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「ベター・コール・ソウル」ファイナルを観る前に知っておきたい8つのポイント

 ドラマ「ベター・コール・ソウル」ファイナル・シーズン(シーズン6)配信間近! 既に準備万端、復習が終わっている人も時間がなくて間に合わないという人も、これを読めば各シーズンのポイントがわかるはず。リアタイ視聴に備えよう!

※ご注意 この記事は「ベター・コール・ソウル」についてのネタバレが含まれる内容となります。視聴後にお読みいただくことをおすすめします。

モンスター級のヒット作「ブレイキング・バッド」を振り返る

 今更説明するまでもないが、「ベター・コール・ソウル」は2008年から2013年まで、米ケーブル局AMCで放送された伝説のドラマ「ブレイキング・バッド」の前日譚(たん)だ。「ブレイキング・バッド」の舞台はニューメキシコ州アルバカーキ。妊娠中の妻と脳性まひの息子、さらには多額のローンを抱える高校の化学教師ウォルター・ホワイト(ブライアン・クランストン)は、肺がんで余命を宣告される。切羽詰まったウォルターは、教え子であるドラッグディーラー、ジェシー(アーロン・ポール)をパートナーとし、化学の知識を駆使してドラッグの製造と販売に手を染めていく。

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ブレイキング・バッド
「ベター・コール・ソウル」は「ブレイキング・バッド」の弁護士ソウル・グッドマンを主人公としたスピンオフドラマ。「ブレイキング・バッド」より - AMC / Photofest / ゲッティ イメージズ

 “どんどんワルになっていく” ウォルターを神がかり的に演じて世界中を魅了したブライアン・クランストンの偉業をはじめ、エミー賞ほか数々の賞を獲得した本作。業界内外に与えた影響を考えても、これを観ずして海外ドラマは語れない現代のマスターピースだ。

 ファンが燃え尽きた最終回から約14か月後。ボブ・オデンカークの役作りがこれまた出色の弁護士ソウル・グッドマンを主人公とし、「ブレイキング・バッド」に登場する6年前の2002年から物語が始まるスピンオフドラマ「ベター・コール・ソウル」の放送が始まった。

インチキ臭い冗舌な弁護士が主役「ベター・コール・ソウル」

 ソウル・グッドマンの本名はジミー・マッギル。え、ソウル・グッドマンじゃないの? と驚いたことも既に大昔の記憶のかなただが、お人よしの弁護人ジミーが、いかにしてあの「ソウル・グッドマン」になったのかを描いていく本シリーズもまた、熱狂的なファンの支持と批評家の高い評価を獲得している。

弁護士ジミー
麻薬カルテルの悪事に加担し深みにハマっていく弁護士ジミー。Lewis Jacobs / Netflix

 愛する女性弁護士キム(レイ・シーホーン)との平凡かもしれないが幸せな未来があり得たかもしれないのに、麻薬カルテルの悪事に加担し深みにハマっていくジミー。裏稼業に手を染める元警官で駐車場係のマイク(ジョナサン・バンクス)のほか、ギャングのナチョ(マイケル・マンド)から麻薬取締官のハンク(ディーン・ノリス)なども登場し、ドラマはいよいよ「ブレイキング・バッド」に近づいている。中でも気になるのは「ブレイキング・バッド」には不在のキムとの物語だろう。果たして、ジミーとキムの関係性はどうなるのか? そして4月9日に明らかになった、ウォルターと『エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIE』で「ブレイキング・バッド」の後日譚が描かれたジェシーの再登場は、どのような形で描かれるのか。

 膨らむ期待と終わってしまうことへの寂しさを今から感じつつ、「ベター・コール・ソウル」の各シーズンにおけるジミーの精神的変化=キャラクターアークを8つのポイントで振り返りながら、心して最終シーズンに臨みたい。

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ここに注目!「ベター・コール・ソウル」の8つのポイント

・ポイント1(シーズン1):兄チャックとの確執

チャックとジミー
兄チャックはジミーのことを見下している!? Ursula Coyote / Netflix

 シーズン1のジミーは、かつての詐欺師の名残を見せつつも、純粋に弁護士としての成功を夢見ている。ネイルサロンの奥に事務所を構えて寝泊りし、苦労した案件の報酬はたった700ドル。それでも健気にチャックの世話をするジミーからは、兄に対する深い思いやりと弁護士業への情熱が伝わる。老人ホームの不正を見つけたジミーは、チャックと2人で集団訴訟を起こすことに。心を躍らせるジミーだが、後から実はチャックが自分を「本当の弁護士」と認めていないという残酷な事実を突きつけられる。この出来事はジミーの真面目で優しい心に影を落とし、マッギル兄弟の関係悪化の入口となる。

・ポイント2(シーズン1):ジミーの運命を変えるナチョとの出会い

ナチョとジミー
ナチョに犯罪の共犯に誘われるジミー。Lewis Jacobs / Netflix

 会計係ケトルマン(ジェレミー・シェイモス)を顧客にしたいジミーは、当たり屋で稼ぐ双子を誘って彼の妻を狙い、自分が事故を仲裁することで恩を売ろうとする。ところが彼らが間違えて狙ったのは、「ブレイキング・バッド」のイカれたギャング、トゥコ(レイモンド・クルツ)の祖母であった。3人はトゥコに殺されかけるが、部下ナチョの説得とジミーの口八丁で難を逃れる。ナチョにその雄弁さを買われたジミーは犯罪の共犯に誘われるが、「わたしは弁護士で、犯罪者じゃない」と断る姿勢から、まだ一線を越えず「正しいことをする」という意思がうかがえる。しかしナチョとの出会いは、後にさらなる大物と関わるきっかけとなり、ジミーの運命を大きく変えてしまうのはなんとも皮肉だ。

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・ポイント3(シーズン2):人を欺く楽しみ

ジミーとキム
なぜか常にジミーの味方をしてくれるキム。Ursula Coyote / Netflix

 シーズン1フィナーレでシカゴに帰省し、久々に旧友と詐欺で小遣い稼ぎをしていたジミー。シーズン2では、キムと一緒にバーで見つけた傲慢な株式ブローカーをだまし、高額な支払いをさせる。キムと一緒に人を欺く楽しみを知ったことは、ジミーの中にある「ソウル・グッドマン」の一面をさらに引き出すきっかけになっただろう。金持ちをカモにするという小さな悪だくみは文書偽造という重罪にまで発展し、さらにこの先欲しいものを手に入れるための常とう手段となる。

・ポイント4(シーズン2):カラフルなスーツとシャツに、ド派手なネクタイ!

ジミー
大手法律事務所の好待遇にも息苦しさを感じ、自ら解雇されようとするジミー。Ursula Coyote / Netflix

 ジミーは大手法律事務所デイヴィス&メインと好待遇の雇用契約を結ぶが、自分の型破りなやり方を認められないことに息苦しさを感じる。タンブラーが大きく、はまらない社用車のカップホルダーは、彼がこの職場にフィットしないことのシンボルだ。しかし、1年未満で事務所を辞めると契約金を返さなくてはならないため、ジミーは解雇されるためあの手この手を尽くす。その一環として、カラフルなスーツとシャツ、ド派手なネクタイを身にまとった彼の姿は、まさに「ブレイキング・バッド」時代のソウル・グッドマンそのもの。ついに解雇されたジミーの表情は生き生きとし、自分にふさわしい道をこれから歩む期待に満ちあふれているようだ。

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・ポイント5(シーズン3):兄チャックの尊厳を奪い去る

チャックとレベッカ
兄チャックの別れた妻レベッカとは良好の関係だったが、法廷に呼び出すことで……。Ursula Coyote / Netflix

 文書偽造をめぐりマッギル兄弟が法廷で争うエピソードは、こんなフラッシュバックから始まる。別れた妻レベッカ(アン・キューザック)とジミーを自宅に招き、手料理をふるまうチャック。病を隠すため嘘をつく姿から、彼女の目をいたく気にしていることがわかる。さらに、そんな兄の思いをくみ、ディナーを円滑に進めようとするジミーの姿が印象的だ。そして時は現在に戻り、チャックの最大の弱点であるレベッカを法廷に呼んだジミー。もはや冒頭で見せた兄思いな弟の面影はない。レベッカを含む大勢の前でチャックの病が精神的なものだと証明し、容赦なく彼の尊厳を奪い去るのだ。

・ポイント6(シーズン3):顧客からの信頼を踏みにじる

ジミー
年老いた顧客たちのため誠意を尽くしてきたジミーだったが……。Ursula Coyote / Netflix

 年老いた顧客たちのため全力を尽くしてきたジミー。彼らとの関わりを通して善良な一面を見せてくれたが、シーズン3で全てが台なしとなる。業務停止でお金に困ったジミーは、老人ホーム集団訴訟の和解金の取り分を手に入れようと、原告代表のアイリーン(ジーン・エフロン)を陥れるのだ。顧客からの信頼を踏みにじり、自分の中のモラルを破ったこの行為は、彼がソウル・グッドマンのアイデンティティーにより近づいていることを示唆している。

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・ポイント7(シーズン4):兄チャックの死が大きな転換点に

弁護士事務所
キムとジミーは同じ場所で別々の弁護士事務所を立ち上げる。Michele K.Short

 チャックの訃報を聞き、ショックを受けながらも奇妙なほど平静を装うジミー。死の責任を弁護士事務所ハムリン、ハムリン&マッギルのパートナー弁護士ハワード(パトリック・ファビアン)に押し付け、チャックの手紙には冷たく反応し、聴聞会ではチャックについて言及しない。こうして感情を押し殺すジミーだが、実際には兄の死と、その一因が自分だという事実が深い心の傷になっているはず。チャックの死はジミーがソウル・グッドマンへと変容する道の大きな転換点となり、兄を思い出す「マッギル」の家名から距離を置く。そして「ソウル・グッドマン」の名で弁護士として復帰し、意気揚々と再スタートを切るのだ。

・ポイント8(シーズン5):危険な麻薬カルテルの世界へ……

ベター・コール・ソウル
さらに麻薬カルテルからの依頼を受けることになるジミーの展開はどうなるのか? Ursula Coyote / Netflix

 トゥコとナチョに「口がうまい男」と評価されたジミーは、彼らと同じ麻薬カルテル・サラマンカ一派のラロ(トニー・ダルトン)から刑務所にいるドミンゴ(マックス・アルシニエガ)の釈放を依頼される。ラロとの関係はこれだけで終わらず、その後ジミーは逮捕された彼の代理人となり、さらには保釈金700万ドルを取りに行く任務を頼まれてしまう。最初は断って部屋を出ようとしたジミーだが、ふとドアの前で立ち止まり、報酬10万ドルではどうかと逆提案をする。この瞬間、シーズン1でナチョの誘いを断った時とは違い、ジミーの中でずる賢いソウル・グッドマンの面が占領し始めていることがわかる。そして自らの選択で、完全に逃げ道を失くしてしまうのだ。また、ラロと初対面の日にジミーが落としたチョコミントアイスは、彼のキャラクターアーク(精神的な変化)の象徴といえるだろう。大量のアリが群がってアイスが消えてしまう描写は、悪人たちに人生を侵食され、やがてジミー・マッギルという存在が消え去ることを暗示しているようだ。(文・構成:今祥枝、編集協力:岡島京子)

「ベター・コール・ソウル」はNetflixで配信中

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