傑作ミステリーの原点!名探偵ポアロは何がスゴい?
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「金田一少年の事件簿」「名探偵コナン」「古畑任三郎」「刑事コロンボ」など、国内外で愛され続けるミステリー作品。その原点と言えるのが、ミステリーの女王と呼ばれるイギリスの推理作家アガサ・クリスティが生み出した世界一の名探偵エルキュール・ポアロだ。数多くの傑作ミステリーに影響を与え、新作映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』でも活躍する名探偵ポアロとは一体どんな探偵なのか? 彼はなぜ世界中を魅了するのか?(文/平沢薫)
謎解きキャラクターの原点!名探偵ポアロとは
クリスティが生み出した名探偵ポアロは、1920年から1975年にかけて長編33作、短編54作、戯曲1作に登場した人気キャラクター。同じくイギリス生まれの名探偵シャーロック・ホームズは長編4作、短編56作(1887~1927)に登場しており、時代的には、ポアロはホームズより後に活躍した名探偵だが、解決した事件数ではポアロが圧倒的に上回っている。
ポアロの影響力は大きく、後に誕生する人気探偵は、皆ポアロの影響を受けているといっても過言ではない。例えば、人気テレビシリーズ「刑事コロンボ」でコロンボが容疑者との何気ない会話からヒントを見つける手法は、ポアロの捜査方法にそっくり。日本のミステリー作品では、ドラマ「古畑任三郎」のエピソード「古い友人に会う」がポアロの短編「スズメ蜂の巣」を、「ゲームの達人」はポアロシリーズ3作目「アクロイド殺し」をオマージュしたと言われている。
また、人気アニメ「名探偵コナン」の風変わりな発明家・阿笠(アガサ)博士の苗字は、ポアロの生みの親であるアガサ・クリスティから取られたものと考えられており、同作で描かれる連続放火事件に対して、主人公・江戸川コナンがポアロの「ABC殺人事件」に酷似していると気づくシーンも登場する。
さらに、「金田一少年の事件簿」の小説シリーズ第3作「電脳山荘殺人事件」では、ミステリー・マニアたちがお互いを世界中のミステリー作家の名前からとったニックネームで呼ぶが、そのうちの一人はアガサ・クリスティから取った「アガサ」と名付けられている。
会話を駆使して事件解決!名探偵ポアロのココがスゴい
名探偵ポアロは、少し変わった風貌なのに、推理能力は天才的というギャップが魅力的だ。ベルギー人のポアロは、興奮するとフランス語が出てくることもある。完璧な口ヒゲにこだわりがあり、いつもきっちり整えている。もう一つの自慢は、ポアロが自身の天才的な頭脳を指して言う灰色の脳細胞。あらゆる真実を見つけ出し、全ての事件は解決できると思っている自信家である。
謎解きの手法は、論理的思考と心理分析。例えば、シャーロック・ホームズは物理的な証拠を重んじたり危険な行動をすることもあるが、ポアロはもっぱら会話を重視する。会話をしながら、発言の矛盾に気づいたり、その人物の性格や思考法を分析し、事件を解決に導いていく。そのため、事件に関わる人々のさまざまな過去や、多彩な人間ドラマが見えてくるのも、ポアロが扱う事件の特徴だ。
ポアロのスゴさは、映像化作品の多さでも証明されている。最初の映画化作品は1931年製作の『Alibi(原題)』(原作は「アクロイド殺し」)。監督をレズリー・S・ヒスコットが担当し、オースティン・トレヴァーがポワロを演じた。以降、数え切れないほどの作品が映像化されてきた。
中でも有名なのは多数の人気スターたちが共演した、1974年から1982年にかけて公開された3作品だろう。『オリエント急行殺人事件』(1974)はアルバート・フィニーがポアロ役で、ジャクリーン・ビセット、イングリッド・バーグマン、ローレン・バコール、ショーン・コネリーらが出演。『ナイル殺人事件』(1978)ではピーター・ユスチノフがポアロを演じ、ミア・ファロー、ベティ・デイヴィス、デヴィッド・ニーヴンらが共演した。ユスチノフがポアロを続投した『地中海殺人事件』(1982)でもジェーン・バーキン、マギー・スミス、ロディ・マクドウォール、ジェームズ・メイソンらが共演。出演者の豪華な顔ぶれを見ても、名探偵ポアロ作品の注目度がよくわかる。
テレビシリーズでは、全13シーズンが製作された長寿番組「名探偵ポワロ」(1989~2013、表記はポアロではなくポワロ)。英俳優デヴィッド・スーシェがポアロを演じ、原作のほぼ全てを映像化した。これほど長く続いたのも、ポアロが不動の人気を誇る証拠。近年もテレビシリーズ化されており、2018年にはミニシリーズ「アガサ・クリスティー ABC殺人事件」でジョン・マルコビッチがポアロを演じている。
世界一の名探偵に最大のピンチ…最新作はココに注目
現在は、アカデミー賞をはじめ数々の賞レースを席巻した『ベルファスト』など映画監督としても評価の高いケネス・ブラナーが主演と監督を兼任するシリーズが続いている。ブラナー監督版ポアロ映画の魅力は、クリスティの原作小説の基本を踏まえながら、登場人物の設定や行動理由などに、現代の観客が納得のいく新たなアレンジを加えていること。同じ原作の映画化作品を観ているファンも、クリスティの原作ファンも、ブラナー監督のアレンジぶりが楽しめる。
もう一つの魅力は、名探偵ポアロがどんな人間なのか、その人物像をも描くことだ。原作小説ではポアロの過去はほとんど描かれていないが、ブラナー監督シリーズ第1作『オリエント急行殺人事件』(2017)には、ポアロが愛した女性カトリーヌの写真が登場し、彼がその女性を愛し続けていることがわかる。続く2作目『ナイル殺人事件』(2021)では、カトリーヌとの関係性はもちろん、自慢の口ヒゲがなぜ生まれたのかも明かされる。人間味溢れるポアロをブラナー監督がどう描き、どう演じるのかも、このシリーズの見どころだ。
最新作『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』で注目すべきは、ポアロが超常現象的な事件に挑戦すること。ポアロは、水上の迷宮都市ベネチアで、母親が死んだ娘の霊を呼び出すという降霊会に参加することに。その場所はかつて孤児院で、死んだ子供たちの霊が彷徨っていると言われる館。嵐の夜に行われた降霊会で奇妙な出来事が連続し、参加者の一人が命を落とすと、別の参加者は人間には不可能だと思われる方法で殺され、ポワロまでもが命を狙われる。人間の犯行なのか、それとも亡霊の仕業か。ブラナー監督作には珍しい、ホラー映画のような妖しく幻想的な雰囲気にも期待が高まる。
さらに注目なのは、ポアロの信念である論理的思考と、事件によって出現する超常現象という、対極にある2者のせめぎ合いのドラマが描かれること。ベネチアの亡霊が彷徨っているかのような館で、ポアロは灰色の脳細胞による論理的思考を貫き通すことができるのか。最大のピンチに陥った時、彼の信念が試される。
また、最新作では、ブラナー監督ならではのアレンジも施されている。映画の原作「ハロウィーン・パーティ」の舞台はロンドン郊外の新興住宅地だが、映画ではベネチアに変更。暗い水面、カーニバルの仮面を被った人物、鐘を打つ機械仕掛けの人形といった幻想的な風景に、霊能者や降霊会といった要素を加え、まったく異なる雰囲気の作品に仕上げている。クリスティの小説ファンには、ブラナー監督のアレンジぶりも見ものだ。
オスカー女優ミシェル・ヨー参戦!最新作にも豪華キャスト集結
ブラナー監督版は、1970年から1980年代に公開されたオールスターキャストのポアロ映画を意識した、人気スターの豪華共演が魅力である。『オリエント急行殺人事件』にはジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ウィレム・デフォー、オリヴィア・コールマン、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリーらが出演。続く『ナイル殺人事件』にはガル・ガトッド、アーミー・ハマー、アネット・ベニング、エマ・マッキー、レティーシャ・ライトら新旧スターが名を連ねた。
最新作『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』にも名だたる俳優たちが結集した。昨年『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアジア人初のアカデミー賞主演女優賞に輝いたミシェル・ヨーが怪しい霊能者を怪演。『ベルファスト』でブラナー監督と組んだジェイミー・ドーナンと名子役ジュード・ヒルが、悩みを抱える医師とその息子役、『シャーロック・ホームズ』シリーズでワトソンの婚約者メアリーを演じたケリー・ライリーが、亡き娘のため降霊会を開く元オペラ歌手役、人気コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」出身のティナ・フェイが、ポアロの旧友のミステリ作家オリヴァ役で出演している。彼らの背後にはどんなドラマが隠されているのか。ポアロはそれを、どう解き明かしていくのか。豪華キャストのアンサンブルと共に、名探偵ポアロの新たな謎解きに注目だ。
映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』は9月15日全国公開
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