徹底予習!「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」を観る前に
映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ3部作の遥か数千年前を舞台に、J・R・R・トールキンの名作ファンタジー小説に基づく新シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」が9月2日よりPrime Videoにて独占配信(全8話)される。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズとどこが同じでどこが違うのか、わかりやすく整理してみる。(文・平沢薫)
『ロード・オブ・ザ・リング』とは“時代”が違う
ピーター・ジャクソン監督がトールキンの名作ファンタジー小説を映画化した『ロード・オブ・ザ・リング』(以下、『LOTR』)3部作は、2001年、2002年、2003年に公開されて世界中で大ヒット。アカデミー賞にも多数ノミネートされ、3作目の『王の帰還』は作品賞、監督賞をはじめ11部門にノミネート、全部門受賞するという快挙を果たした名作だ。
この3部作と同じ、トールキンが創造した世界、“中つ国”を舞台に描かれるのが「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」(以下、「力の指輪」)。予告編を見ても、同じ世界を舞台にしていることがわかる。
ただし、「力の指輪」は、これまでの映画とは“時代”が違う。トールキンの壮大な物語体系には時代区分が設定されており、『LOTR』の出来事が起きたのは“第三紀”。同じジャクソン監督が映画化した『ホビット』シリーズ3部作の出来事が起きたのも“第三紀”。だが、「力の指輪」は、その前の“第二紀”の出来事が描かれる。それぞれの紀は3,000年以上続くので、「力の指輪」は『LOTR』の数千年前の物語。しかし、物語は『LOTR』に繋がっており、あれらの出来事がなぜ起きたのかが、本作で描かれるのだ。
『ロード・オブ・ザ・リング』と同じキャラクターが登場
時代は違うが、『LOTR』『ホビット』と共通する登場人物がいる。なぜならエルフの寿命は長いから。2つの3部作でおなじみのエルフ2人、エルロンドとガラドリエルは、「力の指輪」にまだ若い姿で活躍する。そして、『LOTR』第1作の冒頭の歴史分で、サウロンの指を切り落としたアラゴルンの祖先、イシルドゥル(旧表記:イシルドゥア)も登場。さらにこの時期には『LOTR』のラスボス、冥王サウロンも『LOTR』とは違う姿で存在している。また、『LOTR』ではサルマンの手下だった種族オークも、『LOTR』とは少し違う姿で登場する。あの懐かしいキャラクターたちに、再び出会うことになる。
『ロード・オブ・ザ・リング』の中つ国が登場する
舞台は同じ“中つ国”なので、『LOTR』『ホビット』に登場した霧ふり山脈や、かつて栄えていたと語られた、人間の王国ヌーメノール(旧表記:ヌメノール)や、ドワーフの王国カザド=ドゥムの、最盛期の姿が描かれる。ほかにも、トールキンの小説に出て来る場所、エルフの王国リンドンやエレギオン、サウスランド、最北の荒野、サンダーシーが登場することが発表されている。中つ国のまだ見たことのない風景を見逃すわけにはいかない。
ピーター・ジャクソン監督は関わっていない
本作のクリエイターは、J・D・ペインとパトリック・マッケイ。2人は高校時代からの友人で、一緒にパラマウント・ピクチャーズで企画進行中の『スター・トレック』第4作の脚本などに参加しているが、本作が初のシリーズ作品となる新鋭。また、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』『怪物はささやく』のJ・A・バヨナ監督が製作総指揮に参加し、本作の第1話と第2話の監督を手掛けている。
本作に『LOTR』『ホビット』のジャクソン監督が関係していないのは意外な気がするが、接触がなかったわけではないそう。ジャクソン監督はハリウッド・リポーター紙のインタビューで、「製作陣から興味があるかを問われて、脚本次第だと答えたところ、脚本が出来たら送ると言われたまま、連絡が来なかった」と明かしている。ただし、ジャクソン監督は本作に好意的で、「僕はこの作品を観るよ。僕は悪意を持つような人間じゃない。映画製作は難しいものだ。誰かがよい作品を作ったなら、それは祝福するべきだ」と語っている。
ストーリーはトールキンの設定を踏まえたオリジナル
「力の指輪」は、トールキンの小説をそのまま映像化する作品ではなく、トールキンが小説で描いた設定を踏まえて、オリジナルのストーリーを描いている。まだ若いガラドリエルが、中つ国に忍び寄る邪悪な存在の気配に気付き、それに立ち向かっていく物語となる。
また、本作のクリエイターであるJ・D・ペインとパトリック・マッケイの発言によれば、第二紀に起きた主要な出来事を描いていて、その中には「指輪の創造」「冥王サウロンの台頭」「ヌーメノールの壮大な戦い」「エルフと人間との最後の同盟」が含まれるとのこと。シーズン1は全8話なので、そのすべては描けないだろうが、すでにシーズン2の製作は決定済み。クリエイターたちは、かなり先まで構想している。
ちなみにこの発言の「指輪の創造」の指輪とは、本作のタイトルでもある力の指輪のこと。『LOTR』第1作の冒頭で語られた、エルフに3つ、ドワーフに7つ、人間に9つ与えられた力の指輪が、なぜ、どのような経緯で創られたのかも描かれていくことになりそうだ。
小説のキャラクターとオリジナルキャラクターが共演
こうした物語なので、トールキンの小説の登場人物と、本作オリジナルのキャラクター、双方が活躍する。しかも登場人物の数はかなり多い。
小説に登場するキャラクターは多く、戦士のガラドリエル(モーフィッド・クラーク)、エルフ王のために働くエルロンド(ロバート・アラマヨ)、エルフの上級王ギル=ガラド(ベンジャミン・ウォーカー)、ドワーフの王ドゥリン三世(ピーター・ミュラン)、人間のエレンディル(ロイド・オーウェン)、その息子イシルドゥル(マキシム・バルドリー)などなどが登場。
また、オリジナルキャラも多数。シルヴァン・エルフの戦士アロンディル(イスマエル・クルス・コルドヴァ)、よそびと(ダニエル・ウェイマン)、人間のハルブランド(チャーリー・ヴィッカー)や、ホビットの祖先的種族ハーフット族のエラノール(“ノーリ”)・ブランディフット(マルセラ・カヴェナー)、その親友ポピー・プラウドフット(メーガン・リチャーズ)など続々。これら主要登場人物の多さを見ても、さまざまな場所での出来事が同時進行する、群像ドラマになりそうだ。
ちなみに、エルロンド役のロバート・アラマヨは、人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の若い頃のネッド・スターク役でおなじみ。ガラドリエル役のモーフィッド・クラークは『セイント・モード/狂信』で英国版アカデミー賞、BAFTAのライジング・スター賞にノミネートされた注目株だ。
「力の指輪」は、『LOTR』で描かれた中つ国を舞台に、ここでかつて起きた出来事を描く物語。おなじみの人物の若い頃の姿も描かれるほか、『LOTR』とのリンクもいろいろあるので、その点に注目するのも面白そうだ。