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【徹底解説】新DCユニバース、ジェームズ・ガンが目指す未来とは 旧体制キャストの今後は?

新DCユニバースを発表したジェームズ・ガン(中央) - Matt Winkelmeyer / Getty Images / Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 DCスタジオ共同CEOのジェームズ・ガンが1月31日(現地時間)、今後8~10年にかけて展開する新たなDCユニバース(DCU)の構想と作品ラインナップを発表した。第1章として計10本の映画・ドラマが明かされたが、ユニバースの全体図とその特徴はどうなっているのか。公式発表やガンの発言をもとに整理する。(文・構成:平沢薫)

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新体制に関するヒントだった?「キングダム・カム」の画像投稿

 昨年10月26日(現地時間)、ジェームズ・ガンのDCスタジオ共同CEO就任が決定した。その約1か月後となる12月1日(現地時間)、ガンがツイートしたのは、名作コミック「キングダム・カム」の画像と「プランを作成中」(Making plans.)の一言。この投稿はすぐさま、新体制に関するヒントではないかと注目を浴びた。実際のラインナップを見ると、やはりこのツイートは新ユニバースの予告だったように見える。

 「キングダム・カム」は1996年刊行のDCヒーロー大集合コミック。世界が新世代ヒーローたちにより混乱に陥り、それを鎮圧しようとするワンダーウーマンの声かけで、引退していたスーパーマンが復帰。バットマンなど他のヒーローにも協力を求めるが、彼らには各自の価値観があり、共に行動することにはならない。刊行当時、「バットマン:ダークナイト・リターンズ」系のダークな色調の作品が多かったDCコミックス界に、アレックス・ロスの画の鮮やかな色彩と緻密なタッチが新たな息吹を吹き込んだ名作だ。

 ガンのツイートの意味はいくつか考えられる。作品同様、DCユニバースに新たな風を吹き込む宣言でもあるだろう。または、単純に今後のDC作品は最終的にスーパーヒーロー総出演の「キングダム・カム」映画化を目指すという予告にもとれる。そして、今後のDCユニバースが「キングダム・カム」のような「もしもの世界」の物語を描くことを示唆しているのではないだろうか。

 「もしもの世界」を描くDCコミックスシリーズとして、「エルスワールド」が存在する。「キングダム・カム」もそのうちの1作だ。映画『ザ・フラッシュ(原題)/ The Flash』の原作の一つと言われている、「フラッシュポイント」もエルスワールド作品。今回の発表では、DCユニバースから独立した作品群(『THE BATMAN-ザ・バットマン-』『ジョーカー』等)を「DCエルスワールド」と呼ぶことが判明したが、これは原作シリーズから取ったものだろう。

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人気ヒーローの“新たな側面”に迫る

 その視点で見ると、発表された10作品中6作品は、すでに映像化されている人気ヒーローを別の視点から新たに描き直す作品と捉えることもできる。

 映画では、オリジンストーリーを描かない『スーパーマン:レガシー(原題) / Superman: Legacy』、崩壊するクリプトン星で育ったスーパーガール/カーラが主人公の『スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー(原題) / Supergirl: Woman of Tomorrow』、バットマンとロビンの親子関係に迫る『ザ・ブレイブ・アンド・ザ・ボールド(原題) / The Brave and the Bold』、単独ドラマも制作されたモンスター譚『スワンプ・シング(原題) / Swamp Thing』の4本。

 ドラマシリーズでは、二人のグリーン・ランタンが登場するミステリー「ランタンズ(原題) / Lanterns」と、ワンダーウーマンの故郷を舞台にした「パラダイス・ロスト(原題) / Paradise Lost」の2本。どの作品も、人気ヒーローが主役もしくは彼らが育った場所にフォーカスしており、設定はかなりユニークである。

 新作との重複を避けるためか、同じキャラクターが登場する映画やテレビシリーズは次々とキャンセルされた。映画では『ワンダーウーマン』第3弾、『ブラックアダム』続編、ヘンリー・カヴィル主演の『マン・オブ・スティール』新作が白紙に。ドラマでは「THE FLASH/フラッシュ」「バットウーマン」「レジェンド・オブ・トゥモロー」「Titans/タイタンズ」などが終了する。「スーパーマン&ロイス」についても、ガンが「残り1~2シーズン」と終わりを示唆している。

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個性派ヒーローにもフォーカス

 残り4作品は、中心人物がいわゆる正統派ではないユニークなキャラクターたち。例えば、ガンが特に力を入れる映画『ジ・オーソリティ(原題) / The Authority』に登場する主役チーム「ジ・オーソリティ」のメンバーは、原作コミックだと元ヴィランが所属しており、目的のためなら手段を選ばない。

 ドラマ3作品もなかなかの顔ぶれ。「ブースター・ゴールド(原題) / Booster Gold」の主人公は、未来からやって来てスーパーヒーローのふりをする負け犬。「ピースメイカー」シーズン1と2の間の物語を描く「ウォラー(原題) / Waller」は、鬼司令官アマンダ・ウォラーが主役となる。また、アニメシリーズ「クリーチャー・コマンドズ(原題) / Creature Commandos」の主役チームは、『スーサイド・スクワッド "極”悪党、集結』のウィーゼルや、フランケンシュタインの花嫁らクセが強すぎる面々だ。DCではスーサイド・スクワッド、マーベルではガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと、常にはみ出し者たちを描いてきたガンらしさ全開のキャラクターが集まっている。

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ユニバース全体に見られる、2つの大きな変化

 発表では、ユニバース全体についての大きな変化が2つあった。1つ目は、映画・ドラマ・アニメが同じ世界観になったこと。同じキャラクターは、どのプラットフォームでも同じ俳優が演じる。これまでのDCは、映画とドラマは別モノで、同じキャラクターでも別の俳優が演じていた。この変化によって、登場人物が複数の作品を横断して登場するなどのクロスオーバーが実現しやすくなる。

 2つ目は、作品がチャプター(章)として括られること。マーベルでいうフェーズやサーガのような役割だろう。チャプター1(第1章)の名称は「Gods and Monsters(神々と怪物たち)」。チャプターがいくつか集まって一つの壮大な物語になる仕組みで、Comicbook.comによれば、チャプター1とチャプター2で一つの物語が描かれ、その後はまた別の物語になるという。

 また、ユニバース全体の流れも判明。『シャザム!~神々の怒り~』に続く『ザ・フラッシュ(原題)』で、現在の世界観がリセットされる。次の『ブルー・ビートル(原題)/ Blue Beatle』から新たなDCユニバースが始まり、『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(原題)/ Aquaman and the Lost Kingdom』が続く。

比較的新しいコミックを参照

 もう一つの特徴は、原作となるコミックが新しいこと。過去のDC映画に影響を与えたといわれる名作「バットマン:ダークナイト・リターンズ」は1986年刊行、「ウォッチメン」は1986~1987年刊行だった。しかし、ガンが今回言及したコミックは、どれも2000年以降の作品ばかり。トム・キングによる「スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー(原題)」の同名コミックはなんと2022年刊行、「パラダイス・ロスト(原題)」の参考とみられる「Wonder Woman Historia : The Amazons(原題)」は2021年刊行という新しさだ。

 また、『ザ・ブレイブ・アンド・ザ・ボールド(原題)』の原作として紹介されたグラント・モリソンの「バットマン・アンド・サン」は2006年、「バットマン&ロビン」は2009年刊行。スコットランド出身のグラントは、「バットマン:アーカム・アサイラム」などで知られる異才。2021年刊行の「Superman and the Authority(原題)」も好評で、映画『ジ・オーソリティ(原題)』は同コミックを意識している可能性がある。こうした参照コミックの新しさを見ても、ガンが過去のDC作品とは別の世界観を意識していることが見えてくる。

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旧体制のキャストはどうなる?

旧体制の『ジャスティス・リーグ』キャスト - Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ガンはキャスティングについても、いくつか重要な発言を残している。まず、新DCユニバースには、旧体制で活躍したヘンリー版スーパーマンと、ベン・アフレックのバットマンは存在しない。ワンダーウーマン役のガル・ガドットとは話し合いを行い、本人は続投に意欲的だが、彼女の今後は未定だ。また、ジェイソン・モモアがアクアマンと並行してロボを演じるという噂は否定している。

 一方、ガンが監督したマーベル映画のキャストたちが、DC映画に出演する可能性もある。ガンはツイッターで「キャスティングしなくてはいけない役は何百もある。まったくの新人も、これまで一緒に組んだ俳優たちも、初めて組む俳優たちもいるだろう」と発言。今後のキャスティングにも要注目だ。

 ガン監督による新たなDCユニバースの構築はまだ始まったばかり。これから何が起きるのか、まだまだ目が離せない。

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