしかかっていく。
オスカー女優ケイト・ウィンスレットが主演を務め、映画『ラン・オールナイト』などの脚本家ブラッド・イングルスビーが企画・製作総指揮・脚本を担当。本年度のエミー賞では16部門にノミネートされ、そのうち4部門を獲得した。殺人事件の捜査を通して浮かび上がる、狭い地域社会の一筋縄ではいかない人間関係。主人公メアを含め、誰もが心に闇を抱えている。そんな痛みや悲しみをたたえた人間ドラマに誰もが引き込まれるだろう。
また、脇を固める俳優陣もガイ・ピアースやエヴァン・ピーターズ、ジーン・スマートなど渋い名優がそろう。じっくりと腰を据えて観たい重厚な作品だ。
★この人に注目!
孫のいる平凡な中年女性メアを演じる大女優ケイト・ウィンスレットの変身ぶりにびっくり!
「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」はU-NEXTにて配信中
「メイドの手帖」(全10話)
同居する恋人の精神的DVから逃れるため、まだ2歳の娘マディ(ライリー・ナヴェア・ウィテット)を連れて家を出た女性アレックス(マーガレット・クアリー)。裕福な家庭のメイドとして働きながら、シングルマザーとして人生の再出発を図ろうとする彼女に次々と困難が降りかかっていく。
利用したくても複雑すぎる社会福祉制度をはじめ、女性に不利な雇用条件や精神的DVに対する世間の無理解、シングルマザーに対する偏見など、女性の経済的な自立を阻害するさまざまな問題は、おそらく日本人にとっても人ごとではないはず。また、自身が複雑な家庭環境に育ったため、社会で自立するための知恵や知識を学ぶ機会のなかったアレックスの境遇を通して、世代間で連鎖していく貧困の厳しい現実も浮かび上がる。そうした中、娘を守り育てるため懸命に奮闘していくアレックスの姿に、誰もが共感できることだろう。
★この人に注目!
アレックス役のマーガレット・クアリーと、その母親役のアンディ・マクダウェルは実の母娘!