【ネタバレ解説・考察】『マトリックス レザレクションズ』では何が起こったのか?
情報量の多さとストーリー展開の速さで見る者を圧倒する映画『マトリックス レザレクションズ』。新たな事実を消化する前にストーリーが先に進むこともしばしば。本国アメリカでの公開もスタートした今、劇中で何が起きたのかを整理する。(文・平沢薫)
※本記事はネタバレを含みます。映画『マトリックス:レザレクションズ』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします
マトリックスと現実の変化
『マトリックス』の舞台は2つの世界がメインとなっている。一つは、人工知能が作った仮想現実である「マトリックス」。もう一つは、その真実に目覚め覚醒した人類が生きる「現実」。「マトリックス」はこれまで5人の救世主によって作り変えられており、映画3部作でネオがまた作り変えた。その後、2つの世界がどうなったのか。『レザレクションズ』冒頭の2つの世界の状況をざっくりと整理する。
マトリックスの変化
・映画3作目『マトリックス レボリューションズ』から60年ほど経っている。
・映画3部作の出来事は、マトリックス内で大ヒットゲームの物語になっている
・ネオは、ゲーム「マトリックス」が代表作のクリエイター、トーマス・アンダーソンとして生きていて、上司から続編を作るよう要求される。
・トリニティーは夫と子供たちと暮らす専業主婦ティファニーになっている。
・エージェント・スミスはネオが働くゲーム会社デウス・マキナの経営者「スミス」になっている。
・モーフィアスとエージェント・スミスが融合したプログラムが、トーマスの作ったモーダル内でエージェントとして活動している。
・アナリストが「マトリックスの設計者」アーキテクトの後任者になっている。
・オラクルは消去され、彼女が保護したサティーは成長している。
現実世界の変化
・過去シリーズの戦いは、歴史的な出来事として知られている。
・過去の戦いに起因する電力不足で機械同士の戦争が起こった。
・アナリストは、マトリックスの再構築とエネルギー確保にネオとトリニティーが必要なため、2人を再生し、ポッドに入れて眠らせている。
・人類はザイオンではなく「アイオ」という場所に住み、ナイオビ(モーフィアスの元恋人でホバークラフトの元船長)が将軍になり統治している。
・人類とマシンは敵対関係にある者だけではなく、シンシエントと呼ばれる人類と共生するマシンが登場している。
『レザレクションズ』で起きた出来事
『レザレクションズ』を観ていると、迫力のアクションや謎めいたセリフに気を取られてしまうが、主要な出来事を時系列順に並べる。
出来事
・高層ビルで窓を清掃していたバッグスが、屋上から飛び降りようとするトーマス・アンダーソンを目撃。ネオ見た目が変えられていたが、彼と目が合った時、救世主ネオであることを直感する。ちなみに1作目でネオが上司に怒られるシーンで、彼は窓の外の清掃員を見ていた。
・モーフィアスは、トーマスが作ったプログラム。エージェント・スミスの属性も持ち、エージェントの姿で存在していたが、以前から自分の正体に疑問を抱く予兆を見ていた。バッグスの行動によりモーフィアスとして覚醒する。
・バッグスとモーフィアスは、トーマス・アンダーソンに働きかけ、彼がネオであることを思い出させる。ネオは、ポッドで目覚めた時に、向かい側のポッドでトリニティーが眠っているのを見て、トリニティーを覚醒させることを決意する。
・ネオの覚醒に気づいたアナリストは、ネオとトリニティーが覚醒すると"マトリックス"に不具合が生じるため、ネオの行動を阻止しようと攻撃する。
・ネオの覚醒に伴いエージェント・スミスは、ネオを攻撃する。
・サティー(第3作で少女の姿で登場したプログラム)は、父親がポッド設計者だったこと、ネオとトリニティーのポッドは特殊仕様だったことを明かし、ポッドの中のトリニティーを目覚めさせる計画にバッグスとモーフィアスが協力する。
・ネオは"マトリックス"でティファニー/トリニティーに「マトリックス」か「現実」に残るかを選択させ、最終的にトリニティーは現実を選ぶ。アナリストが2人を攻撃するが、スミスがそれを阻止。ネオとトリニティーは逃走する。
・ネオとトリニティーは、アナリストに攻撃されて追い詰められ、ビルからジャンプ。今回はトリニティーが飛翔する。
さまざまな要素が絡み合う『レザレクションズ』だが、主な出来事はこうなる。とはいえ、ある程度の解釈を観客にゆだねるのは『マトリックス』シリーズの定番。例えば、ネオと敵対しているエージェント・スミスが、終盤でアナリストのネオへの攻撃を阻止した理由は、映画では明確には語られないので、さまざまな推測が可能だろう。アナリストの支配に抵抗したのかもしれない。または、アナリストがネオを倒した後に生まれる"マトリックス"よりも、ネオたちが作り直す"マトリックス"の方を選択したのかもしれない。こんなふうに、あれこれ推測するのも、これまでと変わらない『マトリックス』の愉しさなのだ。
映画『マトリックス:レザレクションズ』は全国公開中
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