アベンジャーズの次なる敵、征服者カーンとは何者?
今年のサンディエゴ・コミコンで発表された映画『アベンジャーズ』シリーズ第5作『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ(原題) / Avengers: The Kang Dynasty』と、第6作『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題) / Avengers: Secret Wars』。サノスに続く、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の強大な敵に違いないのは、両作のサブタイトルと同名コミックにも登場する征服者カーンだ。映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)の悪役でもあるカーンはどんな人物なのか? 原作コミックの歴史を振り返りながら紹介する。(文・平沢薫)(最終更新日:2023年11月2日)
※以下、過去のMCU作品のネタバレを一部含みます
■征服者カーンとは?
コミックでの初登場は、アメコミ界の大御所スタン・リー&ジャック・カービーによる1964年刊行の「Avengers #8」。本名はナサニエル・リチャーズで、30世紀のアース6311で生まれた未来人だ。超常的なパワーは持っていないが、未来人ならではの最先端の知識と優れた頭脳を持ち、未来の科学技術を使う。タイムトラベル技術を使って、さまざまな時代や場所に移動し、その世界で別の名前を名乗っていることもある。
彼の祖先については2つの説があり、どちらもファンタスティック・フォーに関連する。ひとつは、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズの父親ナサニエル・リチャーズが、タイムトラベルで行った別アースの子孫説。もうひとつは、ファンタスティック・フォーの敵ドクター・ドゥームの子孫説である。ちなみに映画『ファンタスティック・フォー』は2025年5月2日全米公開が決定済みで、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは「この映画はオリジン・ストーリーにはならない」と The Hollywood Reporter のインタビューで発言している。
さらに、以前から映像化の噂があるコミック「ヤング・アベンジャーズ」にもカーンに関するエピソードが存在する。10代のナサニエル(後のカーン)がイジメにあい、未来の自分である征服者カーンに助けられるが、彼は自分がカーンになることを拒否。タイムマシンで21世紀に行き、アイアンラッドというヒーローになり、ヤング・アベンジャーズの一員となっている。
また、ディズニープラスでドラマ化されたムーンナイトとも関連がある。原作コミックでは、カーンが古代エジプトにタイムスリップし、ファラオのラマ・トゥットとなり、ムーンナイトの古代神コンスと遭遇する。コンスがタイムトラベルでやってきたウエストコースト・アベンジャーズと協力し、ラマ・トゥットを倒そうとするエピソードもある。
■新作二本のサブタイトルと征服者カーンのつながり
MCUの征服者カーンは、2026年5月1日全米公開の第5弾『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ(原題)』、2027年5月7日全米公開の第6弾『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題)』のどちらにも関与する可能性がある。というのも、発表された映画のサブタイトルと同名コミックに、カーンが登場しているからだ。
第5弾のサブタイトル『ザ・カーン・ダイナスティ(原題)』は、直訳すると「カーン王朝」。同名のストーリーは、2001年6月から2002年8月に刊行された「Avengers」で描かれている。30世紀の征服者カーンが、自分の息子マーカス(別名:スカーレット・センチュリオン)と一緒に、21世紀の地球を征服するために襲来し、アベンジャーズの面々が応戦する。同コミックには、カーンの息子マーカスと、キャプテン・マーベル/キャロル・ダンバースとの間に重要なドラマがあるが、映画でも描かれるのか気になるところ。また、コミック版ではカーンとキャプテン・アメリカの戦いも用意されていた。映画も同じストーリーを辿るなら、ドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」でサム・ウィルソンが正式に就任した新キャプテン・アメリカが活躍してくれそうだ。
続く第6弾のサブタイトル「シークレット・ウォーズ」は、1984年から1985年に刊行されたマーベル初の大型クロスオーバーイベント。大きな役ではないが、こちらにも征服者カーンが登場している。ストーリーは、宇宙的存在ビヨンダーが、宇宙の彼方にバトルワールドを創り、そこに地球のヒーロー&ヴィランを集めて「敵を殺せば、望むものはなんでも叶える」と彼らを戦わせるというもの。ヒーロー側には、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ハルク、スパイダーマン、ソー、モニカ・ランボー(2代目キャプテン・マーベル)、ファンタスティック・フォー、シーハルク、X-MENが参加。映画版でのメンバー編成は少々変わりそうだが、今後MCU入りする新メンバーの活躍も見られるかもしれない。コミックでは、征服者カーンがヴィラン側で参加している。
■「ロキ」に登場した征服者カーンの変異体
征服者カーンの存在は、すでにMCUドラマ「ロキ」シーズン1で言及されている。正確には、カーン自身ではなく、別のタイムラインに存在する彼の変異体が登場した。役者はMCUで征服者カーンを演じるジョナサン・メジャースだったが、キャラクター名はカーンではなく在り続ける者。「ロキ」シーズン1第6話「とわに時を いつまでも」に登場した在り続ける者は、神聖時間軸を管理していると語っており、自分がかつて征服者とも呼ばれていたとも明かしている。
そして、征服者カーンが悪役として正式登場するのは、映画『アントマン』シリーズ第3弾『アントマン&ワスプ:クアントマニア』。原作コミックでの征服者カーンは、ヘルメットを装着し、顔の色は青いが、MCUではどのようなビジュアルなのか。スクリーンでカーンの姿を見られる日は、すぐそこまで迫っている。