アカデミー賞主演男優賞は全員初ノミネート!欧州勢が健闘
第95回アカデミー賞
5人の候補者全員が、アカデミー賞初ノミネートとなった主演男優賞。前哨戦からいくと、『イニシェリン島の精霊』のコリン・ファレルが一歩リードしている。対抗は、『ザ・ホエール』で完全復活を遂げたブレンダン・フレイザー。『エルヴィス』で大きく評価を上げた、勢いのある若手オースティン・バトラーにもチャンスがあるかもしれない。ファレルを筆頭に、『aftersun/アフターサン』でサプライズで候補入りした若手のポール・メスカル、『生きる LIVING』のベテラン、ビル・ナイと欧州勢の健闘も光る。(文・今祥枝)
オースティン・バトラー 『エルヴィス』
『エルヴィス』で伝説的なロック歌手で俳優の故エルヴィス・プレスリーを熱演し、一躍賞レースに躍り出たバトラー。13歳でスカウトされ、ディズニー・チャンネルのテレビムービー『シャーペイのファビュラス・アドベンチャー』などに出演した。主演を務めたテレビドラマ「シャナラ・クロニクルズ」、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などを経て、『エルヴィス』では圧巻の歌唱力も披露。うれしい初のアカデミー賞主演男優賞ノミネートとなった。新作は『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編とキャリアは勢いに乗っている。ファレル、フレイザーの対抗としてサプライズ受賞となるか。
オースティン・バトラー
1991年8月17日生まれ
アメリカ・カリフォルニア州出身
主な出演作
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)
『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』(2017)
『屋根裏のエイリアン』(2009)
コリン・ファレル 『イニシェリン島の精霊』
アイルランドで多くのテレビドラマや映画に出演し、2000年の『タイガーランド』で注目され、『フォーン・ブース』や『マイノリティ・リポート』などアメリカ映画のヒット作に立て続けに出演した。以後も大作映画に多く出演する一方で、『アフター・ヤン』などのアートハウス系映画でも確かな演技力を発揮している。2022年も『THE BATMAN-ザ・バットマン-』『13人の命』などで大活躍。常連のマーティン・マクドナー監督作品『イニシェリン島の精霊』では、親友に突然絶縁を告げられ、理解できずに困惑する素朴な男性を熱演して賞レースを席巻中だ。アカデミー賞では初のノミネートで本命視されている。
コリン・ファレル
1976年5月31日生まれ
アイルランド・ダブリン出身
主な出演作
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)
『アレキサンダー』(2004)
『フォーン・ブース』(2002)
ブレンダン・フレイザー 『ザ・ホエール』
1991年に映画デビューし、ディズニーアニメーションの実写版リメイク『ジャングル・ジョージ』でブレイク。『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』が大ヒットし、スターの地位を確立した。コミカルな味付けのキャラクターが持ち味だが、『ゴッド・アンド・モンスター』や『クラッシュ』ほかシリアスな演技にも定評がある。しかし、セクシャルハラスメントを受けていたことからうつ状態に陥り、2010年代は表舞台から遠ざかっていた。復活を遂げた『ザ・ホエール』では、体重が約270キロある男性の葛藤と壮絶な生き様を演じて圧巻。初のアカデミー賞候補にして、ファレルの対抗として受賞の可能性は十分にありそうだ。
ブレンダン・フレイザー
1968年12月3日生まれ
アメリカ・インディアナ州出身
主な出演作
『センター・オブ・ジ・アース』(2008)
『ハムナプトラ』シリーズ(1999、2001、2008)
『ゴッド・アンド・モンスター』(1998)
『ジャングル・ジョージ』(1997)
ポール・メスカル 『aftersun/アフターサン』
ダブリンのトリニティ・カレッジにあるリル国立演劇芸術アカデミーで演技の学士号を取得。2017年に舞台「グレート・ギャツビー」で俳優デビューを飾った。以後はアイルランドやイギリス・ロンドンの舞台でも活躍し、2020年のアイルランドのテレビドラマ「ふつうの人々」の演技で英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞を受賞しブレイクした。翌年には『ロスト・ドーター』に出演。カンヌ国際映画祭で絶賛された『aftersun/アフターサン』では、11歳の娘の若い父親を演じてアカデミー賞初ノミネートの快挙となった。演技力には定評のあるメスカルは、映画界でのキャリアが急上昇する中でさらに弾みをつける。
ポール・メスカル
1996年2月2日生まれ
アイルランド・キルデア州出身
主な出演作
『ロスト・ドーター』(2021)
ビル・ナイ 『生きる LIVING』
ギルフォード演劇学校で演技を学び、テレビを中心に、主に脇役として独特の存在感を発揮してきた。転機となったのは、笑顔の少ない表情ながらユーモラスで味わいのある演技が評判を呼んだ『ラブ・アクチュアリー』だ。以後、『アンダーワールド』シリーズほかハリウッド大作にも出演する一方で、アートハウス系映画の味わい深い人間ドラマなどでも活躍している。黒澤明の不朽の名作のリメイク『生きる LIVING』では、仕事一筋に生きてきた紳士的な公務員が余命を宣告されて、人生を見つめ直す姿をしみじみと演じていぶし銀の魅力を発揮。キャリアの集大成のような大役を見事に演じきり、初のアカデミー賞ノミネートとなった。
ビル・ナイ
1949年12月12日生まれ
イギリス・サリー州出身
主な出演作
『MINAMATA-ミナマタ-』(2020)
『マリーゴールド・ホテル』シリーズ(2011・2015)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006)
『ラブ・アクチュアリー』(2003)
第95回アカデミー賞授賞式は、3月13日(月)午前7時30分よりWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて生中継