徹底予習!『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』を観る前に
カーアクション映画の最高峰ともいえる人気シリーズの最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』が、いよいよ5月19日より公開! 全世界累計興行収入9,000億円突破のメガヒットシリーズの最終章の始まりを描く本作は、これまでのシリーズとの繋がりが最も深い作品で、シリーズの流れや主要キャラクターを知っていた方がより楽しめる。最新作を観る前に、押さえておくといいポイントを徹底予習しておこう。
『ワイルド・スピード』シリーズとは
カーアクションを主軸にした『ワイルド・スピード』シリーズは、シリーズ初期のストリートレーサーと犯罪組織の繋がりを追うクライムサスペンス的な作風から、次第にド派手なカーチェイスを交えたスパイアクションやチームアクション的な作風に進化。毎回、車を使ったアクションの限界突破に挑戦し、空からのダイブ、氷上の疾走、宇宙に飛び出すといった、多種多様な新しいカーアクションを創造してきた。さらには格闘アクションやガンアクションも絡め、いまや世界最高のアクション映画シリーズの一つだ。
大筋としては、強盗チームを率いていたドミニク・トレット(通称:ドム/ヴィン・ディーゼル)と、彼らを追う潜入捜査官のブライアン・オコナー(故ポール・ウォーカーさん)が、紆余曲折を経て共闘し、友情を育むこととなる。個性的な仲間たちも加わり、ファミリーと呼べる新たなチームとなった彼らは、悪党の大金を奪うためやファミリーに迫る危機を回避するため、または、アメリカ政府の秘密報組織に協力するため、犯罪集団と激闘を繰り広げることになる。
シリーズを時系列で並べてみる
長編シリーズとしては、最新作とスピンオフも含めて計11本。実は1作だけ時系列が前後している作品があるため、東京を舞台にした2006年公開のシリーズ3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』を、2013年公開のシリーズ6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』の後に見ること。シリーズを時系列で並べると、下のようになる。
『ワイルド・スピード』(2001年)
『ワイルド・スピードX2』(2003年)
『ワイルド・スピード MAX』(2009年)
『ワイルド・スピード MEGA MAX』(2011年)
『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013年)
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006年)
『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)
『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017年)
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)※スピンオフ作品
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(2021年)
『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)
時系列で見ると理解しやすくなるのが、ドムのファミリーであるハン・ルー(サン・カン)について。ハンは、シリーズ6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』で、ファミリーの一員かつ恋人だったジゼル(ガル・ガドット)を亡くしたことから一人で東京に旅立つが、自身も悲劇にあう。そのハンが東京で何をしていたかが、シリーズ3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で描かれている。亡くなったはずのハンは後に『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』で復活するが、公開順だとハンが何度も生き返っているように見える。また、時系列で見るとハンを殺害したことで因縁のお相手となったデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)との関係も理解しやすい。
ファミリーたちを総まとめ
ドムは、仲間たちを身内と同様のファミリーと呼び、彼らは固い絆で結ばれている。ドムの相棒で妹のミア(ジョーダナ・ブリュースター)の夫でもあるブライアンは、演じていたポール・ウォーカーさんの事故死により登場できなくなったが、劇中ではミアとの間に生まれた二人の子どもを静かに育てるため、ファミリーの仕事から離れた設定になっている。最新作でもファミリーのバーベキューのシーンでミアの席の隣が空いているのは、ブライアンのため。劇中でブライアンが生き続けていることを感じさせてくれるシーンは、毎回ファンにとって胸熱だ。
ファミリーは一部メンバーを除き、車の運転技術に長けたスペシャリストたち。レティ・オルティス(ミシェル・ロドリゲス)は、ドムの最愛の妻で最強のパートナー。車だけでなくバイクの運転も達人級で、腕っぷしも強い。ローマン・ピアース(タイリース・ギブソン)は、陽気なお調子者だが、意外なところで力を発揮するムードメーカー。テズ・パーカー(クリス・“リュダクリス”・ブリッジス)は、頭の切れる超一流のメカニックマン。テズとローマンは絶妙な掛け合いを見せる凸凹コンビ。ハンは、冷静沈着な頼れる男。お菓子好きで東京在住経験があるため、近年は亀田製菓の柿の種を愛好している。ラムジー(ナタリー・エマニュエル)は、天才ハッカー兼プログラマーで、世界最強の追跡装置“神の目”の発明者。なお、新参メンバーの彼女だけは車に関する技術や知識は発展途上中だ。
ドムの実際の親族としては、弟で一時は敵対したこともあるジェイコブ・トレット(ジョン・シナ)、祖母のアブエリタ(リタ・モレノ)、息子のリトルBことリトルブライアンもいる。リトルブライアンは、レティが亡くなったと思われていた時期に、ドムと女性警官だった亡きエレナ・ネベス(エルサ・パタキ)の間に授かった子ども。レティは義理の母となる。ちなみに、故ポール・ウォーカーさんの娘メドウ・ウォーカーのカメオ出演も話題となっており、彼女のInstagramには機内のような場所で撮影した様子が投稿されている。
ファミリーの協力者たち
ドムたちは、過去の犯罪歴の抹消やファミリーに及ぶ危機回避のため、アメリカ政府の組織などに協力することがある。ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)は、DSS(アメリカ外交保安局)のスゴ腕捜査官。身体能力に長けた肉体派で、強い正義感を持つ。登場時は逃亡犯となっていたドムたちを逮捕しようとする存在だったが、部下を殺したブラジルの麻薬組織や腐敗したブラジル警察に憤り、ドムたちと手を組んで協力関係となっていった。
ミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)とその部下のリトル・ノーバディ(スコット・イーストウッド)は、アメリカ政府の秘密諜報組織のエージェント。政府か公式に関与できない事件などにドムたちの協力を求めてくる。最新作にはテス(ブリー・ラーソン)ら新たなエージェントも登場するが、彼らも味方となるかは明かさないでおこう。
知っておきたいかつての敵たち
かつて敵だった者たちも、ドムたちファミリーと緊張関係にある。デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)は、英国の元特殊部隊員および元秘密諜報員で、あらゆる能力に長けた最強の殺し屋。弟である国際犯罪組織を率いていた冷酷非情なオーウェン・ショウ(クリス・エヴァンス)がドムたちに瀕死の重傷を負わされたため、復讐しようとする。この家族も絆が強く、母親のクイニー・ショウ(ヘレン・ミレン)も登場。ショウ一家はドムたちと激闘を繰り広げたが、後に協力関係となる。
サイファー(シャーリーズ・セロン)は、戦闘能力も高い天才ハッカーのサイバーテロリスト。冷酷無比な策略家で、サイコパス的な怖さを持つ。ドムを従わせるため、元恋人だったエレナを目の前で部下に射殺させたことがある因縁深い敵。最新作ではデッカードとクイニーが再登場するほか、サイファーの来訪がドムの平穏な生活の終了を告げることになる。
新キャストは最狂の悪役
そして新たな敵としてファミリーの前に立ちはだかるのが、ダンテ(ジェイソン・モモア)。彼は2011年のシリーズ第5作『ワイルド・スピード MEGA MAX』に登場したブラジルの麻薬王レイエス(ヨアキム・デ・アルメイダ)の息子。同作クライマックスのブラジル警察署内の巨大金庫を運び出すカーチェイスシーンで、ドムとブライアンを追いかけるレイエスの部下たちの中に居た設定。父親を殺され、自身も殺されかけたことから、ドムたちに家族を失う苦しみを与えようと、残酷な復しゅうを仕掛けてくる。ホブスのような強靭な肉体に、サイファー以上の狂気を有し、笑えないユーモアを発しながら、ハイテンションで豪快に破壊や殺人を繰り返す。かつてない最狂・最悪の敵で、シリーズ最終章にふさわしい魅力的なヴィランだ。
ダンテの策略により、ファミリーは分断。皆が苦境に陥り、その危険はリトルブライアンにも及ぶ。ファミリーの誰かが犠牲になるかもしれない危機の中、ロサンゼンルス、ローマ、リオデジャネイロ、ポルトガルを股にかけた最後のミッションが開幕する。
今回も全編に斬新でド派手なアクションと驚愕の展開が満載で、最終章が2部作となるのか、3部作となるのかも気になるが、とにかく次作への期待が高まるエンタメ超大作となっている。(文・天本伸一郎)