魔性の女論!好きになってはいけない女とは?
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ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、『オールド・ボーイ』『お嬢さん』のパク・チャヌク監督が、殺人事件を追う刑事とその容疑者である被害者の妻と愛し合うことを許されない2人が、運命にあらがいながらもひかれあう姿を描き、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞した『別れる決心』。ウーマンの2人が語る、好きになってはいけない悪女とは? (取材・文:森田真帆)
今回の映画は『別れる決心』です。
ある滑落事故をきっかけに刑事と被疑者として出会った男女が、疑念を抱きながらも惹(ひ)かれ合う。『お嬢さん』などでパク監督と組んできたチョン・ソギョンが同監督と共同で脚本を担当。『黒く濁る村』などのパク・ヘイルと『ラスト、コーション』などのタン・ウェイが主演を務め、『死なない夫』などのイ・ジョンヒョン、『ソウル・バイブス』などのコ・ギョンピョらが共演。
難解だけど後半どんどんオモろくなる
中川パラダイス(以下、中川):なんか舞台にあるような作りの映画やったな。同時進行でストーリーが進んでいくみたいな。前半のフリがかなり長いけど、後半になって一気に巻き返されていく感じはめっちゃオモろかったしすごいよ。さすがカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した作品だけあるわ。
村本大輔(以下、村本):無音の中で淡々と繰り広げられていく感じって、韓国ならではの気持ち悪さがあるよな。『パラサイト 半地下の家族』もそうやったけど、変に盛り上げる派手な音楽とかもなくてさ。静かやねん。あおってこず、多くを語らず、感覚で訴えてくる感じがめっちゃ良かった。
中川:全体的に説明あんまりないやん。だから人に想像させる余韻を残してる感じやったよね。あとカメラの視点がめっちゃ斬新やったな。走ってるシーンでも、その主人公の視点やったりしてて面白かったわ。映画見てるように思えんくて、なんかゲーム見てるみたいな感じやった。
村本:中川の息子に見せたら意外にわかるんちゃう(笑)?
中川:いや、ほんまに息子のほうが、柔軟に受け入れられそうな気がするわ。
だめだからこそ燃え上がる関係
中川:犯人と刑事の関係なんて、絶対に惹(ひ)かれ合っちゃあかんっていうのがあるから、だからこそって感じはあるよね。しかもちょっとかわいくてかわいそうな感じもしてさ、なんかさとう珠緒みたいな。
村本:さとう珠緒って、例えがわかりづらいねん!
中川:なんか魔性の女っていうかさ。あざといぶりっ子みたいな。
村本:この映画のヒロインは、ぶりっ子感ゼロやったやんか。しかも今あざといとか、ぶりっ子って言ったら田中みな実とかやろ。なんでさとう珠緒やねん!
中川:このヒロインって、極妻とまでは言わないけどさ、ちょっと反社っぽい男のところばっかりを渡り歩いてる感じの女性やん。若い頃ようおったわ、めっちゃ美人なのに彼氏がいっつもヤンキーやなっていう女。
村本:何を考えているのかわからんミステリアスな感じの女性よな。
中川:まあ、僕はああいう人より、ニコニコしているギャルみたいな子の方がええけどね。
村本:中川も昔、ワゴンでやってきたミステリアスな女性ににらまれとったやん。
中川:いやそれ、オレが結婚する前に付き合ってた子の妹やわ。ミステリアスちゃうくて、ただの姉ちゃんを捨てられた恨みや。
絶対に好きになっちゃあかんタイプの女
村本:あの刑事もさ、ヒロインのことを警戒したり、気にしたりすればするほど、どんどん好きになっていくんやろな。
中川:またさ、疑いが晴れたあとの、やっぱりかい! っていう裏切られ感も大きいよね。もう感情がどんどん深みにはまっていく感じが怖かった。
村本:一番疑いたくない人を疑うしかなくて、信じてあげたいけど信じられへんってめっちゃつらいよな。
中川:せやねん。2人の会話がさ、ずーっとボタンの掛け違いが続いているから、切ないねん。あのヒロインめっちゃすごいなって思うところが、ずっと終始嘘ついてないよっていう空気感も出すし、ずっと嘘ついてる感じもあるし。嘘にも見えるし、本当にも見える。めっちゃ魔性。
村本:オレも、見れば見るほど、あのヒロインのことめっちゃ好きになっとったもん。
中川:ほんまに?
村本:お前は?
中川:こんな女の人好きになって振り回されて、寝られへんくなってとか、しんどーって思うわ。しんどすぎて絶対に嫌やわ。でも昔嫁と付き合ってるときに、難波の駅でバイバイして、その後ろ姿をこっそり見てたら、すぐに誰かに電話しとって、そのあとエスカレーターを上がってきよってさ。僕見てめっちゃびっくりしてたの思い出したわ。やばい、うちの嫁が一番ミステリアスやったわ!
村本:オレは人のことを疑う人間やから、振り回されていると言うより、勝手に自分が振り回ってるのよ。向こうは岩のごとく動いていないのに、勝手にいろいろ考えたり疑ったり。付き合う女はみんな容疑者。女のことみんなホシって呼んじゃう。何考えるかわからんやつが一番タチ悪い。
中川:殺したか殺してないんかようわからん状況で、どっちなんやろな。
村本:刑事は無実の人間を疑うから嫌われるって言うセリフがあったけど、どんなに好きでもやっぱり疑ってしまうって仕方ないよね。好きな女が、容疑者かもしれん、疑うけれども、惹(ひ)かれちゃう、でも疑っちゃうみたいなね。芸人やったら笑わすのが職業病やけど、刑事相手やと疑うことが職業病やから、最悪やなって思うわ。
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『別れる決心』2月17日公開
映画『別れる決心』公式サイト
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ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。