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『パーフェクト・ドライバー』公開記念 女性カームービー特集!

『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』(C) 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.

 車にまつわる「カームービー」には『バニシング・ポイント』(1971)や『断絶』(1971)、『激突!』(1971)、さらに『ワイルド・スピード』や『トランスポーター』シリーズまで多くの名作・人気作が存在するが、その多くの主人公は男性。しかしもちろん、男ばかりではない。パク・ソダム主演の秀逸な韓国アクションパーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女公開(1月20日)を記念して、この特集では女性が主人公のカームービーにフォーカスしてみたい。

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『ファスタープッシーキャット キル!キル!』(1965)Silver Screen Collection/Getty Images

 まず取り上げたいのが、エクスプロイテーション映画の巨匠、ラス・メイヤー監督の代表作『ファスタープッシーキャット キル!キル!』(1965)。カリフォルニアの砂漠でドライブに興じる3人のゴーゴーダンサーたちが、カーレースで出会った少女を誘拐し大金を隠し持つ隠居老人の家を急襲する、というバイオレンス満載の痛快アクションだ。車に魅了されるパワフルでストロングな女性たちの姿を映し出したワイルドなB級映画だが、カルト映画の巨匠ジョン・ウォーターズは自著の中で「史上最高の映画」とベタ褒め。映画のみならず音楽を含め後世のポップカルチャーに多大な影響を及ぼした重要なカルト映画である。主演の1人で北海道出身の日系アメリカ人女優、トゥラ・サターナが放つカリスマ性もまぶしい。

『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007)Dimension Films / Photofest / ゲッティ イメージズ

 続いて、クエンティン・タランティーノ監督のデス・プルーフ in グラインドハウス(2007)。盟友ロバート・ロドリゲスのゾンビアクション『プラネット・テラー in グラインドハウス』と二本立てで劇場公開された『グラインドハウス』の一編だが、映画の世界で働く4人の女性たちがハリウッド映画のスタントマン兼殺人ドライバー「スタントマン・マイク」に命を狙われ、迎撃するアクションでありスラッシャーホラー。サム・ペキンパー監督『コンボイ』(1978)や『バニシング・ポイント』にオマージュを捧げたシーンが見られ、『ファスタープッシーキャット キル!キル!』からの影響が顕著な、痛快無比なガールパワームービーだが、スピード感あふれるリアルでハードコアなカーチェイスシーンには手に汗握ること必至。

『テルマ&ルイーズ』(1991)MGM / Photofest / ゲッティ イメージズ

 女性2人の友情を描いたリドリー・スコット監督、スーザン・サランドンジーナ・デイヴィス主演テルマ&ルイーズ(1991)も忘れてはいけない。アーカンソーの田舎町で空虚な生活を送る親友2人が週末の楽しい休暇を過ごすはずが、犯罪に巻き込まれ警察に追われるというロードムービーかつクライムドラマ。アカデミー賞で6ノミネートを果たした本作は、アクション映画ではないが立派なカームービーであり、2人の逃避行劇はそれまでの退屈な人生からの解放と尊い自由の獲得を意味している。物議を醸したエンディングは『バニシング・ポイント』やピーター・フォンダ主演『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』(1974)、はたまた『明日に向って撃て!』(1969)にも通じるものがある。

 女性と車の絆を描いた異色作が、リンジー・ローハン主演のハービー/機械じかけのキューピッド(2005)。レーサー一家に育った主人公マギーと、彼女が大学の卒業祝いにもらった意思を持つフォルクスワーゲン、ハービーの友情を描いた青春コメディーであり、臨場感たっぷりのエキサイティングなカーアクションも満載のキュートな作品だ。

『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』(C) 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.

 最後にもちろん『パーフェクト・ドライバー』を忘れてはいけない。凄腕の運び屋で天才ドライバー、チョン・ウナが危険なミッションを請け負い、予測不可能なエクストリームな事件に巻き込まれる姿を描いた、ニコラス・ウィンディング・レフン監督のノワール『ドライヴ』(2011)を彷彿とさせるスリリングでダイナミックなカーアクションでありながらも、韓国映画らしい鮮烈なバイオレンスと人情味あふれるドラマが高度にバランスよく融合された、エンターテインメントな快作に仕上がっている。パワフルで秘めた過去を持つ主人公を演じたパク・ソダムの演技力の高さと飾らない魅力も光る、2023年という新しい1年のキックオフを飾るに相応しい景気良いアクション大作だ。今後も、今作のような力強い女性ヒーローの活躍が見られるカームービーが数多く作られることを期待したい。(小林真里:映画評論家/映画監督)

(C) 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.
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