【ネタバレ】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のアレって?小ネタ・オマケシーン解説
トム・ホランド主演『スパイダーマン』シリーズ三部作の完結編となる映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、観客をあっと驚かせるネタの宝庫! カメオ出演やマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品とのリンクなど、映画がもっと楽しくなる見逃し厳禁の小ネタを徹底解説します。(文・平沢薫)
あのヒーローがMCUに登場!原作者へのオマージュもたっぷり
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、映画冒頭からすでにMCU作品とのリンクが連続している。まず、ピーターの頼れる助っ人として登場する盲目の弁護士は、デアデビルことマット・マードック。Netflixドラマ「Marvel デアデビル」でマードックを演じたチャーリー・コックスがMCUでも再演している。また、ピーターとMJ(ゼンデイヤ)がウェブスイングで街を飛ぶ時、「ロジャース:ザ・ミュージカル(Rogers: The Musical)」の看板が見えるが、これはドラマ「ホークアイ」に出てきたアベンジャーズを描くミュージカルと同一のものである。そして、ピーターがドクター・ストレンジの館を訪れた際に、ストレンジがコロンビア大学のパーカーを着ているのは、原作コミックにおいて、彼が同大学で医学の博士号を取得しているのを踏まえたものだ。
劇中には、スパイダーマンの生みの親である伝説的コミックライター、スタン・リーとスティーヴ・ディッコへのオマージュも散りばめられている。スタンの誕生日である1922年12月28日は、ピーターがハイウェイで飛び乗った車の後ろにいるタクシーのナンバー(1228)として、ディッコ(DITKO)の名前は壁のグラフィティーとして2度登場。ピーターとMJが学校の屋上で寝転んでいる時の後方と、リザードを乗せたトラックが駐車した場所の近くの壁である。
そして、何といっても一番のサプライズは、トビー・マグワイア(サム・ライミ監督版シリーズのスパイダーマン)とアンドリュー・ガーフィールド(マーク・ウェブ監督版のスパイダーマン)の登場だ。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)で、トビー、アンドリュー、トム版スパイダーマンの顔合わせが実現した。ちなみに、アニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の主人公である黒人少年マイルス・モラレスについても、エレクトロ(ジェイミー・フォックス)の「どこかに黒人のスパイダーマンもいるに違いない」というセリフで匂わせている。本作はまさに、2000年代のスパイダーマン全員をフォローしているのだ.
さらに、歴代スパイダーマンそれぞれの体験を踏まえたシーンも登場する。ヴィランたちとの決戦直前、トビー版ピーターが背中を痛めている様子を見せるが、これはピーターが『スパイダーマン2』(2004)でビルから落ちて、「背中が…」と言いながら歩いていたことを思い出させる。そして胸を打つのが、アンドリュー版ピーターが落下するMJを救うシーン。彼は『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)において、同じような状況で恋人グウェン(エマ・ストーン)を救うことができなかった。だからピーターはMJを救った時、今にも泣きそうな顔をしているのだ。『アメイジング・スパイダーマン2』から7年越しにピーターに救済の機会を与え、深すぎる心の傷を少しでも癒そうとするこのシーンには、思わず目頭が熱くなる。
また、物語の原点回帰も見逃せない。2000年代のスパイダーマンの原点、ライミ監督による『スパイダーマン』1作目のキーワードであり、その後のスーパーヒーローの大原則となったセリフ「大いなる力には、大いなる責任が伴う」がついに登場する。もともと原作コミックにあった名言だが、本作ではメイおばさん(マリサ・トメイ)がこの言葉を発する。こうして本作のスパイダーマンは、スーパーヒーローの原点に立ち戻っており、そのうえで「ヴィランを倒すのではなく、ヴィランを救う」という新たなスーパーヒーローを目指すのだ。
スパイダーマンの原点回帰はもう一つある。それは、ラストシーンのスパイダーマンスーツ。ピーターの存在は人々の記憶から消えてしまったので、スターク・インダストリーズの協力もなく、自宅のミシンでスーツを自作している。そのスーツこそ、スパイダーマン初登場回のコミック「Amazing Fantasy #15」(1962)で見られるクラシックスーツのデザインにそっくりなのだ。
さらに、エンドロールには重要人物の名前が登場。スタッフクレジットの途中で感謝が捧げられているアヴィ・アラッドは、2000年代の全ての『スパイダーマン』映画の生みの親でもある映画プロデューサー。2002年に彼が製作総指揮を手掛けたライミ監督の『スパイダーマン』第1作が、マーベルのスーパーヒーロー映画史上初めて世界的大ヒットを記録。ここからマーベル映画の快進撃は始まったのだ。彼はその後のスパイダーマン映画全作の製作に参加している。
そして『スパイダーマン』シリーズの小ネタも山盛り。ピーターがドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)に遭遇する時に着ているスーツは、『スパイダーマン3』でトビー版ピーターが着ていたスーツのデザインとそっくり。そのトビー版ピーターが親友ハリー・オズボーンに裏切られたエピソードをネッドに語ると、ネッド(ジェイコブ・バタロン)は「自分はそんなことはしない」と言うが、原作コミックでは、ネッドは悪役ホブゴブリンに変貌している。
また、ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の呪文が発動した後、ピーターがMJのアルバイト先を訪ねると、MJは前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』でピーターがプレゼントしたネックレスを付けている。そして、ピーターの新しいアパートはトビー版のアパートに似ていて、机には『スパイダーマン:ホームカミング』に登場したレゴ『スター・ウォーズ』のデス・スターを連想させるパルパティーンのフィギュアが置いてある。
今後のMCUにつながる!?2つのオマケシーン
今後のMCUにつながりそうな、気になる小ネタも続々。ドクター・ストレンジが、マルチバースの裂け目を閉じようとする時に、別次元の来訪者たちのシルエットが見えるが、その中にはサイのような見た目のライノ、サソリのパワーを持つスコーピオン、ロシア貴族で狩猟の名手のクレイヴン・ザ・ハンターらしきものが映っている。ライノは、アンドリュー版ピーターが本作でも言及していたように『アメイジング・スパイダーマン2』のヴィラン、スコーピオンは『スパイダーマン:スパイダーバース』に登場している。クレイヴン・ザ・ハンターは、アーロン・テイラー=ジョンソン(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のクイックシルバー役)が主演を務める単独映画として企画が進行中。『トリプル・フロンティア』のJ・C・チャンダー監督がメガホンを取り、2023年1月13日に全米公開予定だ。
さらに、本作には2つのオマケシーンが存在。1つ目はソニー・ピクチャーズ製作のスピンオフ映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のポストクレジットシーンに直結する。突然ヴェノム&エディ・ブロック(トム・ハーディ)がスパイダーマンが存在するユニバースに飛ばされたのは、本作でドクター・ストレンジが唱えた呪文のせいだったようだ。二人がまた急に姿を消したのは、ドクター・ストレンジが最後の呪文を唱えた時に元のユニバースへ戻されたからだろうが、こんなシーンがあるのもヴェノムのMCU参加を予告しているような? MCUの世界に残されたシンビオートの一部も気になるところ。
そして、エンドクレジット後に挿入された2つ目のオマケシーンは、5月4日日本公開の『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』に直結する。ドラマ「ワンダヴィジョン」のラストに映ったワンダの隠れ家や、アニメーションシリーズ「ホワット・イフ」に出てきたもう一人のドクター・ストレンジらしき人物も登場。しかも、同作の監督はトビー版『スパイダーマン』三部作のサム・ライミであり、ここでも『スパイダーマン』とリンクする。
ドクター・ストレンジといえば、ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズに名前がセリフ内で登場している。2004年の『スパイダーマン2』で新聞社デイリー・ビューグルの編集長J・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)が怪人ドクター・オクトパスに名前をつけようとする時、ライミ監督の弟テッド・ライミふんする記者が候補の一つとして挙げるのがドクター・ストレンジである。ジェイムソンは「いいね」と言ってから「もう使われている」と気づいて却下するが、約20年も前からライミ監督はドクター・ストレンジと縁があったのかと思うと楽しい。