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映画たて・よこ・ななめ見!

ウーマン村本が実体験、偏見はいつの時代にもある

映画たて・よこ・ななめ見!

 ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、全世界で累計1,500万部を売り上げたディーリア・オーエンズの同名ミステリー小説を映画化したサスペンス『ザリガニの鳴くところ』から、偏見をテーマに語ります。(取材・文:森田真帆)

今回の映画は『ザリガニの鳴くところ』です。

 ディーリア・オーエンズの小説「ザリガニの鳴くところ」を実写化したミステリー。湿地帯でたった一人で育った少女が殺人事件の容疑者となって法廷に立ち、壮絶な半生と事件の真相が明らかになる。メガホンを取るのは『ファースト・マッチ』などのオリヴィア・ニューマン。『フレッシュ』などのデイジー・エドガー=ジョーンズ、『シャドウ・イン・クラウド』などのテイラー・ジョン・スミスのほか、ハリス・ディキンソン、デヴィッド・ストラザーンらが出演する。

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美しい映像に感動!ヒロインの姿に驚き

中川パラダイス(以下、中川):この映画、めっちゃ面白かった! すごい観やすかったしな。いつも村本が選ぶ映画ってだいたい事実に基づいたみたいなのが多かったからそんなんかなって思ってたけど、この映画は景色もキレイやし、めっちゃドラマがちゃんとあるし、サスペンスっぽい部分もあって2時間5分あっという間やったわ

村本大輔(以下、村本):たしかにめっちゃ映像キレイやったな。すごく美しい絵画みたいな風景の中で、残酷で現実的な物語が進んでいく感じがめっちゃ良かった。あとこの映画って、ただのサスペンスじゃないんよな育ってきた場所によって人が勝手に偏見を持つことの問題なんかもちゃんと描かれていて、考えさせられることがめっちゃ多かった。

中川:ヒロインの女の子を見て思い出したんやけど、昔、僕が二十歳くらいの時にキャバの女の子をナンパして、友だち連れてきていい? って言われたことがあってさ。一緒にその友だちを迎えに行ったら、怪しい場所にどんどん入っていって、出てきた女の子がめっちゃ汚い子で、眉毛もボーボーで、多分何日も風呂入っていない汚いジャージ着ててさ、お腹ボリボリかきながら「何食べさせてくれるん?」って言うてきたんよ。そのまま一緒にタクシーに乗ったんやけど、あまりの臭さにタクシー運転手がびっくりして窓あけるくらいやってん。枝豆も皮ごと食うてた彼女と僕は恋愛にならんかったんやけど、あのヒロインを好きになった男たちは、彼女の心のキレイさに引かれたんやろなって思った。僕は、ただ最後にお風呂入っといでって言って、銭湯に行かせたの思い出したわ。

村本:なんの話やねん! ていうか、そんな汚くなかったやろ、沼地の女の子は。風呂ちゃんと入ってたと思うで。

中川:いやいや本来なら絶対に汚かったやろ。風呂とかちゃんと入ってたと思う? 僕からしてみたら生きる力のスゴさなんて、あのとき枝豆の食べ方知らんかった彼女も、沼地の女の子も、僕なんかよりも全然すごいって思うねんな。そういう生きる力みたいなところが好きになったんかなって思ってさ。

村本:沼地の女の子は、めっちゃ見る視点が違ってたやん。コツコツと、自分の興味あることを調べたり、それを日記に書きとめたり、そういう才能にあふれたところとかも素敵やったんちゃう?

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拭いきれない親父のDNA

村本:すごい思ったんは、彼女だけが最後まで暴力的なお父さんと一緒に住み続けるわけやん。彼女が受けてきた仕打ちっていうのは、きっとお父さんも同じように受けてきたんちゃうかな。大人になった彼女は感情のコントロールが難しくて爆発しやすい。それって、めっちゃお父さんに似てるやんな。お父さんの孤独を彼女自身が同じように感じているって思うと、めっちゃ切ないよな。

中川:僕も子供の頃、親父の嫌やなって思うことがたくさんあったのに、今、自分があの頃の親父と同じ年齢になったときに、親父の嫌なところが自分にめっちゃ出てんねん。それに自分が気づくと、めっちゃう「わぁっ」てなってまう。

村本:親父のどういうところが似てると思うん? 

中川:女にだらしないところとか。

村本:それ、ほんまに親父のDNAのせいなんか? でも、それはオレも感じることあるわ。こないだおかんと一緒に旅行したんやけど、その旅行中ずっとおかんが「あんたのこういうところがおとんにそっくりやわ」って言うててさ。うちのおやじ、金ないのにかっこつけていろんな人にごちそうして、結局借金めっちゃ作っててん。そんで子供たちでそれ立て替えようって話になって、親父のところに行ったときも「わざわざごめんな」って4万くらいする越前カニ2杯も頼んでてさ。そういうとこやねん(笑)!

中川:なんなんやろな。しかもヒロインはさ、結局親父に似た感じの暴力的な男を知らずに好きになっちゃってるところも、かわいそうやなって思ったわ。

村本:そうやねんなー。でも気づいた? あんなに嫌いだったお父さんがくれたカバン、あの子ずっと大切に使ってんねん。オレはそこにグッときた

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偏見は日本にもある

村本:この映画ってさ、沼地で生きている彼女に対しての村の人たちの偏見がめっちゃひどかったやん。みんな好き勝手あーだこーだ言うの。ああいう、生きてきた場所で勝手に人を決め込んで、あーだこーだ言うのって、今の日本にだってあるやん。在日の人たちもそうやし、被差別部落や、生きてきた場所だけじゃなくて肌の色なんかでも勝手に決めつけて、悪口を言うみたいなのは全然ある。

中川:そうやな。村の人たち、好き勝手言うてたもんな。

村本:あの親子は、社会と全然かかわらずに過ごしてきて、いざ学校に行ったときのつらい感じなんてめっちゃ切なかった。大人になってからもそうや。事件が起きて、村の人たちが沼地の女の子を責め立てて、結果的に裁判まで持ち込んでさ。オレ、裁判で彼女を守ろうとする弁護士の先生が、「よそ者に罪を着せるのが一番楽」っていう言葉を聞いてめっちゃそうやなって思った。この映画はずっと昔を舞台にしているけど、それは今もそう。自分たちとは違う人間を責めるのが、結局一番楽やねん

中川:沼地の女の子も、ずっと社会と交わらずに過ごしてきたやん。あの優しい黒人の夫婦以外は、全然彼女のこと知らん人ばかりなのに、みんなで好き勝手に想像して、悪いことばっかり言って。村の人たちからの偏見をずっと感じてきた女の子が、裁判で村の人たちに言う言葉はめっちゃ胸に響いた

村本:そうやねん。あの言葉はめっちゃ重みがあったな。人ってさ、なんか有名になったりすると、そういう変な偏見とか全部吹っ飛ぶねん。この前、ロンドンの語学学校に行ったやん。あのとき、オレだけ40代でアジア人やし、あとはみんな若いやつらでめっちゃ浮いてたんや。

中川:夜間学校に1人だけおっさんいるみたいなやつやな。

村本:そうそう。世代も全然違うそいつらに混ざりたくもないし、とはいえ一人ぼっちも寂しいし、オレもたった1人の湿地帯にぽつんってなってたんや。オレがしゃべらんから、みんな近寄りにくそうにするねん。吉本の楽屋と一緒やわ。

中川:たしかに、吉本の楽屋でもジメジメしがちやもんな。

村本:吉本の楽屋でもオレは湿地帯。ロンドンでも同じく湿地帯やってん。でもさ、最後の日にみんなでインスタ交換しようってなってな、オレ、フォロワーめっちゃおるやん。そしたらみんながワーッて盛り上がって、オレが一気に何者かになって。オレのこと陰で絶対に悪口言うてたヤツらまで見る目変わってん。結局、人の先入観なんて、そんなもんなんやろなーって思うわ

※記事内容には個人の意見が含まれています。

『ザリガニの鳴くところ』11月18日公開 映画『ザリガニの鳴くところ』公式サイト

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ウーマンラッシュアワー・プロフィール

2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。

村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。

村本大輔ツイッター

中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。

中川パラダイスツイッター

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