ウーマン村本、巨匠レオス・カラックスと餃子屋で映画談義!
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、巨匠レオス・カラックスがアダム・ドライヴァーを主演に迎えて全編ミュージカルで作り上げた映画『アネット』。村本から「オレ、この監督と飯食ってん」という爆弾発言が!(取材・文:森田真帆)
今回の映画は公開中の『アネット』です。
ポップバンドのスパークスによるアルバム「アネット」を原案に描くダークファンタジー。人気スタンダップコメディアンと一流オペラ歌手のカップル、そして二人の子供であるアネットの物語をミュージカル仕立てで描く。メガホンを取るのは『ホーリー・モーターズ』などのレオス・カラックス。『スター・ウォーズ』シリーズなどのアダム・ドライヴァー、『エディット・ピアフ ~愛の讃歌~』などのマリオン・コティヤールらが出演する。
渡米する村本に中川がアドバイス!
中川パラダイス(以下、中川):すごかったなー。僕いっつもこのコーナーって毎回どういう作品かもわからないまま観てるからさ。最初の10分くらいは意味わからなくて、どういうことやねんって戸惑ってたんやけど、でもミュージカルなんやって気づいてからは新しくて面白いって思った。ミュージカルじゃなくて会話やったとしても面白い。今までなかったミュージカルの形。物語自体がめっちゃオモろかった。
村本大輔(以下、村本):パラダイスはミュージカル好きやったっけ?
中川:ミュージカルめっちゃ好きやし、『レ・ミゼラブル』とか『オペラ座の怪人』とか好きよ。あとは『ムーラン・ルージュ』にハマって、そこからミュージカルが好きになってん。
村本:この話自体がコメディアンとオペラ歌手の夫婦の話やん。オペラ歌手って富裕層を相手に楽しませる仕事で、お笑いは大衆に向けてやるものやろ。そうしたときにお笑い芸人は、オペラと真逆の対照的なものだから。オレは、あの芸人がどんどん追い詰められていったのは、オペラのせいやと思うねんな。なんか観客から、なぜあなたは? ってどんどん聞かれていく中で、お笑いっていうのがお客さんを笑わせなきゃいけないものでありながら、大衆を気持ちよくさせるおもちゃのような、ピエロのような存在だということに気付かされてしまったような。
中川:あー、あれそういうことやったんか。僕、あのシーンはアメリカ特有のコール&レスポンスやと思ってたわ。何年同じネタやったらあんなコール&レスポンスができるんやろって。
村本:いやいや、あんなコール&レスポンスあるわけないやろ!
中川:まぁでも、コメディアンとしてのヘンリーは、最初っから何がおもろいんやろ? って思ってたわ。もう、人気絶頂の時も全然オモろなかった。
村本:それは『浅草キッド』の北野武がオモろくないのと一緒やろ! 芸人独特の「間」みたいのを俳優さんがやるのは大変なんやって。
中川:でもさ、日本じゃラップっぽいネタとかって認められない感じするけど、あの自由なネタの感じが受け入れてもらえる心の広さが、アメリカなんやろなって。日本ってちょっと新しいことすると、最初は引いちゃうからね。村本もアメリカ留学したら、いろんなチャレンジをしてほしいなって思うよ。最悪もう歌でもいいんちゃうの? 村本が得意とする早口もカッコ良いかもしれないけれど、それに囚われずいろんな挑戦しても大丈夫なんちゃうかなーって思ったわ!
村本:いや、オレの芸風心配する前に、お前の心配しろって(笑)。ゲーム実況とかはじめようとせんと、ちゃんとお笑いやれや!
中川の芝居談義に、村本が物申す!
村本:濡れ場のシーンとか、出産のシーンとか、めっちゃリアルやったやん。おとぎ話と現実がずっとクロスしているから、夢の中の世界にいるみたいやった。同じミュージカルでも『ラ・ラ・ランド』とは全く違う。映画オタクが好きなんやろな。オタクにガチャーンとハマっている感じがするもん。
中川:僕、いま芝居やってるやろ。歌やったり、踊ったり、初めて演じることをちゃんとやってる。しかも新国立劇場ってめっちゃ大きいところでさ。役者としての視点から観たときに、歌いながら濡れ場やるってどうなってるんやろ? ってめっちゃ思ったわ。だって結構生々しくやってたやん。あれは、とんでもない役者やなって思った。ただでさえ、あのシーンを演じてくれって言われたら大変やと思うのに。なかなかハードなシーンやったからさ。あんなにどぎつくやらんでもえーやんって
村本:何を役者気取りな(笑)。お前はさ、オレの原発のネタとかまったく面白いと思ってないやん。このコンビもう20年やってるけど、まったく面白くないものを舞台の上で、「えーっ!」「うそー!」「すごーい!」とか言うてるんやから、あんたは誰よりプロの役者よ。興味ないのに、「原発こわいー!」とか言い続けられる方が、濡れ場をミュージカルでやるよりよっぽどすごいわ!
村本、レオス・カラックス監督と餃子を食べる!
村本:さっきめっちゃ楽しかったて言ってたけど、映画なんてわからん中川がよう楽しめたな! 嘘なんちゃうか!
中川:たしかに最初時間みたとき、めっちゃ長いし、これきっついわ、意味わからんってなったんやけど、後半に行けば行くほど全然観れたわ。そもそもアネットって何やねんって思ったんやけど、赤ちゃんがアネットなんやーってわかってからは、映画として普通に楽しめたで。村本が言うようにミュージカルシーンは、ほんまに斬新やったわ。出産のシーンもさ、生まれて喜びの瞬間ならわかるのに、いやそこミュージカルにするんかいってところが歌になってて笑ってもうたわ。
村本:なんかビジュアルとか、色とかも吸い込まれていくようやん。怖くなるような色使いで、ほんまに独特やろ。そんで人形やろ。『るろうに剣心』が大好き! みたいな人にはわからない、めっちゃ斬新な映画やわ。そんな映画作ったおっさんと餃子食ったなんてすごいわって思ったわ。
中川:え? どういうこと? この映画の監督さんと餃子食ったん?
村本:オレと湯山れいこさんが『アネット』について対談したときに、オレの楽屋を一緒に使うおっさんがいて、その人がレオス・カラックス監督でさ。この映画の主人公のコメディアンについて、オレが一番尊敬しているレイニー・ブルースをモデルにしているのかって聞きたかったてん。そしたら、通訳の人がフランス語で話してて、ご飯に行きましょうよっていきなり誘われてさ。オレとレオス・カラックスと3人でパルコの中の謎の餃子屋に入って、そこでレイニーをモデルにしたんですかって聞いたら、レオスが学生時代にちょっと観てたお笑いの「マン・オン・ザ・ムーン」のカウフマンもモデルにしているんだよって話をしたのよ。
中川:めっちゃすごいやん! 写真撮らんかったん?
村本:実は写真撮らずに帰ったことを後悔して、一旦戻って写真撮ってもらうかめっちゃ迷っててん。でも結局やめて帰ったんやけど、後から監督はめっちゃ写真嫌いって聞いて、ほっとしたわー。
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『アネット』4月1日公開
映画『アネット』公式サイト
(C) 2020 CG Cinema International / Theo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinema / UGC Images / DETAiLFILM / Eurospace / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Televisions belge) / Piano
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。