『シン・仮面ライダー』池松壮亮&浜辺美波&柄本佑の挑戦 庵野秀明監督が撮る絶対的な安心感
東映の人気特撮「仮面ライダー」(原作・石ノ森章太郎)の生誕50周年記念作品として、2021年4月3日に製作が発表された映画『シン・仮面ライダー』。脚本・監督の庵野秀明が“原点”へのリスペクトを込め、 現代を舞台に新たな「仮面ライダー」の物語をつづる。仮面ライダーとなる主人公・本郷猛を演じる池松壮亮、ヒロイン・緑川ルリ子役の浜辺美波、仮面ライダー第2号となる一文字隼人役の柄本佑が、庵野監督との撮影や作品への期待を語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥、写真:高野広美)
■庵野秀明の存在が大きかった
Q:『シン・仮面ライダー』で最も惹かれた部分はどこですか?
池松壮亮(以下、池松):全ては庵野秀明監督の存在と仮面ライダーとのコラボレーションによるものです。庵野さんが満を持して初代「仮面ライダー」を現代に蘇らせるということで、その企画の持つ事件性にドキドキしましたし、脚本を読んでみると、オリジナルとはまたさらに違う庵野バージョンとして、50年前のものからアップデートされたものになっていました。偉大な功績に心から敬意をはらいつつ、恐れず、堂々と大胆なスタイルを選択し、壮大な物語が広がっていました。
浜辺美波(以下、浜辺):ヒーローの起源を見てみたいということが一番でした。『仮面ライダー』シリーズでは、ヒーローという存在がすでに確立されていて、悪と戦う起源を知らなかったので、『シン・仮面ライダー』では、今まで考えたことがなかった感情であったり、根本的な部分が描かれるんだろうと想像したりして、ヒーロー好きとしてはたまりませんでした。
柄本佑(以下、柄本):やはり、庵野監督の存在が大きかったです。監督の現場を見てみたいというのもありましたし、私が「エヴァンゲリオン」世代でもあったので、庵野さんが監督されてどんな作品が完成するのか、興味がありました。また、映画ファンとしてのミーハー心となりますが、「庵野秀明を生で見たい」という気持ちもありました。
Q:庵野監督と初めて対面した時のことは覚えていますか?
池松:最初にお話ししたのは、Zoom会議でした。庵野さんと同い年で親交の深い塚本晋也さん(※塚本は『シン・仮面ライダー』にも出演)が撮った、僕も出演している映画『斬、』の話を二人でしました。庵野さんは映画が大好きな方なので、様々なジャンルが違う映画の話をしていました。
浜辺:合同会見前にも宣伝スチールの撮影や衣装合わせで顔は合わせていたのですが、初めてしっかりお会いしたのは、2021年9月の「シン・仮面ライダー対庵野秀明展」合同記者会見だったと思います。会見の最後に「これからよろしくお願いします」とあいさつをしました。庵野監督から「東宝のカレンダーを見て、浜辺さんを選んだんだよ」と言われたのですが、その時の監督の印象がもともと抱いていた印象と違いました。
柄本:庵野監督にお会いできると舞い上がっていたので、初対面で話した内容はあまり覚えていません。浜辺さんがお話ししていたように、もっと寡黙であまりお話しされず、笑顔も少なめな方かなと思っていたのですが、ノリに乗るとかなりお話しされる方だったので、非常に親しみやすい印象でした。
■洗練された仮面ライダーのスーツ
Q:『シン・仮面ライダー』で演じるキャラクターについて、言える範囲で教えてください。
池松:石ノ森章太郎先生が描いた「仮面ライダー」の本郷猛が、庵野監督ならではのバージョンになっています。秘密結社SHOCKER(Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling)のオーグメンテーションを受けることによって仮面の男として生きる運命を背負ってしまう主人公です。より深い損失感と哀しみを感じました。世界にはびこる力や暴力によって、迷い、葛藤しながらも、正義や暴力、変身することを克服していきます。
浜辺:緑川ルリ子は、SHOCKERで生まれ、育てられた、本郷にオーグメンテーションを施した緑川弘博士の娘で、仮面ライダーと共に悪に立ち向かう役柄です。衣装もかなり構成員チックで、ジャケットも羽織るなど、かっこいいヒロイン像のようなイメージです。SHOCKERの構成員で仮面ライダーの仕組みにも詳しいので、博識で導く立場になっていると思います。
柄本:一文字隼人は、SHOCKERのオーグメンテーション手術を受けて、第2バッタオーグとなる元ジャーナリストです。後に“仮面ライダー第2号”を名乗ることになります。
Q:(池松さん&柄本さんへ)仮面ライダーのスーツを実際に着てみた感想は?
池松:自分からは着ている姿を自分で見ることができないので、佑さんの姿を見て「うわっ、仮面ライダーがいる!」と思っていました(笑)。
柄本:全く同じです。オリジナルの凄さもありつつ、非常に現代風にアレンジされている部分が結構あります。やっぱりライダースーツはかっこいい! マスクも含めて、洗練されているんですよね。
池松:あのライダースーツに行き着くまでの過程が凄まじいんです……。庵野さんをはじめとするスタッフの方々が、今回の造形に至るまでに凄まじい過程を経ています。
■わからないことが逆に楽しい
Q:庵野監督の演出で印象的だったことはありますか?
柄本:カメラの台数が、普通の現場では考えられないほど著しくありました。メインカメラが2台ほど、7Dカメラが3台ほど、スマートフォンが10台近くありました。フルで稼働すると目の前に15~20台ほどあるので、他の現場では味わえない感覚。庵野監督でなければできないことだと思います。
池松:庵野節ではないことが、一回もなかった気がします。他の作品では、リテイクや追加撮影はこの国ではほとんどないことですが、『シン・仮面ライダー』は(本撮影が終わった)昨年12月からも撮り続けています。そういった作り方がこれだけの商業作品でできるのは、今日本で庵野さんだけだと思います。
浜辺:セリフや動きで「違う」「もっとこうした方がいい」ということはあまり言われませんでした。庵野監督の中で方向性などが決まっているからこその絶対的な安心感があったので、現場でOKが出て不安な気持ちで帰宅したり、「今の(演技は)大丈夫だったかな」と思うことなく、全員が前に向かって進んでいる感覚がありました。
Q:ご自身のキャリアにおいて『シン・仮面ライダー』はどのような作品として刻まれていくと思いますか?
池松:自分の中では、公開していろいろと総括してからでないと何も言えないくらい漠然としている状態です。まだ出来上がりを見ていませんし。ただただ長い長い闘いをこのチームで終えたことを今は誇りに思っています。これから公開に向けて、自分がこの作品に携われたことにどんな意味があったのか、少しずつ考えていこうと思っている最中です。
浜辺:本当に凝って作られた作品で、自分が出演していないシーンも想像がつきません。私自身もわからないことが多いのですが、逆にそれが楽しみでもあります。公開が近づけば近づくほど、いろいろな方に観ていただきたいという想いは強くなっていますし、初日は仮面ライダー好きな弟をはじめ、家族も呼びたいなと思っています。
柄本:完成した作品を観て、ようやく「自分が仮面ライダー第2号を演じたんだ」ということを実感できるのではないかと思っています。今回のお仕事がどうだったのか、まだ客観的には考えられていませんが、確実にいち映画ファンとして、庵野組を体験しているという喜びは日々感じています。
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日本を代表するクリエイター・庵野秀明が描く『シン・仮面ライダー』の世界観に飛び込んだ三人。庵野監督と過ごした日々を笑顔で語り合う姿は、まさに仮面ライダーに憧れた少年・少女のようだった。果たして、庵野監督が現代に向けて放つ『シン・仮面ライダー』はどんな作品なのか。キャスト・スタッフが全身全霊で製作した映画の全貌が、間もなく明かされる。