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韓国ドラマ「39歳」は何が面白いのか?

39歳
Netflixシリーズ「39歳」独占配信中

 日本で大ブームを巻き起こしたドラマ「愛の不時着」のヒロインを演じたソン・イェジン、人気ドラマ「賢い医師生活」シリーズで主人公グループの紅一点を演じたチョン・ミド、ミュージカルなどでキャリアを積んできたキム・ジヒョンが共演し、話題を集めてきたNetflixシリーズ「39歳」。人生の曲がり角を迎えた3人の独身女性の深い友情とそれぞれの愛情、深い悲しみと小さな喜びが入り混じる日常を描いたヒューマンドラマだ。

 現時点では全12話中、8話まで配信が進んでいるが、Twitterのタイムラインには毎回のように「涙止まらない」「めちゃくちゃ泣ける」「身につまされる」などの感想が並ぶ。あらためて、どのような物語か振り返ってみたい。(以下、一部ストーリーに触れています)

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39歳
ソン・イェジン演じるチャ・ミジョ

 主人公は皮膚科クリニックの院長を務めるチャ・ミジョ(ソン・イェジン)、女優を目指していたが演技指導者になったチョン・チャニョン(チョン・ミド)、デパートの化粧品売り場でセールスマネージャーを務めるチャン・ジュヒ(キム・ジヒョン)の3人。高校時代に出会った彼女たちは、その後20年近く親友として過ごしてきた。

 何かといえば集まってどこかへ行き、何もなくても集まって酒を飲む。ミジョが「私たちにプライバシーはないの?」と言えば、チャニョンが即座に「ない」と言い切るほどの親密さだ。独身の3人は、お互いの葬儀を誰が行うかまで話し合っている。児童養護施設で育ち、義父母に育てられたミジョはこう言う。「“家族も同然の友達”。そんな言葉じゃ足りない。本当の家族を知らないから」。

 39歳にもなると、結婚して家庭がなくても、それぞれ背負っている過去と現在がある。ミジョは裕福な家に引き取られて、姉のミヒョン(「イカゲーム」で主人公の元妻を演じたカン・マルグム)らの温かい愛情に包まれて育ったが本当の親の顔を知らない。クリニックの経営も精神的に疲れるようで1年間のリフレッシュ休暇を計画している。

39歳
チョン・チャニョン(チョン・ミド)

 チャニョンは妻子ある男性、キム・ジンソク(イ・ムセン)を長年愛しているが、彼の優柔不断な態度に疲れきっている。ジュヒはがんを患った母親のヤングケアラーとして進学を諦めた過去があった。今も母親と同居しており、恋愛の経験もない。楽しく笑いあっている日常の裏には、悲しい経験も無数にあっただろう。だけど、いつだって彼女たちは寄り添い、支え合いながら生きてきた。まさに家族以上の存在だ。

 そんな折、ミジョは皮膚科医のキム・ソヌ(ヨン・ウジン)と出会ってお互いに惹かれあい、ジュヒは中華レストランのシェフ、パク・ヒョンジュン(イ・テファン)と知り合う。そして、チャニョンには余命わずかのすい臓がんという診断が下される。当然、ミジョとジュヒのショックは計り知れない。自らの余命を知ったチャニョンと、彼女を支えようとするミジョとジュヒの選択とはーー。

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キム・ソヌ(ヨン・ウジン)とミジョ(ソン・イェジン)

 難病と余命を扱った映画やドラマは数知れずあるが、「39歳」は日常が悲劇と喜劇の背中合わせでできていると教えてくれる。チャニョンの病を知って悲しみで落ち込むミジョをソヌがそっと抱き寄せるが、それを盗み見した姉のミヒョンがなんとも言えない笑みを浮かべる。ミジョとチャニョンが抗がん治療について深刻な言い争いをしていると、宝くじが当たったジュヒから浮かれた連絡が入る。禍福はあざなえる縄のごとし。

 だけど、ミヒョンは涙ながらに真相を告白したミジョを誰よりも早く抱きしめるし、ジュヒは宝くじの幸運をチャニョンに分け与えるため当たりくじをシュレッダーにかける。日常は人々がお互いに支え合ってできていることもまた、このドラマは教えてくれている。すべてのきっかけは死だが、死を意識することで3人とまわりの人たちは今ここにある日常と真剣に向き合うことになる。

 ドラマの背後で流れ続けているのが、第5話のタイトルにもなっているラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。美しい旋律で有名な曲だが、ラフマニノフが交響曲第1番の酷評によって鬱とスランプに陥った数年後、友人らの助けを得て作曲されたものだと知られている。第5話で幼い頃のミジョがこの曲を聴いて「あたたかい」と感じたのは、そんな背景も関係あるのかもしれない(うがちすぎかもしれないが)。

 韓国版のポスターでは、何の心配もなさそうな笑顔を浮かべるメインの6人、ミジョとソヌ、チャニョンとジンソク、ジュヒとヒョンジュンが、長いベンチにお互いに手をかけながら座っている。女たちだけでなく、男たちにもそれぞれ難しい事情がある。人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きているのだ。彼らの背後には、紅葉しかかっている樹木が明るい陽の光に照らされている様子が写し出されている。青々と生い茂る青春時代はとうに過ぎ去ったが、紅葉していくこれからの時間だってけっして悪いものじゃない。むしろ美しく見えることもあるだろう。観終わったとき、そんなことを心から感じさせるドラマになる予感がする。(大山くまお)

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