異色の特撮もの!『大怪獣のあとしまつ』など2月の5つ星映画
今月の5つ星
人気シリーズ最新作から異色の特撮もの、映画賞レースを騒がせているスピルバーグ監督作にウィル・スミス主演作、そしてトロント国際映画祭を制したドキュメンタリーまで、見逃し厳禁の作品をピックアップ。これが2月の5つ星映画5作品だ!
あの頃の自分と出会える感涙必至の最新作!
『ゴーストバスターズ/アフターライフ』2月4日公開
『ゴーストバスターズ』の生みの親、アイヴァン・ライトマン監督の息子ジェイソン・ライトマンがメガホンを取ったシリーズ最新作。ニューヨークからオクラホマの田舎町に舞台を移し、ゴーストバスターズの孫世代が新たな騒動に立ち向かう。小さい体にプロトンパックを背負い、ECTO-1の大きなハンドルを握る新世代ゴーストバスターズの姿は、かつてごっこ遊びに夢中になったファンに重なるようで感動モノ。シリーズ未見でも十分に楽しめる構成だが、旧作のイースターエッグがあちこちに仕込まれており、復習しておくと面白さが増す。旧作テイストのどこか間抜けなゴーストたちも懐かしい。
スペングラー博士の孫、フィービーを演じたマッケナ・グレイスをはじめ、子役たちの演技は瑞々しく、アントマン俳優のポール・ラッドのコメディーリリーフぶりもハマっている。クライマックスには感涙必至のサプライズも用意されており、ファン必見の一本。(編集部・入倉功一)
オフビートな笑いで、国家存亡の危機を描く
『大怪獣のあとしまつ』2月4日公開
人類を恐怖に陥れた巨大怪獣が死んだ後、爆発の危険もある死体をどう処理するか……という事態に直面した人々のエンタメ群像劇。国家存亡の危機が壮大なスケールで描かれ、いわば『シン・ゴジラ』のその後を描く特撮ものとして楽しめる。「時効警察」や『インスタント沼』などの三木聡のオフビートな笑いも健在で、オダギリジョーら三木組の常連が登場するのもファンにはうれしいキャスティングだ。
国家の危機を迎えても不毛な議論を繰り広げる、西田敏行ふんする内閣総理大臣ら国家の要人たちの姿に、コロナ禍で混乱した政府という現在進行形の状況を重ね合わさずにはいられない。そのなかで、三木組初参加となった山田涼介と土屋太鳳が演じる、死体処理という使命のために奔走する若き二人に希望が託されるのは、監督のメッセージだろう。未曽有の事態が終わった後、どのように未来を描くのか。大怪獣の名前が「希望」であることも偶然ではない。(編集部・大内啓輔)
主演二人の輝きは衝撃的!
『ウエスト・サイド・ストーリー』2月11日公開
スティーヴン・スピルバーグ監督が同名ミュージカルを映画化。この物語が60年を経ても色あせない理由の一つは、人種間の対立という普遍的なテーマだ。ポーランド系移民トニー(アンセル・エルゴート)とプエルトリコ系移民マリア(レイチェル・ゼグラー)の恋物語を軸に、二つの移民グループの背景がきめ細やかに掘り下げられている。
1961年の映画版では、助演のジョージ・チャキリス(ベルナルド役)とリタ・モレノ(アニータ役)がアカデミー賞を手にする高い評価を得たが、本作は主演のアンセルとレイチェルの輝きが最大の魅力。「ロミオとジュリエット」の有名なバルコニーのシーンを模した「トゥナイト」の歌唱はその最たるもの。障害物によって互いの顔がなかなか見えない。その過程を丁寧に描くことで二人のもどかしい気持ちがより効果的に表現されている。芸達者なキャストによるダンスシーンも目を引き、街中で繰り広げられる「アメリカ」のシーンは圧巻!(編集部・石井百合子)
国を超えて人が思い合う姿に何度も胸を打たれる
『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』2月11日公開
2021年の第46回トロント国際映画祭で観客賞(ドキュメンタリー部門)に輝いたドキュメンタリー。2018年、タイで豪雨により少年ら13人が洞窟内に取り残された遭難事故の舞台裏を、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作『フリーソロ』のエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ&ジミー・チン監督が描く。
特筆すべきは、救助に携わった多くの関係者へのインタビューから事故の全貌に迫る正確さ。異世界である洞窟潜水や、潜水士のバックグラウンドも掘り下げることで、ただの救出ドキュメンタリーではないドラマチックな作品に仕上がっている。圧巻なのは、実際の救出現場の内部映像と、VFXなどを駆使した再現映像の相乗効果から生まれる臨場感。死と隣り合わせの救出劇を体感しているような緊張感だ。悪条件が重なっても知恵を絞って突き進む姿や、国を超えて人と人が助け合い、気遣いあう姿に、何度も胸を打たれる。(編集部・小松芙未)
ウィル・スミスのオスカー級の名演!
『ドリームプラン』2月23日公開
ビーナスとセリーナのウィリアムズ姉妹を彼女たちが生まれる2年以上前から「テニスの世界チャンピオン」にすると決めて綿密に計画を立て、それを本当に実現してしまった父親リチャードを主人公にしたドラマ。自身はテニス未経験、コーチを雇うお金もコネもなく、住まいは犯罪が多発する劣悪な地域……という逆境をもろともせず、たゆまぬ努力と揺るぎない信念で成功へと突き進んでいくウィリアムズ家の物語は、まさに映画向きだ。
リチャードが憑依したかのような名演を見せたのはウィル・スミス。物議を醸しがちな人物として知られながらも、“娘たちのため”という芯の部分は決してぶれることのなかったリチャードを、時に破天荒に、時に繊細に、愛情深く多面的に演じており、アカデミー賞有力と目されるのもうなずける。リチャードだけでなく、ビーナスとセリーナを支え続けた母と姉たち、チームとしてのウィリアムズ家の結束力の強さが、爽やかな感動を呼ぶ。(編集部・市川遥)