不気味さMAX!予想の斜め上いくラロ・サラマンカの行動
今週のベター・コール・ソウル
不在の間に不気味な存在感を増していたサラマンカ・ファミリーのラロ・サラマンカ(トニー・ダルトン)が、ついに姿を現した第5話「アザだらけ(Black and Blue)」。しかも大方の予想の斜め上をいく形で、ラロはドイツでガス(ジャンカルロ・エスポジート)がラロ暗殺事件の黒幕である証拠を探していた。(文・今祥枝)
※ご注意 この記事は「ベター・コール・ソウル」シーズン6についてのネタバレが含まれる内容となります。視聴後にお読みいただくことをおすすめします。
今週のベター・コール・ソウル~シーズン6第5話
ハワード(パトリック・ファビアン)VSキム(レイ・シーホーン)&ジミー(ボブ・オデンカーク)、ガスVSラロそれぞれの最終決戦へのピースが徐々にそろい始めて、表面上は第4話の静けさがまだ保たれているが、一触即発の緊迫感とラロのより具体性のある恐怖に満ちた回だった。
今回の終盤、ラロは「アメリカ・ニューメキシコのへメスから出張に来たベン」と偽り、バーである女性に近づく。ラロとバーテンダーの会話からヘメスという町の名前に反応した女性の名前は、マルガレーテ。2人で飲みながら会話を交わす中で、彼女はシーズン4の第10話でガスの指示のもとマイク(ジョナサン・バンクス)に消されたヴェルナー(ライナー・ボック)の妻だとわかる。ヴェルナーはガスの地下の麻薬工場建設のためにドイツから呼び寄せられた有能な技師長で、ホームシックになり愛妻をアメリカに呼び寄せ、建設中の工場から脱走を図るが失敗。その建設管理をするマイクにへメスで秘密裏に殺され、表向きは落盤事故で亡くなったことにされた。死の直前に通話した相手がマルガレーテだった。
ラロはガスが密かに取り組んでいるもの(麻薬工場建設)に関する情報を聞き出そうとするが、夫ヴェルナーの葬式には共に働いた作業員からは花と記念品が贈られただけで、誰も顔を見せないなど収穫は多くはなかった。翌日、マルガレーテの留守中に家に侵入して物色するラロ。証拠になりそうなものは弁護士(おそらくガスの部下たち)があらかた持ち去っていたようだが、マルガレーテが話していた記念品を手に取り、裏に貼ってあるラベルを見る。このラベルの情報から、ラロは麻薬工場を突き止めていくのだと考えられる!?
帰宅するとほえている犬の様子にマルガレーテは警戒し、物陰で銃を構えるラロ。息詰まるシークエンスにどうなるのかと最後の瞬間までハラハラさせられるが、ラロが逃げ切るところで幕切れとなった。ハンガリー出身の俳優アンドレア・スーチが演じるマルガレーテがなんとも魅力的で、ヴェルナーというキャラクターの味わい深さを改めて思う。ちなみに今回のアバンタイトルで描かれたのは、建設に使う定規をガラスに閉じ込めたこの記念品を作る工程だった。ドイツ語で「愛を込めて子供たちより」というメッセージが書かれており、裏にラベルを貼るところも映し出されていた。この“子供たち”とは、ヴェルナーがかわいがっていた作業員たちのことだった。
一方、ガスはこれほどまでにラロを恐れているのかと思うほど、かなり神経質になっており、落ち着かない。だが、そこはさすがのガスという感じで、ラロが遅かれ早かれ麻薬工場を突き止め訪れることを察したガスは、マイクと共に建設現場へ行った際にマイクに隠れた場所で、足首に巻き付けて携帯していた銃をショベルカーのキャタピラーの隙間に隠す。ほかにも電源ケーブルや銃の隠し場所までの歩数を確認したりしていた。ガスとラロの対決はこの麻薬工場になると思われる展開だが、ガスはどのようにして迎え撃つつもりなのか、あるいはガスから何かを仕掛けるのだろうか。
ガスと同じく眠れない夜を過ごしているのがキムだ。ジミーとキムのハワードを麻薬中毒者だと弁護士クリフ(エド・ベグリー・Jr)に信じさせる計画は成功するが、クリフがハワードにそのことを問い詰めたことから、ハワードは最近の一連の奇妙な出来事がジミーとキムの策略だと理解する。ハワードにボクシングジムに呼び出されたジミーは、挑発に乗ってリングに上がり、ハワードと戦い倒される。帰宅して、ことの顛末をキムに話すジミーが「なんでハワードの挑発に乗ったんだろう」というと、「あなたは知ってるからよ」というキムの言葉は謎めいている。2人の様子からしてハワードにバレることは予想していたようで、これもまた計画の一部のように見える。2人の真のプランもまた視聴者をうならせるツイストとなるのだろうか。
ハワードは私立探偵を雇ったため、ジミーはマイクの部下たちに加えて探偵からも見張られることになる。ここにきてハワードとジミーとキムとガスとマイク、そしてラロを結ぶ線がゆっくりと浮き上がってくる見事な仕上がり。脚本はアリソン・タトロック、監督はメリッサ・バーンスタイン(共にプロデューサーでもある)と第4話に続き女性コンビが手がけている。