「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」キャスト・キャラクターまとめ
1972年に公開された名作『ゴッドファーザー』の波乱万丈の舞台裏を、映画プロデューサーを務めたアルバート・S・ラディを主人公に描くドラマ「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」(全10話・U-NEXTで独占配信中)。スタッフ、映画スター、マフィアまで、本作に登場するキャラクターに加え、モデルと思われる人物を紹介します。(編集部・石井百合子)
「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」あらすじ
プログラマーから転職し、パラマウント・ピクチャーズに入社したラディは、業績悪化の中でヒット作を生み出すべく躍起になっていたパラマウント社の凄腕プロデューサー・ロバート・エヴァンスから、ニューヨークで話題になっていた小説「ゴッドファーザー」を低予算でヒットさせるよう無茶振りされる。当時、映画業界では「ギャング映画は売れない」とされており、スタジオは映画を売るため予算やキャスティングや演出にダメ出しを連発。一方、監督のフランシス・フォード・コッポラと原作者のマリオ・プーゾは「商業映画ではなく芸術作品を作りたい」と主張。ラディは両者の板挟みにあい日々葛藤するなか、小説におけるマフィアの描写を良しとしない実在のマフィアたちが映画化に反対し、あの手この手で妨害。制作陣は命がけで続行しようとする。
ラディ役には今年空前のヒットを記録した『トップガン マーヴェリック』も話題のマイルズ・テラーが起用されたほか、彼を翻弄する上司エヴァンス役に『キングスマン:ファースト・エージェント』のマシュー・グード。映画監督フランシス・フォード・コッポラ役に『ファンタスティック・ビースト』シリーズのダン・フォグラー。映画『ロケットマン』(2019)の監督を務めた俳優、監督のデクスター・フレッチャーがメガホンをとった。
『ゴッドファーザー』のスタッフ
アルバート・S・ラディ(演:マイルズ・テラー)
『ゴッドファーザー』のプロデューサーに抜擢された俊英。ランド研究所のコンピューター技師からエンターテインメント業界に転職。テレビシリーズの戦争コメディー「0012/捕虜収容所」(1965)を成功させ、ロバート・エヴァンスにパラマウントで映画を製作したいと売り込み。ロバート・レッドフォードを主演に迎えた映画『お前と俺』(1970)を低予算で製作した腕をかわれた。ルールに縛られないスタイル。『ゴッドファーザー』では会社とクリエイターの板挟みになり、映画をつぶそうとするマフィアたちと戦い、七転八倒しながら前進し続ける。
モデルになった人物
主なプロデュース作に『ロンゲスト・ヤード』(1974※製作・原案)、『キャノンボール』(1981)など。『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)で2度目のオスカーを受賞。近年の作品にクリント・イーストウッド監督の『クライ・マッチョ』(2021)など。「ジ・オファー」には自身も原案・製作総指揮として名を連ねている。
ロバート・エヴァンス(演:マシュー・グード)
パラマウント映画の重鎮で、ラディの上司。ヒットメーカー。婦人服の販売と映画の端役からスタートした。経営不振を切り抜けるために『ゴッドファーザー』を何が何でも成功させようとする。キャスティングを巡って監督のコッポラや原作者プーゾらクリエイターたちと度々衝突するが、ラディは彼なしにこの映画は作れないと頼りにしている。私生活では『ある愛の詩』などでブレイクした妻で女優のアリ・マッグローとラブラブ。しかし、マッグローが新作『ゲッタウェイ』の撮影に入ったことから暗雲が……。ラディと同様、映画が軌道に乗るにつれて私生活がすさんでいく。酒と女性に目がなく、年中小麦色。
モデルになった人物
『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)、『ある愛の詩』(1970)、『チャイナタウン』(1974)など30年にわたってヒット作を生んだ稀代のプロデューサー。彼の自伝をもとに、破天荒な人生を追ったドキュメンタリー『くたばれ!ハリウッド』(2002)も話題を呼んだ。1974年までパラマウントを指揮。
フランシス・フォード・コッポラ(演:ダン・フォグラー)
映画監督。金銭面で苦労しており渋々『ゴッドファーザー』の監督を引き受けるも、原作者プーゾが紡ぐ物語に心打たれ、いつしか彼との共同脚本に心血を注ぐようになる。主人公マイケル・コルレオーネ役に、当時舞台を中心に活動していたアル・パチーノを熱望。エヴァンスをはじめパラマウントの上層部が猛反対するも、パチーノとマーロン・ブランドのキャスティングは頑として譲らなかった。シチリアロケ敢行も譲らず、予算を削減しようとする上層部に抗い続ける。
モデルになった人物
代表作に『地獄の黙示録』(1979)、『コットンクラブ』(1984)、『ドラキュラ』(1992)など。『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザーPART II』(1974)でアカデミー賞脚色賞を連続受賞(マリオ・プーゾと)、「PART II」では初の監督賞も獲得。『ゴッドファーザー』シリーズでコニー・コルレオーネを演じたタリア・シャイアは妹。息子のロマン・コッポラや娘のソフィア・コッポラも監督として活躍し、芸能一家としても知られる。
チャールズ・ブルードーン(演:バーン・ゴーマン)
パラマウント映画の会長。キャスティングや予算面でラディと度々衝突するが、ラディの熱意に負けることも。自由人なエヴァンスに手を焼く。
モデルと思われる人物:チャールズ・ブルードーン
パラマウントが傘下に入った、多角的な持株会社・ガルフ(G)&ウエスタン(W)社の創業者で、取締役会長。パラマウントはG&Wの娯楽部門の中核で、ブルードーンは経営不振だったこの会社の再生に関心を寄せていた。頑固で怒りっぽい性格とされている。
バリー・ラピダス(演:コリン・ハンクス)
四角四面の性格。何かと予算を削ろうとする。エヴァンスとそりが合わず、犬猿の仲。キャスティングやロケーション、尺などの問題でコッポラらを苦しめる。撮影現場に“スパイ”を送り込んで監視し、とりわけアル・パチーノの起用についてはしつこく反対し続けた。映画のポスターデザインの見極めなどセンスはゼロ。
ベティ・マッカート(演:ジュノー・テンプル)
ラディの有能な秘書。バツイチ。「誰かに決められる人生」に嫌気がさし、映画業界へ。目的をかなえるためには手段を問わないところも。女性だからと軽んじないラディをリスペクトし、いかなる苦難も支える。
モデルになった人物
のちにエージェントとして成功し、ジョージ・クルーニーら数々のスターの代理人を務めた。
ピーター・バート(演:ジョシュ・ザッカーマン)
パラマウントの重役。『ローズマリーの赤ちゃん』『ペーパー・ムーン』など良作脚本の発掘に尽力する。聡明で柔らかな性格で、衝突を繰り返すエヴァンスとバリー・ラピダスの仲をとりもとうとする。
モデルと思われる人物:ピーター・バート
プロデューサー、ジャーナリスト、脚本家。主なプロデュース作に『おかしな泥棒ディック&ジェーン』(1977)、『栄光のエンブレム』(1986)など。
マリオ・プーゾ(演:パトリック・ギャロ)
作家。鳴かず飛ばずで借金まみれだったが、編集者の助言でマフィアを題材にした「ゴッドファーザー」がベストセラーに。映画化の際には前のめりで脚色に立候補するも、当時は原作者が脚本を手掛けることは業界であまり認められず、彼にとって大きな挑戦となる。ビト・コルレオーネ役にマーロン・ブランドを熱望し、本人に手紙を書いて出演依頼をした。メタボ体形で、しっかり者の妻がラディたちに食生活の監視を依頼するがあまり守っていない模様。
モデルになった人物
おもな著作に「四番目のK」「オメルタ 沈黙の掟」など。ベストセラーになった小説を映画化した『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザーPART II』で二度のアカデミー賞脚色賞に輝き、その後も『スーパーマン』シリーズ(1978・1981)、『コロンブス』(1992)などの脚本も手掛ける。「ラスト・ドン」「シシリアン」なども映像化されている。
ゴードン・ウィリス(演:T・J・サイン)
撮影監督。『ゴッドファーザー』で、コッポラ監督が熱望した「光と闇」の対比を強調した撮影を手掛けた。書斎のシーンでは「役者が自由に動くとうまくいかない」と苛立ち、「役者は自由に動いてこそいい演技が出来る」と主張するコッポラ監督と衝突する。
モデルと思われる人物:ゴードン・ウィリス
代表作に『大統領の陰謀』(1976)、『アニー・ホール』(1977)、『マンハッタン』(1979)、『カメレオンマン』(1983)、『冷たい月を抱く女』(1993)、『デビル』(1997)など。『ゴッドファーザー』ではパート2で全米批評家協会賞撮影賞、パート3でアカデミー賞撮影賞にノミネート。2008年にアカデミー賞名誉賞を受賞している。
『ゴッドファーザー』のキャスト
アル・パチーノ(演:アンソニー・イッポリート)
コッポラ監督やラディが、彼をマイケル・コルレオーネ役に熱望。まだキャリアが浅かったため、エヴァンスやパラマウント上層部の猛反対に遭い、出演が本決まりになるまで紆余曲折あった。マーロン・ブランドも彼の才能をかい、マイケル役に推していた。
モデルと思われる人物:アル・パチーノ
『ゴッドファーザー』での成功により一躍スターになるも、同シリーズでオスカーを受賞することはなく(パート1では助演男優賞、パート2では主演男優賞にノミネート)、8度目ノミネートの『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1972)で悲願の主演男優賞受賞。代表作に『セルピコ』(1973)、『スケアクロウ』(1973)、『狼たちの午後』(1975)など。『リチャードを探して』(1996)では監督も務めた。
マーロン・ブランド(演:ジャスティン・チェンバース)
彼をビト・コルレオーネ役に推していた原作者のプーゾが手紙を送ったところ、「自分がやるべき役」と出演を熱望。しかし、パラマウントの上層部たちはトラブルメーカーでやや落ちめだったブランドの起用に難色を示す。しかし、ブランドの家に招かれ奇跡的な瞬間を目にしたコッポラ監督、プーゾ、ラディは衝撃を受け、彼以外に適任はいないと確信する。
モデルと思われる人物:マーロン・ブランド
代表作に『欲望という名の電車』(1951)、『革命児サパタ』(1952)、『地獄の黙示録』(1979)、『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)など。『波止場』(1954)でオスカー初受賞。『ゴッドファーザー』で2度目の主演男優賞を獲得するも、人種差別への攻撃として受賞を拒否したのは有名な話。2004年に80歳で亡くなった。
『ゴッドファーザー』映画化に反対する人々
ジョー・コロンボ(演:ジョヴァンニ・リビシ)
マフィア。イタリア系アメリカ人を侮辱しているとの理由から『ゴッドファーザー』の製作を中止に追い込もうと画策するも、「脚本を読めばむしろ応援したくなるはず」と熱弁をふるうラディに心を動かされていく。イタリア系アメリカ人公民権同盟を設立し、公での活動を開始したところ注目され過ぎて仲間のマフィアたちの反発をかう。
モデルになった人物
イタリア系アメリカ人公民権同盟を設立。銃撃の7年後に死亡した。
フランク・シナトラ(演:フランク・ジョン・ヒューズ)
歌手、俳優。プーゾが執筆した「ゴッドファーザー」に、明らかに自身をモデルにした人物が登場すると知り、その描写に激怒。決まりかけていたキャスティング(ジョニー役)を頓挫させるなど、マフィアとのコネクションやマスコミを使って映画化を執拗に阻止しようとする。
モデルと思われる人物:フランク・シナトラ
「カム・フライ・ウィズ・ミー」「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」「マイ・ウェイ」「ニューヨーク・ニューヨーク」などヒット曲多数。俳優としては『地上(ここ)より永遠に』(1953)で助演男優賞を受賞。プレーボーイとして知られ、女優のエヴァ・ガードナー、ミア・ファローらと結婚・離婚。イタリア系マフィアとの黒い噂があり、『ゴッドファーザー』では彼がモデルと思われるジョニーという歌手が登場している。
『ゴッドファーザー』スタッフの関係者
アリ・マッグロー(演:メレディス・ギャレットソン)
女優でエヴァンスの妻。『ゴッドファーザー』でエヴァンスが多忙を極め、徐々にすれ違っていく。しかし、映画完成後、エヴァンスにある恩返しをすることとなる。
モデルと思われる人物:アリ・マッグロー
エヴァンスがヒットさせた『ある愛の詩』(1970)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、女優として成功。その他代表作に『さよならコロンバス』(1969)、『コンボイ』(1978)など。エヴァンスと離婚後、『ゲッタウェイ』(1972)で共演したスティーヴ・マックィーンと結婚した(のちに離婚)。
フランソワーズ・グレイザー(演:ノラ・アルネゼデール)
ラディの妻でホテル経営者。『ゴッドファーザー』が軌道に乗るまでは夫婦円満だったが、ラディが多忙になり家庭を顧みないようになってから不満をためる。やや自信過剰な側面があり、ラディの仕事に口出しするようになったことから険悪なムードになっていく。
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参考文献:「ザ・ゴッドファーザー」(ソニーマガジンズ)