『アベンジャーズ』日本公開10周年!意外と知らない10のトリビア
2012年8月14日、この日は日本のアメコミ好きにとって忘れられない1日となりました。『アベンジャーズ』が公開されたのです! 「日本よ、これが映画だ。」の名コピーも話題となり、アメコミ物になじみがなかった映画ファンも取り込むことに成功。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が注目されるきっかけとなった作品でした。当時を振り返りながら、10周年にちなんで、本作にまつわるトリビアを10個ご紹介します。(文:杉山すぴ豊)
その1:全米興行史上初!オープニング3日間で2億ドル突破
本作は、アメリカでは2012年の5月4日に公開されました。MCU作品はいまほとんどが日米同時公開ですが、当時はまずアメリカで、世界でメガヒットしている、とんでもないエンタテインメントが日本上陸! という建付けで日本公開を狙ったので、3か月のずれがあるのです。アメリカでは金土日のオープニング興行成績が2億740万ドル強で、3日間で2億ドル突破という史上初の快挙を成し遂げました。ちなみに、その10年前の2002年5月、『スパイダーマン』がオープニング3日間で1億ドル突破という快挙を成し遂げ大ニュースとなりましたが、『アベンジャーズ』はわずか10年で2億ドルの壁を突破したのです。
その2:ディズニー映画なのにパラマウントのロゴ
マーベルの親会社はディズニーなので、スパイダーマンを除くMCU映画はいまディズニー配給です。この『アベンジャーズ』もディズニー配給でした。しかし本作はマーベル・スタジオのオープニング後、パラマウント映画のロゴが出てきます。実はディズニー傘下になる前、『アイアンマン』からのMCU作品は一部の地域を除きパラマウント映画の配給だったのです。なので当初『アベンジャーズ』もパラマウント配給で準備が進んでいましたが、途中でマーベルがディズニー・グループに入ったため、本作からディズニー配給となったのです。本作では、それまでの契約等の理由からパラマウントのロゴが残っています。
その3:原題は“アベンジャーズ”ではない?
海外のサイトを見ると、本作を『Marvel's The Avengers』というタイトルで紹介している例があります。また、イギリスでの公開タイトルは『Marvel Avengers Assemble』です。これは1998年に公開されたショーン・コネリー、ユマ・サーマン共演のスパイ映画『アベンジャーズ』(日本では「おしゃれ(秘)探偵」のタイトルで放送された1960年代の英テレビドラマの映画化)との混同を避けるためでした。
その4:本当はアントマンとワスプが出るハズだった?
本作の監督ジョス・ウェドンは、アントマンとワスプの登場を考えていたそうです。というのも、コミックではアベンジャーズの創設メンバーはアイアンマン、ハルク、ソーとアントマン(初代)&ワスプ(初代)であり、アントマンの蟻攻撃でロキがひるんだり、そもそもアベンジャーズという名前はワスプの考案でした。しかし、あまりに登場人物が多くなるという理由でこのプランは没にしたそうです。ウェドン監督はワスプが出るならズーイー・デシャネルに演じさせたかったそうです。
その5:スターク・タワーでペッパー・ポッツが裸足なのは……?
スターク・タワーでトニーとペッパー・ポッツが話していて、ここにコールソンがトニーを招集しにやってきます。このシーン、よーくみるとペッパーは裸足、トニーは靴をはいています。これはロバート・ダウニー・Jr.(トニー役)とグウィネス・パルトロウ(ペッパー役)の身長バランスを考え、トニーの方がペッパーより背を高く見せるための工夫だそうです。
その6:二羽のカラス
『ソー:ラブ・アンド・サンダー』でもアスガルドではカラスを使ったことわざが出てくるように、北欧神話ではオーディンは二羽のカラスを従え、この鳥たちに世界の情勢を探らせていると言われています。本作でソーがキャプテン・アメリカたちからロキを奪還し、崖の上で話しているシーンで二羽のカラスが飛んでいます。つまりオーディンが彼らを見張るたによこしたわけです。
その7:映画『ブラック・ウィドウ』につながる伏線
ヘリキャリア内で身柄を拘束されたロキとブラック・ウィドウ/ナターシャの会話。ロキは彼女の血に塗られた過去を掘り起こし、その時にドレイコフの娘という言葉を口にします。観客は、ここでナターシャがかつてドレイコフの娘という人と何かがあったと想像するわけですが、なんと2021年公開の『ブラック・ウィドウ』にてドレイコフの娘にまつわる事件が描かれたのです。
その8:アーク・リアクターが光っていない?
『アベンジャーズ』は『アイアンマン3』以前の話なので、トニーはアーマーを装着していない時も胸のアーク・リアクターが光っています。従って本作で着ているブラックサバスのTシャツの下から、薄っすらとアーク・リアクターが光っています。しかし、コールソンの死を悲しむシーンでアーク・リアクターが光っていないんです。単なる撮影時のミスかもしれませんが、コールソンの死に沈みこんでいるトニーの心情を現わす演出だったのかもしれません。
その9:サノスは違う俳優だった
インフィニティ・サーガ(MCUフェーズ1~3)のボスキャラ・サノスは、エンド・クレジットでMCUに初登場します。しかしこの時のサノス役は、その後同キャラクターを演じるジョシュ・ブローリンではありません。スタントマンのダミオン・ポワチエです。なおちょっと自慢ですが、筆者はMCUの仕掛人であるケヴィン・ファイギ氏が『アベンジャーズ』のPRで来日した際、「サノスの登場はファン・サービスですか? それとも伏線ですか?」と聞いたところ、「この先出すつもりがなければ、あそこで出しません」との答えをいただきました。面と向かってファイギ氏にこのことを聞いた人がまだいなかったようで、この時のインタビュー記事は海外のメディアに引用されたりしました。
その10:シュワルマを食べていないキャプテン・アメリカ
本作で話題になったのは、アベンジャーズのメンバーが淡々とシュワルマを食べるエンドクレジット後のおまけシーン。よーくみると、キャプテン・アメリカは食べておらず、頬杖をついています。実はこのシーン、一旦クランクアップした後、かなり日にちが空いてから急遽メンバーを集めて撮ることになった追加シーンなのです。その時、キャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンスは、映画『スノーピアサー』の撮影があり髭をのばしていたのです。そこで人工の顎をつけて髭を隠し、そしてその大きさを隠すため手で隠していたのです。
おまけ:2012年はすごい年だった
『アベンジャーズ』が公開された2012年は、6月にアンドリュー・ガーフィールド主演『アメイジング・スパイダーマン』、7月にクリスチャン・ベイル主演の『ダークナイト ライジング』が公開されました。今年ガーフィールドのスパイダーマンがMCU版スパイダーマンと共演、ベイルはヴィランとして『ソー:ラブ&サンダー』に登場。不思議な縁を感じますね。
まだまだ語りきれないことはいっぱいありますし(例えばトニーがマーク7を起動させるブレスレット型のデバイスは日本の磁気健康ギア・コラントッテ等)、映画には多くのトリビアが隠されています。10周年の記念すべきタイミングで、改めて『アベンジャーズ』を観直してみてはいかがでしょうか? そして先日のサンディエゴ・コミコンでは2025年に2本のアベンジャーズ新作映画『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ(原題) / Avengers: The Kang Dynasty』(2025年5月2日全米公開)、『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題) / Avengers: Secret Wars』(2025年11月7日全米公開)が公開されることが発表されました! お楽しみはまだまだ続くのです!
杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)プロフィール
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画についての情報をさまざまなメディア、劇場パンフレット、東京コミコン等のイベントで発信。現在「スクリーン」「ヤングアニマル嵐」でアメコミ映画の連載あり。サンディエゴ・コミコンも毎年参加している。来日したエマ・ストーンに「あなた(日本の)スパイダーマンね」と言われたことが自慢。