草なぎ剛出演『サバカン SABAKAN』など8月公開映画の評価は?
今月の5つ星
三木聡監督の新作から草なぎ剛出演作、『ソニック・ザ・ムービー』の続編、海外で高評価のインディー映画、ファミリー向けのDCアニメーションまで、見逃し厳禁の作品をピックアップ。これが8月の5つ星映画だ!
どこからどこまでが現実?考察にハマること必至の三木聡ワールド
『コンビニエンス・ストーリー』8月5日公開
映画評論家マーク・シリングが何でもそろう日本のコンビニに着目し企画・執筆したプロット(主な筋書き)を、ドラマ「時効警察」などの三木聡監督が映画化。ネット上で考察が展開されたドラマ「熱海の捜査官」とは複数の共通点があり、三木監督ファンにはたまらない作風だ。
スランプに陥った映画脚本家(成田凌)が山奥のコンビニで妖しい魅力を放つ人妻(前田敦子)と出会い、創作意欲を掻き立てられていく……というのが主な筋書きだが、主人公の職業が脚本家であることからも、どこからどこまでが現実なのか解釈はかなり分かれるはずだ。多重構造の物語や主人公を惑わすファムファタール、クレイジーな裏社会の男などからは、デヴィッド・リンチやコーエン兄弟、往年の名作『サンセット大通り』(1950)などフィルムノワールの影響もみてとれる。「今わたしたちが見ているのは8分前の太陽なんだって」といった意味深なセリフも、一度気になりだしたら止まらない。(編集部・石井百合子)
言葉にならない感動に包まれる
『サバカン SABAKAN』8月19日公開
実生活の延長線上にあるような親近感が心地よい、オリジナル脚本の青春ドラマ。映画初監督となる金沢知樹(ドラマ「半沢直樹」(2020)の脚本など)が、自身の故郷である長崎県を舞台に脚本も手掛け(萩森淳と共同脚本)、ひと夏の冒険から育まれる二人の少年の友情を描く。
巧みなのは、思わず見入ってしまうプロットと演出力。要所でのさりげない伏線が一気に回収されたことに気付いた時、言葉にならない感動が胸に押し寄せる。肝は、俳優たちのナチュラルな振る舞いから生じる圧倒的なリアリティー。大人になった主人公を演じる草なぎ剛(「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記)と、子供時代を演じる子役・番家一路の演技は不思議とシンクロし、肝っ玉母ちゃんを魅力たっぷりに演じた尾野真千子には脱帽する。金沢監督が「子供たちが観る初めての実写映画になったら」という思いで作ったと言うとおり、親子で人の温かさと愛を共有できる快作だ。(編集部・小松芙未)
ジム・キャリーが強烈で最高!
『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』8月19日公開
日本生まれの大人気ゲームキャラクター、ソニックの活躍を描く映画第2弾は、悪の天才科学者ドクター・ロボトニックが、危険な戦士ナックルズと共に地球に戻り、再びソニックの前に立ちはだかる。丸刈り頭に巨大なヒゲが特徴的なロボトニック役のジム・キャリーが、これ以上ないほどソニックの世界観にマッチ。予想がつかない動きと独特なセリフ回しが前作よりもパワーアップして、どこか憎めない狂気のヴィランを生き生きと演じている。さらに、ソニックの良き理解者マディの姉レイチェル役のナターシャ・ロスウェルが強烈な存在感を放つ。妹夫婦に目を光らせつつも振り回される役で、コメディアンとしての真骨頂を発揮している。彼女の独壇場となるシーンは必見だ。
また、ソニックを力で圧倒するナックルズ、ソニックの仲間となる健気なテイルスと新たなキャラクターが登場。彼らによって、ソニックが守るべきものへの気持ちを強くするシーンは胸が熱くなる。(編集部・梅山富美子)
人生の愛おしさを軽やかに伝える快作
『セイント・フランシス』8月19日公開
うだつのあがらない日々を送る30代女性の、ひと夏の出来事を描いた等身大の人間ドラマ。主演のケリー・オサリヴァンが自伝的要素を織り込んだオリジナル脚本で、ナニー(子守り)の短期仕事で出会った6才の少女・フランシスとの交流が軸になっている。ぱっとしない毎日、女性の身体にのしかかる負担、将来への不安、社会的な差別……劇中で扱われる事柄は誰にとっても身近で、自分に近い誰かの人生をのぞき見ているよう。扱うテーマは考えさせられるものばかりだが、要所にちりばめられたユーモアとのバランスが絶妙で、軽やかに瑞々しく人生の愛おしさを伝えてくれる。
キャストたちのナチュラルな演技も魅力たっぷりで、セリフはもちろん、表情だけで心に突き刺さってくるシーンは見応え十分。話が進むほどに主人公や登場人物たちの姿は観客に共感を呼び、一緒に涙すること必至だろう。生きていることは素晴らしいと素直に感じる快作。(編集部・海江田宗)
DC関連の小ネタも楽しい!愛くるしいペットの成長記
『DC がんばれ!スーパーペット』8月26日公開
DCヒーロー・スーパーマンの相棒犬クリプトが、ある日突然スーパーパワーを手に入れたペットたちと共に、世界の危機に立ち向かうアニメーション。DC映画『ブラックアダム』主演のドウェイン・ジョンソン、マーベル映画出演も話題のジョン・クラシンスキーらアメコミ映画にゆかりのある俳優を声優に起用するなど、キャスティングからファンの心を掴む。
飼い主のスーパーマンや仲間のジャスティス・リーグがピンチに陥った時、頼れるのはペットたち。彼らが思いがけずパワーを手に入れ、その力に悩むさまはヒーローそのもので、その愛らしさに「頑張れ!」とつい応援したくなる。ヒーローたちの活躍を通して飼い主と愛犬の友情をストレートに伝える、ハートフルな物語に心打たれるはずだ。ファミリー向けの作品だが、DCにまつわる小ネタやジョークなどアメコミファンを唸らせる演出がニクい。本作だから許される、まさかのイースターエッグも見逃せない。(編集部・倉本拓弥)