【ネタバレ】『君たちはどう生きるか』ウーマン村本、宮崎駿に尊敬の念
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、宮崎監督が宣伝活動一切なしで挑んだ長編アニメーション『君たちはどう生きるか』。劇場で鑑賞してきたばかりの二人が、映画を語り尽くします。※一部作品の内容に触れています。(取材・文:森田真帆)
今回の映画は『君たちはどう生きるか』です。
『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』などの宮崎駿が、『風立ちぬ』以来約10年ぶりに監督を務めた作品。タイトルは吉野源三郎の同名の著作に由来し、宮崎監督が原作と脚本を手掛ける。
~以下、ネタバレあり~
待ちわびた宮崎駿の新作!
村本大輔(以下、村本):めっちゃオモろかった! すごいよかったわぁ! オレの友達がさ、Twitterで『千と千尋の神隠し』と同じパターンだった、期待はずれだった。たぶん監督の寿命を考えると、後1作くらいしか作れないかもしれないだろうから、頑張ってほしいって書いててさ、すっごいオモろない評価やなって思ってん。
中川パラダイス(以下、中川):そうなんや。めっちゃ感動したんやな。僕、意味わからんすぎてさー。
村本:今ってめっちゃアニメあるやん。わかりやすいアニメもいっぱいあるやん。一度は引退宣言して、宮崎駿が作るっていうプレッシャーだけじゃなく、わかりやすい作品があふれてる中、ここまで突き放した作品を作れるってすげえって思うわ。向こう側の世界だったり、自分でもようわからんものを作ったりしている感じがして、その姿勢に感動したわ。尊敬します、駿さん!
中川:これ、宮崎さんはともかくさ、周りの人はみんなこの世界観ってわかってたんかな。僕が見終わったとき、よう周りの人がついてきてくれたなって思ってん。意味がわからんかったから。監督が信じる面白いと思ったもんに、ただただついていくって信頼関係がすごい。
村本:よくわからんっていうのは、原発をネタにした漫才してるときの中川と一緒やんか! オモろいかどうかようわからんっていう(笑)。でも、すごいチームやもんな。この監督に惚れてるんやろな。だってもう絶対当てなアカンみたいなのあるやん。みんなが当たる作品を一生懸命作ろうってしている中で、自分の撮りたいもんを撮るってめっちゃすごいって思うんよな。
中川:やりたいこと全部、人に理解されなくてもいいから、詰め込んだんだと思ったわ。だからこそ、最後の作品なんかなって。
村本:いや最後とか思って作ってないと思ってる。衝動が起きたら作る人なんやと思う。
村本:ふと、宮崎駿年表っていうのを見たんやけど、37歳で『未来少年コナン』、43歳で『風の谷のナウシカ』、45歳で『天空の城ラピュタ』。それみるとさ、この人、遅いよな。物作る人間として夢あるなって。オレは42歳だからさ、ほぼ今のオレの年齢で『風の谷のナウシカ』って夢あるやん!
主人公の少年が今までの主人公で一番好き
村本:でもジブリファンとしてうれしいのはさ、『となりのトトロ』とか『天空の城ラピュタ』とかみたいな、摩訶不思議な世界の登場とさ、めっちゃ美味しそうなご飯がね! もう最高。あの目玉焼きのとろーんとした感じとかジャム塗って食べるパンとかさ。相変わらず美味しそうでうれしかったわ。
中川:ポスターがめっちゃ絵画みたいな感じやったやん。だからどんな画風なんやろって、ちょっと心配やってん。でも1発目のシーンで、あの主人公の男の子が出てきたときに「うわぁ“宮崎駿”やー!」ってホッとしたわ。あの男の子がなんかパズーみたいでかっこええし。
村本:今まで描いていたわかりやすい良い子なだけの少年じゃなくて、ちゃんと少年の葛藤を描きたかった感じあるよな。きっと宮崎監督本人に重ねてる部分があるかもしれんな。
中川:たしかに嘘とかはついてたけどさ、でもめっちゃかっこいいよな。冒険の世界に飛び込んでいく精神力も、男として憧れるかっこよさはあったよな。僕は、いろんなジブリの映画を観てきたけど、パズーよりも誰よりも、あの子が今までで一番かっこいいと思ったわ。あと、女の子のヒロイン多かったやん。シータがいてのパズーみたいな感じやったけど、今回は男の子が主人公やったしな。
村本:かっこいい、っていうのもあるけど、人間臭いやんって思った。ちょっと闇を感じるんよな。お母さんの件もさ、新しいお母さんの前では礼儀正しいけど、本心は出さなくて、お母さんにはそれがバレてて。ちゃんとしないといけないっていう優等生の顔の裏に隠れた、ややこしい複雑な思春期の闇を感じたわ。
中川:まぁ、そうね。
村本:お前、わかってないやろ!
ピュアな気持ちになって観るべし
村本:昔、ジブリの出待ちしたんやけど、そのとき近所の人から、宮崎さんは子供としか写真を撮ってくれないっていうのを聞いて、宮崎さんは子供のことを考えて映画を作ってるんかもなって思ってん。
中川:たしかに! わからんとかそういうことより、もっと単純に楽しんでたわ。王蟲でかい! とか、あの鳥、怖いわーとかな。
村本:頭で観ちゃうやん。宮崎駿やし、理解しようとする反面、理解できないものに対して、面白くないやんって感じになるやろしさ。よく考えたらトトロだって理解不能やんか。あれなんなん? 説明もないし。彼の頭ん中って興味深いよな。
中川:ほんまやなぁ。僕は純粋じゃなかったのかもしれんわ。なんでトトロが受け入れられたのに、インコは受け入れられなかったんやろ。
ジブリの声優がしたくてたまらない村本
村本:声優さんたち、あんまり誰かわからんかったな。木村拓哉はわかったけど、滝沢カレンってエンドロールに出てきたとき、負けたーって気になったわ。
中川:一回出てみたいよな。
村本:パラダイスはあの青鷺やろ。オレは、インコ大王がやりたかった。ていうかさ、今回の映画ってなんの宣伝もせんかったってすごいな。
中川:でもさ、予告編とか観る必要なかった分、変な邪念なく観れてよかったわ。
村本:普通は舞台あいさつやりましょうとか、映画会社から言われるわけやん。宣伝だってやるわけやん。それをぶった斬ったってすごいよな。宮崎監督の迎合しない感じが。賛否両論あるけれども、この映画は観ないとなんも言えんやん。
中川:村本は大好きなんやもんな!
村本:宮崎監督は、お母さんのことをすごく思っているんやなって思ったわ。なんか駿少年が、「おかあさーん! 大好き!」って伝えたい気持ちが伝わってきて。ラストめっちゃ泣いたんよな。
中川:どういう感覚の泣きなん?
村本:男にとってオカンは特別やなって。そんなお母さん愛にあふれてる感じがしたな。
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『君たちはどう生きるか』7月14日公開
(C) 2023 Studio Ghibli
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。