迫り来る老後への恐怖心が大爆発!『PLAN 75』ホラーよりコワい!
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ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、75歳以上の高齢者が自ら死を選ぶ権利を保障・支援する制度 “プラン 75”施行後の日本を、命の選択を迫られる高齢女性の人生を通して描いた、早川千絵監督の長編デュー作『PLAN 75』。「ホラー映画より怖い」と話す、パラダイスは自分の老化に対する恐怖を大爆発! 将来を憂う相方に村本は? (取材・文:森田真帆)
今回の映画は『PLAN 75』です。
オムニバス『十年 Ten Years Japan』の一編『PLAN 75』を、監督の早川千絵が新たに構成したヒューマンドラマ。75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を保障・支援する制度「プラン75」の施行された社会が、その制度に振り回される。職を失い、「プラン75」の申請を考え始める主人公を倍賞千恵子が演じ、『ビリーバーズ』などの磯村勇斗、『燃えよ剣』などのたかお鷹、『由宇子の天秤』などの河合優実らが出演する。
まるでホラー映画!あまりのリアルさに震え上がる
村本大輔(以下、村本):山田洋次が大好きなオレからすると、やっぱり『男はつらいよ』シリーズのさくらさんが主演やから、うれしかったわ! さくらが、おばあちゃんになってたなぁ。でもほんまに素晴らしかった。パラダイスはどうやった?
中川パラダイス(以下、中川):ほんまにこの映画は、怖かってん。下手なホラー映画より怖かったわ。最初のシーンがまずめっちゃ衝撃的やったし、なによりも、ストーリーにもうリアリティーがありすぎて。でも、最近めっちゃ楽しいねん。映画楽しいなぁって思えてさぁ。今回の映画もめっちゃ面白かったし。この連載進めている間に、映画の楽しみ方を知った感じするわ。
村本:それにしても切ない映画やったな。この映画に出てくる人って、みんな真面目に生きてきたおばあちゃんたちやんか。長生きしようと健康的な野菜とかを食べて、ちゃんと生きてきた人なのにさ。歳をとって、どんどん追い詰められていって、こういう風に一生懸命生きてきた人が冷たい処遇を受けるって、ほんまに起きているやん。もちろんPLAN75はないけれど、でもどこか邪魔者みたいな雰囲気は確実にあるんよな。
中川:日本は財政がかさんでるわけやん。それが若者に降りかかってきたら、老人には生きている価値がないってなるわけやん。そこから政府がPLAN75を作るっていう、友だちもいなくなって1人になって、このまま1人で死んでいってもいいかなっていうところに、PLAN75ができあがるっていうところがリアルやったわ。
孤独が生み出す現代社会の問題に、村本が切り込む!
村本:なんかこの「プラン」っていうのがリアルやったよな。最後に死ぬときに、そもそもプランって出すなやって思うやん。エンジョイプランとか、なんか遊び系のプランならわかるけど、お墓とか葬式とかで使われるプランっていう言葉が、めっちゃ冷たく感じたわ。
中川:あ、ほんま? 僕はけっこう普通にプランっていう名前に対して自然に受け止めていたけれど、たしかに今村本の話しを聞くとわからんでもないなあ。なんか政府というか、日本が作り出しそうな政策やなって。
村本:気持ちが入っていない人がたくさん出てきて怖かったんよな。たとえば、病院とかに行ったときに、患者に向かってひどい言い方するお医者さんがいるやん。なんかパソコン打ちながら、こっちなんて見向きもせずに話しだけ聞く人。そこに感情とかなくてさ。人間やったら、小さな優しさがないとダメやと思うねん。車を売るような感覚で、若い営業マンが高齢の方たちにお墓を売っているのを見ると、何かがなくなっていってる感じがすんねんなぁ。オレのおかんだってPLAN75の年齢になってくるし、いろいろ考えたわ。
中川:あ、親な。たしかに、今まで親のこと全く考えていなかったわ。今聞いてちょっと胸が痛くなった。自分のことばっかり考えてたわ。だって、75歳まで、あと30年ちょっとだと考えたらめっちゃ怖いやん! だから親のことより、自分の老後しか見ていなかった。区役所で、「今ならPLAN75に入れます!」みたいな宣伝をしているシーンも、めっちゃリアルやったけど、この映画の中でもあるように、お金持っていて裕福な老後を送ってる人はこのPLAN75を使わんで済むと思うねん。そう考えたら、お金がすべてやなぁって考えてしまうというか。なんか虚しい気持ちにさせられたな。
村本:知り合いで、自分の親が死んでも泣かないでしょうねって言ってる女性がいてさ。家族との絆がめっちゃ薄かったらしいんよ。最近、そういう子たちに会う機会がめっちゃ多いねん。例えば、目の前で階段を上がれないおじいちゃん、おばあちゃんがいたら助けてあげるのが当たり前なんやけど、それが普通にできなくなってる。それって、親やおじいちゃん、おばあちゃんへの思いが弱いせいなんやろなって思うねん。
理想とするPLAN75を考える
中川:たださぁ、もしかしたら死ぬ日を決められたほうが幸せなんちゃうかなって思っちゃう感じもしたんよ。僕は30歳超えてから、網膜剥離になったり、腰悪くなったり、加齢をめっちゃ感じることが多くてさ。なんかもう体にガタがき始めている感じすんねん。4時間くらいでおしっこで起きたら、もう眠れへんし。最近なんて駅のトイレで1分かけておしっこしてんねん。昔は、おっさんを見ておしっこ長いなぁってよく思っていたんやけど、まさにそれやわ。加齢やわ。何回かパンツ履くたびに、あかんわまたジュッてなってもうたってなるしな。
村本:そうかー? オレはどちらかというと、ほかの同年代と比べたら、自分が若いなぁって思っているけどな。こないだ同窓会に行ったときに、周りの同級生を見て、みんなめっちゃおっさんやんって思ってん。
中川:何回も言うけど、ほんまにこの映画を観たときに恐怖を感じたんや。僕はこのままいけば、きっとそのうち嫁から離婚届をつきつけられて、子供にも見捨てられて、仕事もないって追い込まれていったら、映画の中の人と同じになりそうな感じがしたんや。もしも僕が75歳になったらPLAN75に応募するか、そのまま人生を謳歌するかってなったら、PLAN75に応募しちゃうと思うねん。だからかなぁ、映画を観ていて涙が出た。自分に重ねすぎて泣けてきた。
村本:どないしたんや! そんなにネガティブなこと言うて。お前、家のパソコンめっちゃ近未来にしてe-sportsしとるやんけ。オレからすれば誰よりも未来見てるわ! 大丈夫や、お前は75過ぎてもゲームしてると思う! でもオレやったら、絶対にPLAN 75には申し込まず、命にしがみつき続けるやろな。ただな、パラダイスが言うのは、結局お前も孤独になるのが怖いわけやん。孤独になって、もうオレなんて生きていなくてもいいかもしれんって思うのが怖いんやと思う。やっぱり孤独って「死」を近くする気はするな。お一人様とかもめっちゃ多いやん。もちろんお一人様を楽しんでいる人はいいと思うけど、でも好きで1人でいるわけじゃない人もいるやろ。特にお年寄りはさ。家族でご飯を食べたり、誰かと一緒に何かを楽しんだりすることが増えればいいなと思うんよ。あとは、75歳すぎたら税金ガンガン使って遊びまくって好きなことができる、PLAN75じゃなくてパラダイス75っていうのを作りたいね。
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『PLAN 75』6月17日公開
映画『PLAN 75』公式サイト
(C) 2022『PLAN 75』製作委員会 / Urban Factory / Fusee
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。