『タイタニック』なぜここまで泣けるのか?
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アカデミー賞作品賞を含む11部門受賞(歴代最多タイ)を果たし、日本でも洋画および実写映画として最大のヒットとなる興行収入262億円を稼ぎ出した映画『タイタニック』。興行だけでなく、作品としての評価も高くトップに君臨し続ける名作が3Dリマスターとしてさらに美しく進化を遂げ、『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』として2月10日より2週間限定で劇場公開される。1912年に実際に起きた豪華客船タイタニック号の沈没事故を映画化した『タイタニック』は、なぜ名作なのか、そしてなぜここまで泣けるのか? 25年にわたって多くの人々の涙を誘ってきた本作の魅力にあらためて迫りたい。(編集部・市川遥)
若きレオ様!美しすぎる二人の悲恋
本作を感動的なものにしている大きな要素の一つと言えば、“レオ様”と様付けで呼ばれるほど世の女性たちを虜にしたレオナルド・ディカプリオ(以下、レオ)と、ケイト・ウィンスレットの輝かんばかりの名演と相性の良さだろう。貧しくも新天地ニューヨークでの成功を夢見た画家志望のジャック・ドーソン(レオ)と、政略結婚の駒となる人生に絶望していた上流階級の令嬢ローズ(ケイト)。対照的な思いを抱えて豪華客船タイタニック号に乗り込んだ二人が儚くも運命的な恋に落ちる過程を、共に20代前半だったレオとケイトが心の機微まで繊細に演じているため、ジャックがローズのために死に、ローズがジャックのために生きることを決める姿がどうしようもないほど心を震わせるのだ。
レオは初登場シーンから圧倒的な存在感。事故から84年後を描く冒頭、101歳となったローズの回想として一瞬登場するだけで、その美貌と儚さでスクリーンを支配してしまう。一目でローズに魅了されるジャック、貧しい画家でありながら、タキシードでキメれば一等船室のディナーでも一切見劣りしないジャック、その一方で三等船室でのダンスパーティーでは無邪気な顔を見せるローズ。夕日に包まれた船首でのキスシーンはあまりにも感動的で美しく、世界中で二人をまねするカップルが続出した。そして何よりも号泣必至なのは、凍える水の中でジャックが最後の最後までローズの手を握り「何としても生き残るんだ」と励まし続けるシーン……。レオとケイトによる美しい名シーンの数々には、後に共にオスカー俳優となる二人の演技派たるゆえんを見ることができる。なお、本作の過酷な撮影を通して固い絆で結ばれた二人は25年を経た今も親友同士であり、そうした事実も『タイタニック』をより感動的にしているといえる。
タイタニックの沈没は実際に起きた世紀の大事故なのだが、ジャックとローズは映画のために生み出された架空のキャラクターだ。完璧主義者として知られるジェームズ・キャメロン監督は製作にあたって徹底的なリサーチを行い、手に入るタイタニック号の資料は全て読み込んだ。その中で監督の関心を引いたのが、一等船室の女性客の生存率が97%だったのに対し、三等船室の男性客の生存率はわずか16%だったこと。これがジャックとローズの悲恋の着想となった。さらに、キャメロン監督はタイタニック号の最期の夜の時系列も徹底して脚本に反映させており、だからこそジャックとローズの物語にこれほどまでに説得力がもたらされたといえるだろう。
船長、老夫婦、演奏家たち…脇役たちのドラマは実話
『タイタニック』はジャックとローズの悲恋の物語だけでなく、自らの運命を受け入れ最期の時に立ち向かったその他の人々の姿にも泣かされる。操舵室にとどまり続けたエドワード・スミス船長、船と運命を共にすることを選んだタイタニック号の設計者トーマス・アンドリューズ、特別扱いされることを拒んで二人で最期の時を迎えた老夫婦、乗客を落ち着けるために最期まで演奏を続けたバンドメンバーたち。彼らの物語は史実として広く伝えられているものに忠実な内容になっており、リアリティーに満ちた感動的な瞬間としてしっかりとスクリーンに刻まれている。
それもそのはず、映画の撮影開始前に本格的な深海潜水調査を行い、本物の沈没したタイタニック号を目の当たりにしたキャメロン監督は「これは単なる物語やドラマではなく、実在の人々に起きて彼らが本当に死ぬことになった出来事なのだ」と強く感じ、その深い悲しみを映画で正しく伝えることが責務だと自らに課したのだという。タイタニック号潜水調査で撮影された貴重な映像は現代パートで実際に使用されており、観客を冒頭から美しくも悲しいタイタニックの世界に一気に引き込む役割を担っている。
製作費は当時史上最高額となる2億ドル(約260億円・1ドル130円計算)で、キャメロン監督はタイタニック号の設計図を手に入れ、タイタニック号の半分、右舷側だけほぼ実物大のセットを制作したほか、船が沈んでいくシーンでは、やはり船尾を実物大で制作。ゴージャスな船内の装飾はカメラに映らないようなところまで再現されており、セットが徹底的に作り込まれているからこそ、“絶対に沈まない船”といわれていた豪華客船タイタニック号に海水がどんどん入り込み、ボロボロになっていく姿に言い知れぬ恐怖を感じると共に胸が締め付けられるのだ。
そんな世紀の感動作として映画史にさん然と輝く『タイタニック』を再び劇場で観られる機会は、映画ファンなら絶対に見逃せないはず。しかも今回は3Dリマスター版ということで、まるで自分もその場にいるかのような臨場感。押し寄せる名シーンの数々に涙が止まらなくなることは必至だろう。
映画『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』は2月10日より2週間限定で劇場公開 ※一部劇場を除く 公式サイト
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