完全ネタバレ!『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』徹底解説
大ヒット映画『ワイルド・スピード』シリーズが、最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』で最終章に突入した。同作に続く後編『ファストX パート2(原題) / Fast X Part 2』(三部作になる可能性も)によって、壮大なサーガは完結すると言われている。ここでは、『ファイヤーブースト』に散りばめられた小ネタや、サプライズを徹底解説していく。(文・構成:村山章)
※本記事はネタバレを含みます。映画『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』とのリンク
『ファイヤーブースト』のヴィランとしてファミリーの前に立ちはだかるのは、5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』のボスキャラだったリオデジャネイロの麻薬王レイエス(ジョアキム・デ・アルメイダ)の息子、ダンテ(ジェイソン・モモア)。劇中では「10年前」というテロップがドカンと映し出され、『MEGA MAX』で世界中の度肝を抜いた巨大金庫を引きずり回すカーチェイスが再現されている。
ダンテは父レイエスらと一緒にドミニク(ヴィン・ディーゼル)たちを追いかけていたが、車に巨大金庫をぶつけられ、その衝撃で海に投げ出されてしまう。しかし『MEGA MAX』を覚えている人は「あれれ、ダンテなんていましたっけ?」と首を傾げるかもしれない。
実はこのシーン、『MEGA MAX』の映像を流用しただけでなく、未使用映像を倉庫から引っ張り出し、当時と同じフィルムを使って新規撮影した素材を組み合わせて作られた。改めて『MEGA MAX』を観直してみると、ダンテの姿は見えないものの、ダンテが乗っていたマシンガン搭載の車が海に落ちるところまでしっかり映っている。『ファイヤーブースト』は「あの車は実はダンテが運転していました!」という豪快な後づけ設定から物語が広がっていくのだ。
ドムの祖母がいきなり登場!
シリーズ恒例のバーベキューシーンで、ファミリーの大切さについてスピーチしてくれるのが、今回初登場のアブエリータ。ドム、ジェイコブ(ジョン・シナ)、ミア(ジョーダナ・ブリュースター)三兄妹のおばあちゃんだ。
演じているのは、『ウエスト・サイド物語』のアニータ役でアカデミー助演女優賞に輝いたこともあるラテン系女優のレジェンド、リタ・モレノ。主演のヴィンは、以前からトレット家の祖母をリタに演じてほしいと公言しており、ついにシリーズ参入が実現した。
トレット家はこれで、ドム、ミア、ジェイコブ、アブリエータ、父ジャック、息子リトル・ブライアンの6名がシリーズに登場したわけだが、不思議なことにドムたちの母親について、具体的に語られたことが一切ない。今後、とてつもない大スターが突然「お母さんよ!」と姿を見せる可能性は高い。
ドムがリオで出会ったストリートレーサーの正体
ダンテと同じく本作でシリーズ初参戦したのは、リオデジャネイロのストリートレースでドムたちと対決するイザベル(ダニエラ・メルキオール)。ドムはひと目で、イザベルがかつての恋人・エレナ(エルサ・パタキー)の妹だと見抜く。エレナは『MEGA MAX』から8作目『ワイルド・スピード ICE BREAK』まで登場したリオの元警官で、夫をレイエスに殺された過去を持つ。
『MEGA MAX』をキッカケにドムと交際するも、6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』のラストで死んだと思われていたレティ(ミシェル・ロドリゲス)が戻ってきたことで身を引き、密かにドムとの息子リトル・ブライアンを産んでいたのだが、『ICE BREAK』でサイファー(シャーリーズ・セロン)に誘拐され、殺害されてしまった。
脇役まで大切に育てるのが『ワイスピ』シリーズの伝統だが、エレナに関しては「ちょっと都合のいい女扱いがすぎたのでは」という批判もある。精神的にエレナの後を継ぐであろうイザベルは、今後の活躍次第で、エレナにまつわるモヤモヤへの解答になるのかもしれない。
“二人のアクアマン”が『ワイスピ』で共演
『ファイヤーブースト』では、失踪したミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)に代わり、新キャラクターのエイムス(アラン・リッチソン)が秘密諜報組織エージェンシーを統率することになった。エイムスは元犯罪者であるドミニクらファミリーを嫌悪し、テロリスト扱いして追い詰める。しかし終盤で、実はレイエスの犯罪組織にいたダンテの仲間だったことが判明する。
エイムス役のリッチソンは、ドラマ「ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~」で、トム・クルーズが映画版で演じていた元軍人ジャック・リーチャー役を務めた注目株で、かつてドラマ「ヤング・スーパーマン」でアーサー・カリー/アクアマンを演じたことがある。ダンテに扮したジェイソン・モモアは、言うまでもなくDC映画におけるアクアマン。はからずも二人のアクアマン俳優が『ワイスピ』で共演したことになる。
ジゼルも生きていた!衝撃のラスト
『ファイヤーブースト』では、2つの特大サプライズが矢継ぎ早に明かされ、観客を動揺&興奮させた。一つ目は本編ラスト、ファミリーの仲間だったジゼル(ガル・ガドット)の再登場だ。南極大陸の極秘施設から脱走したレティとサイファーを巨大潜水艦で迎えに来るという、ド派手なカムバックを果たす。
ジゼルは4作目『ワイルド・スピード MAX』で敵の麻薬組織の一員として登場するも、『MEGA MAX』以降はファミリーの一員となり、ハン(サン・カン)とも恋人同士になっていた。しかし『EURO MISSION』でハンの命を救う代わりに、飛行場の滑走路に落下し、命を落としたと思われていた。
前作『ジェットブレイク』では、死んでいたはずのハンが生きていたことになり、もう誰が蘇ってもおかしくない状態ではあった。『ワンダーウーマン』の主演に抜擢されて大スターになったガルが、ジゼルを再演するのは嬉しい驚きだった。
ジゼルがなぜ生きていたのか、どうしてサイファーと連携していたのか。一連のカラクリは次回作で説明されるだろうが、『ジェットブレイク』ではジゼルがミスター・ノーバディとも仕事をしていたことが明かされている。本作でレティとサイファーの脱出をお膳立てしたのは、ミスター・ノーバディの娘テス(ブリー・ラーソン)なので、ジゼルは現在もミスター・ノーバディと繋がっていて、テスの依頼でレティたちを迎えにやってきた、と考えるのが、今のところ一番理にかなった予想ではないだろうか。
不仲説のロック様も帰ってきた!ホブス復活の舞台裏
二つ目のサプライズとして、本編後のポストクレジットシーンで満を持して登場したのが、シリーズの人気キャラクター、ホブス捜査官(ドウェイン・ジョンソン)だ。『MEGA MAX』で初登場したホブスは、最初こそドムの逮捕に執念を燃やしていたが、『EURO MISSION』以降は彼と信頼関係を築き、また暗殺者デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)とのW主人公となったスピンオフ『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』も誕生した。
劇中で死んでいたわけでもないホブスが、なぜファン驚愕のサプライズだったのか? それは、シリーズのプロデューサーでもある主演のヴィンとの確執が理由で、「二度とシリーズには復帰しない」と公言していたからだ。
しかし、今回の敵ダンテが父レイエスの復讐を目的にしている以上、ホブスが登場しないなんてことはありえない。劇中でも説明されたように、最終的にレイエスを射殺した父の仇は、ドミニクではなくホブスだったのだから。
The Hollywood Reporter の取材でルイ・レテリエ監督が語ったところによると、レテリエ監督を含む大勢がホブス復帰のために動いていたものの、実現が決まったのは映画完成ギリギリの土壇場だったらしい。レテリエ監督は「帰ってきてほしいが、まずは作品を気に入ってもらうのが先」と、ほぼ完成していた『ファイヤーブースト』を観てもらい、ドウェインもようやく復帰を決意したのだという。
しかし、考えてみればドウェインはアメリカ最大のプロレス団体WWEのトップスターとして君臨した経歴の持ち主。WWEといえば、リング外での対立や舌戦をストーリーに持ち込むことでファンを盛り上げてきた歴史がある。ドウェインの「復帰は絶対にない」発言も、すべてを翻す電撃復帰も、プロレスラーならではの壮大なパフォーマンスだった気もしてくる。
すでに『ワイスピ』は、さまざまな対戦カードが矢継ぎ早に繰り出されるプロレス大会のような様相を呈している。シリーズ完結まで後1本とも2本とも言われているが、なんでもありのサービス精神でどこまで走り切るのか? 誰も観たことがないような大団円を見せてくれることを願うばかりである。
映画『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』は全国公開中
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