【ネタバレ解説】『ザ・フラッシュ』ここがスゴい!
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バットマン、スーパーマンと並ぶ人気DCヒーローが活躍する映画『ザ・フラッシュ』には、驚きのサプライズや、映画好きが唸る懐かしのオマージュが満載! マルチバースによって多数の隠しキャラクターが登場するほか、うっかり見落としがちな小ネタも隠されている。すでに映画を観た人も、ココを見逃したらもったいない!(文・平沢薫)
※本記事はネタバレを含みます。映画『ザ・フラッシュ』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
指輪も実写化!フラッシュの小ネタがスゴい
過去のDC映画では能力をほとんど見せなかったフラッシュ(エズラ・ミラー)が、本作ではスーパーパワーをフルに発揮している。そのパワーは原作コミックに基づくもの。光速を超える速度による時間移動、身体を構成する原子を高速で振動させて物体の原子の間をすり抜ける物質透過、高速移動による帯電を一気に放出する電撃のほか、傷がすぐに治癒する能力もコミックで描かれている。バリーが高速で走る時の大きく肘を曲げたポーズも、コミック版フラッシュの走行ポーズを意識したものだろう。
また、劇中に登場するフラッシュの指輪もコミックからの引用アイテムだ。指輪は、1956年からコミックに登場しているアイテムで、フラッシュのほぼ全員が所有している。さらに、バリーに父親からのコレクトコールがかかってくる時に登場するアイアンハイツ刑務所も、2001年刊行の「The Flash: Iron Heights」で初登場した名前。著者のジェフ・ジョーンズは、映画の原点となったコミック「フラッシュポイント」の著者でもあり、同作でもバリーの父親はアイアンハイツ刑務所に収監されている。
そして、見逃してはいけないのは、初代フラッシュの初実写映画化だ。コミックデビュー作「Flash Comics #1」(1940)版のフラッシュは、小さな羽がついたヘルメットをかぶった姿だった。その格好をしたモノクロの人物が、フラッシュが行く複数の時間軸が交差する場所に登場する。過去にこの姿のフラッシュが実写映画化されたことはなく、『ザ・フラッシュ』でしか見られない激レアモノだ。
30年ぶり復活!マイケル・キートン版バットマンへのオマージュがスゴい
本作で約30年ぶりに復活したマイケル・キートン演じるバットマン。彼が活躍したティム・バートン監督のバットマン映画『バットマン』(1989)と、『バットマン リターンズ』(1992)へのオマージュもてんこ盛りだ。予告編でもキートンが言う「バットマンだ(I'm Batman)」は、当時プリンスによる主題歌にもサンプリングされた名セリフ。『バットマン』冒頭で悪人たちを倒して「皆に私のことを話せ。私はバットマンだ」と名乗るシーン、密かに恋するヴィッキー・ヴェイルに自分の正体を明かそうとしてなかなか言えず、彼女が見ていない時に何度もこのセリフを練習するキュートなシーンも印象的だった。
また、ゾッド将軍(マイケル・シャノン)との戦いに繰り出す時に放つ「イカレまくってあの世へ行こうぜ(Let's Get Nuts)」も、キートン版バットマンの名セリフだ。『バットマン』では、ブルースがヴィッキーの家でジョーカーに立ち向かう時にこのセリフが登場した。
『ザ・フラッシュ』に登場するバットマン関連のアイテムも、バートン版にそっくり。秘密基地バットケイブ、バットマンの愛車バットモービル、モニターでいっぱいの机と椅子、モニターに映るバットマンのロゴも全てバートン版仕様。若いバリーが見つけてくる笑い袋は、『バットマン』でジョーカーが死んでも笑い声を響かせた時、彼の内ポケットに入っていたもの。あの時のアイテムがこんなところで登場するとは……。
劇中で活躍する飛行メカのバットウィングにも、バートン版へのオマージュが隠されている。フラッシュたちがバットウィングでスーパーガール救出に向かった際、バットマンが落下した後、月とバットウィングが一瞬重なり、バットマンのロゴマークになる。これは『バットマン』にも存在するシーンで、バットマンが、バットウィングに乗ってジョーカーの毒ガス入り風船を空の彼方に捨てた後、ジョーカーの元に向かう時に、わずかにバットウィングが月と重なってロゴマークになる。こんな一瞬のオマージュを見せるとは、アンディ・ムスキエティ監督、芸が細かい!
忘れてはいけないのが、キートン版バットマンが活躍する時に流れる音楽。ダニー・エルフマン作曲による『バットマン』のテーマが必ず鳴り響き、キートン版ファンの心を躍らせてくれる。
さらに、多数の時間軸が交錯する場所でサプライズ登場するニコラス・ケイジ版スーパーマンも、バートン監督に深く関わるキャラクターだ。バートン監督は『バットマン』2作の大ヒットの後、1990年代にケイジ主演のスーパーマン映画『スーパーマン・ライヴズ(原題) / Superman Lives』を企画していたことがあり、劇中のスーパーマンはこの史実が元ネタ。企画が実現しなかった経緯を描くドキュメンタリー映画「The Death of "Superman Lives": What Happened? (原題)」(2015)も制作されている。ケイジ版スーパーマンが、巨大なクモのようなクリーチャーと戦っているのも、プロデューサーだったジョン・ピーターズが、同クリーチャーを映画に登場させようとしていた史実を踏まえたものだ。
DCEUへのオマージュもたっぷり!
『ザ・フラッシュ』は、ザック・スナイダー監督が築いてきたDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)への敬意も忘れていない。ゾッド将軍の宇宙船や兵器は、スナイダー監督が手がけたスーパーマン映画『マン・オブ・スティール』と同じ。アンチュ・トラウェ演じるゾッド将軍の副官ファオラ・ウルも再登場するほか、スーパーガールが身につけるスーツは、表面のテクスチャー、素材感、色調全てがヘンリー・カヴィル版スーパーマンにそっくりだ。
DCEUで聞いたことがあるセリフや都市も再登場している。過去へ戻ったバリーが、初めての戦闘参加にビビる若いバリーにかける「1人ずつだ」というアドバイスは、『ジャスティス・リーグ』で戦闘経験がなかったバリーがバットマンからもらった助言と同じだ。
さらに、バットマン関連の小ネタも仕込まれている。冒頭でベン・アフレック版バットマンが悪人を追跡しながら「ファルコーネの息子」と放つが、このファルコーネは恐らくコミックの有名悪役カーマイン・ファルコーネだろう。ファルコーネは過去に、クリストファー・ノーラン監督作『バットマン・ビギンズ』でトム・ウィルキンソンが、マット・リーヴス監督作『THE BATMANーザ・バットマンー』でジョン・タトゥーロが演じている。
超豪華!カメオ出演者がスゴすぎ
『ザ・フラッシュ』では、DCファンを唸らせる豪華なカメオ出演が実現した。スナイダー版のアルフレッド(ジェレミー・アイアンズ)はもちろん、ガル・ガドット演じるワンダーウーマンはヘスティアの縄(触ると真実を話してしまう縄)と一緒にカメオ登場。アクアマンの父親トーマス・カリー(テムエラ・モリソン)や、『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』でしか見ることができなかった、バリーが心惹かれる記者アイリス・ウェスト(カーシー・クレモンズ)も再登場を果たしている。
注目は、バリーたちが何度も訪れる複数の時間軸が交わる場所。ここは、まさにカメオ出演者の宝庫だ。まず、カヴィル版スーパーマンやジェイソン・モモアふんするアクアマンの姿が確認できる。後半では、『スーパーマン』三部作(1978~1983)からクリスファー・リーヴ版スーパーマン、『スーパーガール』(1984)からヘレン・スレイターが演じているスーパーガール、1951年に公開された初のスーパーマン映画『スーパーマンと地底人間』から、ジョージ・リーヴス演じるモノクロのスーパーマンらしき姿も見られる。ケイジ版スーパーマンもこの場所に隠れており、一瞬たりとも見逃せない。
映画ファンの心をくすぐる小ネタも!
アメコミファンだけでなく、映画ファンが思わずクスリとするような小ネタも含まれている。マイケル・J・フォックス主演の名作SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(以下BTTF)は、18歳のバリーが住む世界ではエリック・ストルツが主演している。これは、実際にストルツが主演だったという史実を踏まえたものだ。ロバート・ゼメキス監督は主演にフォックスを希望したが、彼のスケジュールが合わず、ストルツ主演で撮影をスタートさせた。しかし、ゼメキス監督は納得がいかず、フォックス主演で撮り直したと言われている。ストルツ主演の『BTTF』は、ケイジ版スーパーマン同様、実際にあったかもしれない映画なのだ。
本作の会話には続きがあり、『BTTF』に出なかったフォックスは、同世界ではケヴィン・ベーコン主演の『フットルース』(1984)で主人公を演じており、『フットルース』に出ていないベーコンは、『トップガン』(1986)でトム・クルーズの代わりに主演を務めている設定も楽しい。
現在のバリーの部屋には名作SF映画『恐竜100万年』(1966)のポスター、18歳のバリーの部屋にはバートン監督のSF映画『マーズ・アタック!』(1996)のポスターが貼ってある。そして、超能力を手に入れたことを知った18歳のバリーが走り出そうとする姿を見て、もう一人のバリーが「スピーディーのマネは僕もやった」と言うが、このスピーディーとは、ワーナー・アニメの人気キャラクター、スピーディー・ゴンザレス(イナズマの速度で走るメキシコ生まれのネズミ)を指しているのだろう。
ちなみに、メガホンを取ったムスキエティ監督も本編にカメオ出演している。バリーがクライマックス付近、父親が判決を待つ裁判所の前で男性のホットドッグを奪って食べるが、この男性こそムスキエティ監督だ。『ザ・フラッシュ』には、最後までファンの心をくすぐる小ネタが詰まっている。
映画『ザ・フラッシュ』は全国公開中
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