『トップガン マーヴェリック』は何がそんなに面白い?
『トップガン マーヴェリック』の勢いが止まらない。アメリカでは公開から7週目にもかかわらず、ボックスオフィス3位。日本でも一度首位から落ちるも再び返り咲いたり、大ヒットを続けている。次々と大作が公開される夏にはめったに起こらないことだ。それはつまり、クチコミがなされ、リピーターも出ているということ。その魅力は何なのだろうか?(文:猿渡由紀)
絶大な満足感を与える、独立したストーリー
まず、大ヒットの勝因として一番に挙げられるのは、男女や年齢を問わず、すべての人にアピールしたことだろう。そうでなければ、こんなに長い間ランキングの上位を保てない。スーパーヒーロー映画など若者やオタクにアピールする映画は、公開初週末にそれらのファンがどっと押し寄せ、すごい数字をはじき出すが、その後はがくっと落ちる。
近年大ヒットするそれらの映画のパターンと違い、『トップガン マーヴェリック』は、これ1本で勝負できた。マーベルも『スター・ウォーズ』も、巨大なファン層を持つ一方で、全然観たことがない、あるいはその前を観ていないとわからないので今さら入っていけないという人もかなりいる。『~マーヴェリック』はオリジナルを観ていたほうが良いのはたしかだが、観ていなくても入っていける。観ておこうと思ったとしても、1本だけなので簡単だ。
巨匠マーティン・スコセッシはマーベル作品を「映画ではない」と言ったが、本来、映画というのはそうあるべきなのだ。かつて映画とは、ふらりと劇場に入った人にも理解できる、独立したストーリーだったのである。『~マーヴェリック』は、そうであるだけでなく、「良い映画を観た!」という絶大な満足感を与えてくれる。それも本作の大きな勝因だ。
トム・クルーズこだわり!本物の飛行シーン
この映画には、アクション、スリル、恋愛、友情、涙、笑いという、人が映画に求めるものすべてがとてもバランス良く盛り込まれている。トム・クルーズの絶対的主張で、グリーンスクリーンを使わずリアルに撮影した飛行シーンは、その価値が断然あって迫力満点。オリジナルの空中アクションも良かったが、ここは明らかにアップグレードされている。
クルーズやほかのキャストが操縦中に歯を食いしばるシーンでは、こちらも思わず同じように顔をしかめてしまう。筆者は2度観たのだが、とりわけクライマックスでクルーズとマイルズ・テラー(ルースター役)が敵の飛行機に攻撃されるシーンでは、その後どうなるのかわかっているのに、はらはらドキドキしてしまった。
その後にあるのは、すばらしい感動。映画はとてもポジティブに終わり、観客をすっきりさせ、明るい気持ちにさせてくれる。実社会で嫌なこと、不安なことがたくさんある今、これ以上のエスケープがあるだろうか。だから、人は「これを観に来て良かった」と思うのだ。
若手トップガンを演じるニューフェイスたち
人間関係も魅力。『~マーヴェリック』ではマーヴェリック(クルーズ)とルースター(テラー)、マーヴェリックとペニー(ジェニファー・コネリー)、マーヴェリックとアイスマン(ヴァル・キルマー)、ルースターとハングマン(グレン・パウエル)など、いくつかの関係が並行して描かれていく。
それらの関係には共感できるし、オリジナルを観ていれば、そこに重なるものを見て、なおさら感慨深いだろう。キャラクターが薄っぺらいアクション映画というのはよくあるが、本作はアクション映画のファンでない人も十分に引き込むのである。
そして、それらのキャラクターを演じる役者が実に魅力的なのだ。中でもダントツなのは言うまでもなくクルーズ。今月60歳になったとはいえ、彼のスマイルはいまだにすべての人を魅了する。短いシーンで出演するヴァル・キルマーもさすがの存在感だし、若手トップガンを演じるニューフェイスもみんな個性的で素敵だ。
とくにハングマンを演じるパウエルは、これからきっとどんどん活躍していくことだろう。そんな彼らのブレイクを見られたのもまた、楽しいこと。まだ観ていない人は、ビッグスクリーンで観られる機会を逃さないよう、今すぐ劇場に駆けつけよう。
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