2023年 第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門23作品紹介
第80回ベネチア国際映画祭
8月30日~9月9日(現地時間)に開催される第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門23作品を紹介(コンペティション外を除く)。今年の審査委員長は、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督が務め、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン監督や『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督らが審査員に名を連ねる。ラインナップには、濱口竜介監督の『悪は存在しない』が選出されたほか、デヴィッド・フィンチャー監督、ソフィア・コッポラ監督、ブラッドリー・クーパー監督、マイケル・マン監督、ヨルゴス・ランティモス監督そしてリュック・ベッソン監督と知名度の高い監督による注目作がそろった。金獅子賞の行方はいかに!(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香)
<金獅子賞(最優秀作品賞)>『哀れなるものたち』
製作国:イギリス
監督:ヨルゴス・ランティモス
キャスト:エマ・ストーン、マーク・ラファロ
【ここに注目】
第75回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞、米アカデミー賞で10ノミネートを獲得した『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再タッグ。スコットランドの作家アラスター・グレイ著の傑作ゴシック奇譚を映画化した本作は、風変わりな天才外科医によって死から蘇った若き女性が、時代の偏見から解き放たれ驚くべき成長を遂げていくSFロマンスだ。天才外科医をウィレム・デフォーが演じ、マーク・ラファロ、ラミー・ユセフが共演。脚本を『女王陛下のお気に入り』『クルエラ』のトニー・マクナマラ、撮影を『マリッジ・ストーリー』『カモン カモン』のロビー・ライアンが手がけている。
<銀獅子賞(審査員大賞)>『悪は存在しない』
【ここに注目】
『ドライブ・マイ・カー』が第74回カンヌ国際映画祭脚本賞や第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督の新作で、コンペティション部門に日本から唯一選出されたドラマ。物語の中心人物は東京近郊の村で自然と共生する父娘。ある施設の建設計画によって、自然の生態系バランスと彼らの生活の両方が危険にさらされる恐れが生じる。制作のきっかけは『ドライブ・マイ・カー』の音楽を担当した石橋英子に、ライブパフォーマンス用の映像制作を依頼されたことで、映画としての脚本が出来上がったという。『偶然と想像』が第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員大賞)も受賞している濱口作品の、ベネチアでの受賞にも期待したい。
<銀獅子賞(最優秀監督賞)>マッテオ・ガローネ監督<マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)>セイドゥ・サル『イオ・カピターノ(原題) / Io Capitano』
製作国:イタリア、ベルギー
監督:マッテオ・ガローネ
キャスト:セイドゥ・サル、ムスタファ・ファル
【ここに注目】
『ゴモラ』と『リアリティー』がカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したマッテオ・ガローネ監督が、実話に着想を得て、移民の少年の視点で雄大な冒険を描いたドラマ。アフリカの西端にあるセネガルの首都ダカールからヨーロッパを目指す二人の少年が、砂漠や海での危険な旅、リビアの収容所での恐怖などを経験し、さまざまな人に出会う。イタリアを代表する監督の一人となったガローネ監督が、初のベネチア国際映画祭コンペティション部門出品で金獅子賞受賞となるか注目される。
<最優秀女優賞>ケイリー・スピーニー『プリシラ(原題) / Priscilla』
製作国:アメリカ、イタリア
監督:ソフィア・コッポラ
キャスト:ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エローディ
【ここに注目】
10代で世界的スターのエルヴィス・プレスリーと出会い、波瀾万丈な人生を送ることになった元妻プリシラ・プレスリーの半生を描くソフィア・コッポラ監督の最新作。プリシラを『パシフィック・リム:アップライジング』のケイリー・スピーニー、エルヴィスを「ユーフォリア/EUPHORIA」シリーズのジェイコブ・エローディが演じた。脚本は、プリシラ著の回顧録「私のエルヴィス」をもとにコッポラ監督が執筆。コッポラ監督の夫のロックバンド、フェニックスが楽曲を手がけている。昨年、バズ・ラーマン監督×オースティン・バトラー主演の『エルヴィス』が大ヒットしたが、コッポラ監督によるプリシラ視点のストーリーがどう描かれるのかにも注目だ。
<最優秀男優賞>ピーター・サースガード『メモリー(原題) / Memory』
製作国:メキシコ、アメリカ
監督:ミシェル・フランコ
キャスト:ジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード
【ここに注目】
『ニューオーダー』が第77回ベネチア国際映画祭銀獅子賞(審査員大賞)を受賞したメキシコの俊英ミシェル・フランコ監督。最新作は、質素で単調な毎日を送るソーシャルワーカーの女性が、高校の同窓会である旧友と再会したことが、互いの人生に思いがけない影響を及ぼすさまを描く英語作品だ。主演を務めるのはジェシカ・チャステインとピーター・サースガード。フランコ監督は『或る終焉』で第68回カンヌ国際映画祭脚本賞、『母という名の女』が第70回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞するなど、国際映画祭で圧倒的な実績を誇り今回も受賞に期待がかかる。
<最優秀脚本賞>ギレルモ・カルデロン、パブロ・ラライン『伯爵』
製作国:チリ
監督:パブロ・ラライン
キャスト:ハイメ・バデル、グロリア・ムンチマイヤー
【ここに注目】
1973年の軍事クーデターで政権を掌握し、1990年まで独裁政治を行ったピノチェト元チリ大統領を題材に描くダークホラーコメディー。『スペンサー ダイアナの決意』などのパブロ・ララインがメガホンを取り、250歳の吸血鬼として生き続けるピノチェトが死を決意するも、新たな目標を見出す姿をダークな笑いを交えて映し出す。『NO』でもラライン監督と組んだアルフレド・カストロ、アントニア・セヘルス、ハイメ・バデルらおなじみのメンバーが集結。国際的に活躍する監督が自国チリを舞台にモノクロームの映像で描く挑発的な物語が、大旋風を巻き起こすのは間違いない。
<審査員特別賞>『グリーン・ボーダー(英題) / Green Border』
製作国:ポーランド、フランス、チェコ、ベルギー
監督:アグニェシュカ・ホランド
キャスト:ジャラル・アルタウィル、マヤ・オスタシェフスカ
【ここに注目】
『僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ』や『太陽と月に背いて』などで国際的に活躍するポーランド人女性監督のアグニェシュカ・ホランドが、緊張が高まるポーランドとベラルーシの国境で出会う人々を描いたドラマ。中東やアフリカからの難民がやってくるその地で、活動家になって間もないジュリア、若い国境警備員のジャン、シリア人一家の人生が交錯する。出演は『カティンの森』などのマヤ・オスタシェフスカや『バハールの涙』などのベヒ・ジャナティ・アタイ。ホランド監督が「これはまさにポーランドとベラルーシの国境で起きていること」と言うように、今日の時代を反映した内容となっているようだ。
『ザ・プロミスト・ランド(英題) / The Promised Land』
製作国:デンマーク
監督:ニコライ・アーセル
キャスト:マッツ・ミケルセン、アマンダ・コリン
【ここに注目】
1700年代半ば、デンマーク国王フレデリク5世の名のもと、ユトランド半島の植民地化に挑んだ軍人ルートヴィヒ・フォン・カーレンの壮大な冒険に迫る歴史ドラマ。イダ・ジェッセンによる歴史小説「The Captain and Ann Barbara」を原作に、当時未開の地であったユトランド半島開拓の苦労を描く。『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』でも組んだ国際派俳優マッツ・ミケルセンと、『特捜部Q』シリーズなどで脚本を手掛けてきたニコライ・アーセル監督が再びタッグを組み、最高賞を狙う。
『ドッグマン(原題) / Dogman』
製作国:フランス
監督:リュック・ベッソン
キャスト:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョージョー・T・ギッブス
【ここに注目】
リュック・ベッソン待望の新作は、心に傷を負った少年が愛犬たちの存在によって救いを見いだすというストーリー。『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でショーン・キャシディ(バンシー)を演じ、2021年には『ニトラム/NITRAM』で第74回カンヌ国際映画祭男優賞を獲得したケイレブ・ランドリー・ジョーンズを主演に迎え、クリストファー・デナムなどが共演する。なお、ベッソン監督はカンヌ国際映画祭で審査委員長を務めたことがあるものの、三大国際映画祭のコンペティションへの挑戦は意外にもこれが初めてとなる。
『ラ・ベット(原題) / La Bete』
製作国:フランス、カナダ
監督:ベルトラン・ボネロ
キャスト:レア・セドゥ、ジョージ・マッケイ
【ここに注目】
『メゾン ある娼館の記憶』などのベルトラン・ボネロ監督がメガホンを取り、ボネロ監督の『サンローラン』にも出演したレア・セドゥと『1917 命をかけた伝令』などのジョージ・マッケイが共演するSFラブストーリー。舞台はAIが支配する近未来の、人間の感情が脅威とされている世界。感情を排除するため、DNAを浄化しに前世への旅に出た女性が、ある男性と再会するが、大惨事の予感に恐怖を感じる。「ねじの回転」などを著した小説家であり、『鳩の翼』など多くの作品が映画化されているヘンリー・ジェイムズの短編小説を翻案している。
『オー・セゾン(原題) / Hors-saison』
製作国:フランス
監督:ステファヌ・ブリゼ
キャスト:ギヨーム・カネ、アルバ・ロルヴァケル
【ここに注目】
『ティエリー・トグルドーの憂鬱』や『女の一生』など、ずっしりと見ごたえのある物語を見せてきたステファヌ・ブリゼが監督を務める、元恋人同士の大人の男女が繰り広げるドラマ。パリに暮らすアラフィフの有名俳優マチューと、地方にある海辺の町に暮らす40代のピアノ教師のアリスが主人公。15年ほど前に交際し、その後は別々の道を歩んでいた二人だが、静養中のマチューがアリスを見かける。マチューを『セザンヌと過ごした時間』などのギヨーム・カネが、アリスを『ハングリー・ハーツ』で第71回ベネチア国際映画祭女優賞を受賞したイタリア人女優のアルバ・ロルヴァケルが演じる。
『エネア(原題) / Enea』
製作国:イタリア
監督:ピエトロ・カステリット
キャスト:ピエトロ・カステリット、ベネデッタ・ポルカローリ
【ここに注目】
ギリシャ・ローマ神話に登場する英雄アイネイアースが名前の由来であるエネアと、友人の飛行士ヴァレンティノが憂鬱な現実を乗り越えようとする青春ドラマ。親友同士である二人が、社会のルールやしがらみを軽々と飛び越え、麻薬取引とパーティーに明け暮れる様子を描き出す。『略奪者たち』では監督・脚本・出演を務めたピエトロ・カステリットが本作でも同様に三役を担当。『トスカーナの幸せレシピ』などのベネデッタ・ポルカローリらが出演するほか、『フォルトゥナータ』などの監督で、ピエトロの父親でもあるセルジオ・カステリットとの父子共演も注目される。
『マエストロ:その音楽と愛と』
製作国:アメリカ
監督:ブラッドリー・クーパー
キャスト:キャリー・マリガン、ブラッドリー・クーパー
【ここに注目】
米アカデミー賞8部門ノミネート作『アリー/スター誕生』のブラッドリー・クーパーによる長編監督第2作は、20世紀を代表する米指揮者・作曲家レナード・バーンスタインを描く伝記映画。バイセクシャルだったと言われるバーンスタインをブラッドリーが、妻で女優のフェリシア・モンテアレグレをキャリー・マリガンが演じ、ほかにマヤ・ホーク、マット・ボマー、サラ・シルヴァーマンが共演した。脚本は『スポットライト 世紀のスクープ』でアカデミー賞脚本賞を受賞したジョシュ・シンガーとブラッドリーが共同執筆。プロデューサーにマーティン・スコセッシとスティーヴン・スピルバーグが名を連ね、賞レース参戦が期待される話題作となっている。
『フィナルメンテ・ラルバ(原題) / Finalmente l’alba』
製作国:イタリア
監督:サヴェリオ・コスタンツォ
キャスト:リリー・ジェームズ、レベッカ・アントナッチ
【ここに注目】
1950年代、ローマ郊外にある映画撮影所チネチッタの黄金時代を舞台に、エキストラとしてオーディションを受けに行った若い女性が体験する一夜を描くドラマ。愛していない男性との婚約を控えた主人公が、撮影所で時間を過ごすうちに本来の自分を発見していく。『レベッカ』などのリリー・ジェームズ、『永遠の門 ゴッホの見た未来』などのウィレム・デフォーらが出演。第71回の本映画祭でアダム・ドライヴァーとアルバ・ロルヴァケルが男優賞と女優賞をダブル受賞した、『ハングリー・ハーツ』のサヴェリオ・コスタンツォ監督が最高賞の金獅子賞を狙う。
『コマンダンテ(原題) / Comandante』
製作国:イタリア
監督:エドアルド・デ・アンジェリス
キャスト:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、マッシミリアーノ・ロッシ
【ここに注目】
第2次世界大戦の初期、イタリアの潜水艦コマンダンテ・カッペリーニが、沈没させたベルギーの船カバロの乗組員を救助するさまを描く歴史ドラマ。実在のサルヴァトーレ・トーダロ司令官をモデルに、命令に背き、自身の艦を危険にさらしながらもカバロの乗組員を救おうとする司令官の人間としての矜持に迫る。出演は『離ればなれになっても』などのピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、『フランチェスコ』などのパオロ・ボナチェッリら。有名な国際映画祭では未だ無冠の『堕ちた希望』などのエドアルド・デ・アンジェリス監督が、不穏な世界で希望を描いた本作で勝負に出る。
『ルーボ(原題) / Lubo』
製作国:イタリア、スイス
監督:ジョルジョ・ディリッティ
キャスト:フランツ・ロゴフスキ、クリストフ・セルメ
【ここに注目】
マリオ・カヴァトーレの小説「Il seminatore」を原作に、優生思想によって子供たちと引き離された、スイスのイェニシェ系遊牧民ルーボの復しゅう劇を描くドラマ。『私は隠れてしまいたかった』などのジョルジョ・ディリッティがメガホンを取り、『大いなる自由』などのフランツ・ロゴフスキ、『モティの目覚め』などのジョエル・バズマンらが共演。国境警備のためにスイス軍に召集された主人公が不在の間に警察に子供たちを奪われ、彼が正義と新たな人生を渇望する狂気と、善悪について深く考えさせられる物語が、観る者の心をわしづかみにする。
『オリジン(原題) / Origin』
製作国:アメリカ
監督:エヴァ・デュヴァネイ
キャスト:アーンジャニュー・エリス、ジョン・バーンサル
【ここに注目】
『グローリー/明日への行進』のエヴァ・デュヴァネイ監督が、人種や階級の分断、差別に焦点を当てた人間ドラマ。黒人女性として初めてピュリツァー賞を受賞したジャーナリスト、イザベル・ウィルカーソンによる世界的ベストセラー書籍「カースト アメリカに渦巻く不満の根源」をもとに、デュヴァネイ監督が自ら脚本を執筆し、ヴェラ・ファーミガ、ジョン・バーンサル、アーンジャニュー・エリス、コニー・ニールセンらが共演した。撮影監督を『キャプテン・マーベル』『ソー:ラブ&サンダー』のマシュー・J・ロイドが務めている。
『ザ・キラー』
製作国:アメリカ
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:マイケル・ファスベンダー、ティルダ・スウィントン
【ここに注目】
デヴィッド・フィンチャー監督が2007年頃から企画を温めてきたという本作は、アレクシス・ノランの同名グラフィックノベルを映画化。冷酷な殺し屋が不条理な世界で次第に精神のバランスを崩していくノワールスリラーで、傑作サスペンス『セブン』の脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーとフィンチャー監督が再タッグを組み、マイケル・ファスベンダーが主演を務めた。『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』『ゴーン・ガール』『Mank/マンク』とフィンチャー監督作でお馴染みのトレント・レズナー&アッティカス・ロスが音楽を手がけている。
『ディー・テオリー・フォン・アーレム(原題) / Die Theorie von Allem』
製作国:ドイツ、オーストリア、スイス
監督:ティム・クルーガー
キャスト:ヤン・ビューロー、オリヴィア・ロス
【ここに注目】
1960年代、物理学会議に出席するためにスイス・アルプスに向かった主人公ヨハネスが、そこで体験する不可思議な出来事をモノクロームの映像で描くスリラー。イラン人科学者による量子力学に関する画期的な講義が行われる予定だったが、講演者が不在。そんな中、ヨハネスは謎の女性と出会う。だが、同時期、ドイツ人の物理学者の惨殺事件が起きていた。注目の若手俳優ヤン・ビューロー、『都市の夏』などのハンス・ジシュラー、『冬時間のパリ』などのオリヴィア・ロスらが共演する。撮影監督としてもキャリアの長いティム・クルーガー監督は、クラシカルな映像と独創的な物語で賞レースをひた走る。
『フェラーリ(原題) / Ferrari』
製作国:アメリカ
監督:マイケル・マン
キャスト:アダム・ドライヴァー、ペネロペ・クルス
【ここに注目】
『ヒート』『コラテラル』のマイケル・マン監督が約20年前から構想を練ってきたという本作は、世界的に有名なイタリアの高級自動車メーカー、フェラーリの創始者エンツォ・フェラーリを題材にした伝記映画。『ハウス・オブ・グッチ』『最後の決闘裁判』のアダム・ドライヴァーが会社も家庭も崩壊寸前のエンツォ役で主演し、ペネロペ・クルスが夫の浮気と息子の死に直面する妻ラウラを、シャイリーン・ウッドリーが愛人リナ・ラルディを演じた。「グレイズ・アナトミー」シリーズでおなじみ、レーシングドライバーとしても活躍するパトリック・デンプシーの共演にも注目したい。
『アダージョ(原題) / Adagio』
製作国:イタリア
監督:ステファノ・ソッリマ
キャスト:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、トニ・セルヴィッロ
【ここに注目】
ステファノ・ソッリマが共同脚本と監督を務め、『バスターズ』『暗黒街』に続きローマ三部作の最終章として撮り上げた犯罪ドラマ。年老いた父親の面倒を見ている16歳の少年マヌエル。恐喝され、トラブルに巻き込まれた彼は、父親の古い知り合いである二人の元犯罪者に助けを求める。『我らの父よ』で第77回の本映画祭の最優秀男優賞を受賞したピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、『グレート・ビューティー/追憶のローマ』などのトニ・セルヴィッロ、『ザ・プレイス 運命の交差点』などのヴァレリオ・マスタンドレアら名優が顔をそろえ、自国での受賞に賭ける。
『ウーマン・オブ(英題) / Woman of』
製作国:ポーランド、スウェーデン
監督:マウゴジャータ・シュモフスカ、ミハウ・エングレルト
キャスト:マウゴジャタ・ハイェフスカ、ヨアンナ・クーリク
【ここに注目】
第65回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞したポーランド映画『君はひとりじゃない』のマウゴジャータ・シュモフスカ監督と、同作で共同脚本を務めたミハウ・エングレルトによる共同監督作。新作は、共産主義から資本主義へと変革を遂げるポーランドを舞台に、トランスジェンダーの女性が真のアイデンティティを模索するというストーリー。Netflix映画『誰も眠らない森 Part 2』のマテウシュ・ヴィエンツワヴェクと、『COLD WAR あの歌、2つの心』のヨアンナ・クーリクが共演。本作はシュモフスカ&エングレルト監督にとって、『もう雪は降らない』以来のベネチア国際映画祭コンペティション部門出品となる。
『ホリー(原題) / Holly』
製作国:ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、フランス
監督:フィーン・トロフ
キャスト:キャサリーナ・ゲレツ、グリート・フェルストラーテ
【ここに注目】
メガホンを取ったフィーン・トロフは、前作の『ホーム(原題) / Home』が第73回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で監督賞を受賞したベルギー出身の女性監督。ある悲劇に見舞われたコミュニティーで、不思議な能力を持つ15歳の少女ホリーが人々を癒やすようになるが、人々は彼女の力を求め、要求をエスカレートさせていく。製作をジャン=ピエール・ダルデンヌとリュック・ダルデンヌの兄弟が担当。登場人物の悲しみや狂気、置かれている状況を通して、統合失調症のような映画体験を作り出したかったとトロフ監督が語っていることから、とても挑戦的な作品となっているようだ。