本物感すごすぎ!ディズニー実写版『ピノキオ』驚きの完成度
提供:ディズニープラス
Disney+(ディズニープラス)で配信がスタートした『ピノキオ』は、早くもその映像が話題になっている。1940年製作のディズニーアニメーションを『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなどの巨匠、ロバート・ゼメキスが満を持して実写映画化。つねに映像を革新し続けてきたゼメキスによる新たな『ピノキオ』を、日本映画界が誇る“VFXの名手”山崎貴監督は、どのように受け止めたのだろうか。(取材・文:斉藤博昭、撮影:高野広美)
ロバート・ゼメキスが『ピノキオ』に挑んだ理由を想像
『美女と野獣』『アラジン』のように、これまでもディズニーの名作は実写で再生されてきたが、『ピノキオ』は名作中の名作ながら、82年もの長い間、ディズニー作品として実写化されなかった。作り手側には大きなチャレンジだったはずで、これまで「ドラえもん」(『STAND BY ME ドラえもん』)や「ルパン三世」(『ルパン三世 THE FIRST』)といった誰もが知る名作を自ら新たな映画にしてきた山崎監督は、そのプレッシャーを実感しているようだ。
「新しい技術で名作をよみがえらせるというのは、元の作品を観ていない人にも届くわけですから、映画監督にとってひとつの喜びです。同時に元の作品のファンを失望させてはいけない。同じように愛される作品を目指すための試行錯誤は、オリジナル作品とは違う方向性のプレッシャーになります。『ピノキオ』の場合、何度か実写化が試みられ、完成に至らなかった話を聞いていたので、多くの監督が挑みたい大きなプロジェクトであると認識していました」
そんな高いハードルに挑んだのがロバート・ゼメキスだったことに、山崎監督も最初は「そこに来ましたか!」と驚いたそうだが、ゼメキスが『ピノキオ』を実写化した動機について、思い当たることもあったという。
「ピノキオって“人間になりたい人形”の物語ですよね。一方でゼメキスは、キャラクターを生身の人間に限りなく近づけるタイプのフルCGアニメーションを開拓してきた監督です。こじつけかもしれませんが“人間になりたい”者への愛が深いのではないでしょうか。そんなゼメキスの方向性と、ピノキオという題材が一致したと感じます。あくまでも僕の解釈ですが(笑)」
トム・ハンクスへの信頼に、同じ監督として共感
ロバート・ゼメキスには「勝手ながら親近感をおぼえる」とほほ笑む山崎貴監督。
「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、特に『2』が大好きですが、SF作品で有名になった後、ゼメキスは『フォレスト・ガンプ/一期一会』でアメリカの歴史を振り返った。僕も最初は『ジュブナイル』『Returner リターナー』というSFを撮って、『ALWAYS 三丁目の夕日』で自分の国が通過した時代をテーマにしました。そのせいか『ゼメキスとフォルモグラフィーの流れが似ていますね』と言われ、実際にお会いして対談した時も(2013年の『フライト』公開時)、自分との“近さ”を実感できたのです。会話の中にオタク気質が垣間見られましたし、映画のパイオニアになろうとする姿勢が直に伝わってきました」
では、そんなゼメキスの素顔も重ねながら、今回の『ピノキオ』を山崎監督はどう観たのか。重要なキャラクターとゼメキス本人がシンクロして感動したという話は、監督と主演俳優との関係にも広がっていく。
「ゼペットじいさんへの思い入れを強く感じました。人間のように動くピノキオを目にしたゼペットに、CGキャラクターを完成させるゼメキスの姿が重なるんです。ちょっと過剰な喜び方でしたよね(笑)。ゼメキスの愛が、無意識にゼペットに乗っかってしまったのでは? そんなゼペット役がトム・ハンクスなのは、ゼメキスが“ここ一番”の切り札を使った印象です。『フォレスト・ガンプ/一期一会』はもちろんですが、ハンクスに複数のキャラクターを演じてもらった『ポーラー・エクスプレス』もありました。やはりピノキオの映画化はゼメキスにとっても特別で、切り札に頼りたかったのでしょう。僕の作品でも、映画として成立させる重要な役どころで、吉岡(秀隆)くんに頼ることがあります。監督にとって切り札となる俳優への揺るぎない信頼を、『ピノキオ』で感じました」
ラストに驚き!大人にこそ届くメッセージとは?
このように共通点も多いゼメキスと山崎監督だが、その作風で最も近い点といえば、革新的な映像へのチャレンジだろう。今回の『ピノキオ』も、人間以外のキャラクターはオールCG。目を見張るような背景も登場して、映画の新たな地平を切り開いている。山崎監督はこれらの映像に何を感じたのだろうか。
「想像していた以上に、アニメ版のピノキオのイメージが忠実に再現されていて驚きました。木の人形として、さりげなく“ぎこちなかったり”する。人間のようなリアルで滑らかな動きではない分、逆に表現に細心の注意が払われているはずで、アニメーターのセンスに感心します。また、(後半に出てくる)プレジャー・アイランドのゴージャスな背景、キツネ(ファウルフェロー)とネコ(ギデオン)などのキャラクターは、複雑なプロセスで映像化しつつ、軽やかに描いているように見せる。CGを自由に駆使できるのに、あえて見せないシーンもあったりと、そのあたりの“引き算”の演出にも感激しました」
最新技術をこれ見よがしに使わないことで、クラシックとして愛された世界の魅力も損なわれない。そこに今回の『ピノキオ』の魅力があると語る山崎監督。だからこそ本作は大人にもアピールするのだと力を込める。
「めくるめく映像を楽しみながら、最後にたどりつくのは、大人にこそ訴えかけるメッセージだと思います。ゼペットに感情移入してもらえれば、そのメッセージを受け止めることができるでしょう。さらに、ピノキオが本当に大切なことに気づいていくプロセスは、現代のわれわれの心に響くはずです」と今の時代に合わせてしっかりとアップデートされ、アニメーション版とは異なるラストにも驚きと感動を受けたようだ。
最後に自ら実写化してみたいディズニー作品を聞いてみると、「空を飛びたいという子供たちの喜びが純粋に込められた『ピーター・パン』は、多くの映画監督が実写で挑戦してみたいのでは?」と語る山崎貴監督。日本を代表する映画監督にも、今回の『ピノキオ』はさりげなく夢を運んできたのかもしれない。
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