『ゴーストバスターズ/アフターライフ』オマージュ&イースターエッグ集【ネタバレ注意】
1980年代を代表するエンタメ大作『ゴーストバスターズ』のその後を描いた『ゴーストバスターズ/アフターライフ』が劇場公開中だ。今作の主人公は、ゴーストバスターズの立ち上げメンバーのひとり、イゴン・スペングラー博士のふたりの孫たち。登場するゴーストたちも、その流れを汲んでいる。そんな世界観だけでなく、劇中にはオマージュやお遊びなどオリジナルへの愛が満載。映画にちりばめられたイースターエッグを紹介する。(文:神武団四郎)
【ネタバレ注意】本記事は『ゴーストバスターズ/アフターライフ』のネタバレを含みます。鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
映画で最初に圧倒されるのがオープニング。製作会社ゴースト・コープのロゴマークに続き、雷鳴と共に岩山の上にうず巻く不気味な雲が映し出される。そのビジュアルは、まるでスティーヴン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』で、巨大UFOが出現したデビルズタワーのよう。これを観てピンときた人もいるかもしれない。第1作でヒロインのディナ(シガニー・ウィーバー)がズールに襲われるくだりで、キッチンから強烈な光が射し込むカットがあるが、それが『未知との遭遇』で少年がUFOに連れ去られるシーンそっくりだったのだ。アイヴァン・ライトマン監督が参考にしたという説もあったが、アイヴァンの息子ジェイソン・ライトマンが監督した今作のオープニングはそれを違う形で裏付けた? ちなみに映画の冒頭、家に戻ったイゴンがソファに腰掛けたままズールに襲われるくだりは、上記のディナが襲われる姿が再現されていた。
イゴンの死を知らされ、彼の住居を訪れた娘のキャリーと孫のフィービー、トレヴァー。雑然とした部屋の片隅には、塔のように天井近くまで本が積み重ねられていた。これは第1作の冒頭、ニューヨーク公共図書館でイゴンたちが目撃した心霊現象へのオマージュだ。劇中では「1947年のフィラデルフィアで記録されたのと同じ現象」と紹介されていた。
3人にイゴンの死を知らせたのが、彼の雑務を手伝っていたという女性。彼女こそ、オリジナルシリーズでゴーストバスターズ社の事務員をしていたジャニーン・メルニッツ(アニー・ポッツ)だ。ジャニーンは『ゴーストバスターズ 2』で会計士のルイス・タリー(リック・モラニス)と結ばれたが、第1作ではイゴンとの親密な関係をうかがわせる描写がいくつもあった。イゴンをサポートしていたのも理にかなっているというわけだ。ちなみに第1作のノベライズでは、ふたりは同じアパートの住人で、公認の仲として描かれていた。
祖父の家で暮らすことになり、科学のサマースクールに通いはじめたフィービー。教師グルーバーソンは自分の研究にご執心で、授業そっちのけで、生徒たちに1983年公開の映画『クジョー』を観せていた。この作品は狂犬病にかかったセント・バーナードが人間を襲いはじめるスティーヴン・キング原作のホラー映画。母親と幼い兄妹がテラードッグ襲われる展開からのチョイスではないか。別の日に教室で流れていたのは、おもちゃの人形に殺人鬼の魂が宿る『チャイルド・プレイ』(1988)。こちらは中盤の“スーパーマーケットの惨劇”の前振りかも。
家にいる“見えない誰か”の存在を知ったフィービーは、地下にある祖父の秘密の研究室にたどり着く。そこにはさまざまな機器がところ狭しと並んでいたが、目に付く場所に置かれていたのが数々のシャーレ。第1作でイゴンは、自分の趣味はカビや細菌の収集だと語っていたが、晩年も続けていたらしい。ほかにも部屋にはいろんなお宝が眠っていそうなので、リピート鑑賞やソフト化の際に発掘してみるのも楽しそう。
研究室のロッカーで、祖父のユニフォームを見つけたフィービーがポケットをさぐると、中から出てきたのがメガネと ネスレ クランチ の包み紙。これは第1作の冒頭でライブラリー・ゴーストと対峙した後、ピーター・ヴェンクマン(ビル・マーレイ)がイゴンにご褒美として渡したキャンディーバーだ。またトレヴァーが修理したECTO-1(エクト・ワン)のグローブボックスには、1作目でイゴンが食べていたケーキ菓子トゥインキーが入っていた。タバコを吸わないイゴンは甘党だったようだ。ちなみにトゥインキーは、ビルも出演したコメディホラー『ゾンビランド』(2009)でタラハシーの大好物としてもおなじみ。
金属が大好物のゴースト、マンチャーと派手なバトルを繰り広げ町をめちゃくちゃにしたフィービーたち。拘置所に入れられた彼女は、ダメ元で活動当時のゴーストバスターの事務所に電話をしてみる。このとき電話をしたいと申し出た彼女に保安官が返したセリフが「誰にかける?(Who you gonna call?)」で、これはシリーズを通してお約束の名ゼリフ。ちなみに番号は生きており、オカルト書店を経営するレイモンド・スタンツ(ダン・エイクロイド)が電話に出た。この書店は第2作でレイが趣味を兼ねてはじめた書店である。
今作で華麗に復活したテラードッグ。ルックスはもちろんアクションまで再現され、その大暴れに感激した人も多いだろう。今作ではスーパーマーケットのシーンに初登場。店内に積まれたドッグフードをむさぼり食っていたが、食べ物の嗜好も犬と同じみたい。その姿を見て思い出すのが第1作で鳴き声を聞いたルイスのセリフ「誰の犬だい?」。
ズールに取り憑かれたキャリーが、いかにも“憑かれてます”な態度でフィービーたちに接する姿は、あらためて本作がコメディーだと思い出させてくれる。このシーンのキャリーのセリフ「ママはいない、いるのはズールだけ」は第1作のピーターとディナのやり取り「ディナはいない、いるのはズールだけ」の再現だ。
第1作のクライマックスで、みごとゴーザを倒したゴースートバスターズの4人。彼らはマシュマロマンの溶けた体液を浴びて泡だらけになってしまう。スーパーで売られていたマシュマロがとして動きだす今作では、ミニ・マシュマロマンを退治したポッドキャストが大量の泡に包まれた。やはりマシュマロマンのボディはマシュマロと同じ成分らしい。
エンドロールの途中で顔を出したピーターとディナ。ふたりが使っていたESPカードと電気ショックマシンは、第1作でピーターが学生相手に使っていたものだ。エピローグのイゴンとジャニーンのラッキーコインをめぐるやり取りは第1作の未使用シーンで、特典映像としてパッケージ版に収録された映像。ジャニーンとイゴンをつなぐエピソードとして使用するとは、心憎い演出である。
その後ニューヨークの懐かしのオフィスも登場したが、ラストカットで赤いランプが点滅した鉄の扉はゴースト貯蔵庫。ゴースト騒ぎはなくなったというこの街で、再び大騒動が起きることを予感させるワクワクする幕切れとなった。実業家として成功を収めたウィンストン・ゼドモア(アーニー・ハドソン)が、ゴースト退治のためフィービーたちをこの街に呼び寄せる……なんて展開を夢想しながら新シリーズの発動を待ちたい。