アントニオ猪木は何がスゴかったのか?ビンタをエンタメに
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ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、伝説的なプロレスラーのアントニオ猪木から多大な影響を受けたプロレスラーや各界の著名人たちが、猪木の偉大な足跡を辿る旅に出るドキュメンタリーパートと、猪木に影響を受けた人たちの逸話を再現したドラマパートの2部構成で作られた映画『アントニオ猪木をさがして』。プロレスには詳しくない2人でも、アントニオ猪木の数奇な運命に大興奮!(取材・文:森田真帆)
今回の映画は『アントニオ猪木をさがして』です。
79歳で逝去したプロレスラー、アントニオ猪木のドキュメンタリー。実業家や政治家としても活動した彼の軌跡を、人柄を知るさまざまな人物へのインタビューや、ファン視点のドラマ、アーカイブ映像を通してたどっていく。監督はプロデューサーとして『吾郎の新世界』などを手掛けてきた和田圭介、『高野豆腐店の春』などの三原光尋。福山雅治がナレーションを務める。
アントニオ猪木にどっぷり浸かれる
村本大輔(以下、村本):オレ、プロレスあんまり知らんけど、面白かったわー!
中川パラダイス(以下、中川):僕も実はプロレスのことあんまり知らんねんけど、くりぃむしちゅーの有田さんがプロレスのことを語る番組があってさ、それがきっかけでプロレスに興味持つようになったわ。好きな人の熱量って、めっちゃ面白いからさ。プロレスのことを30分くらいひたすら語るんだけど、ついこっちも熱中して観てまうやん。この映画もそうで、みんなが猪木さんのことすごい熱量でしゃべるから、どんどん引き込まれたわ。
村本:おいパラダイス、オレだってこの数年、原発のことをお前の隣でずっとずっとしゃべり倒してんのに、お前のとこには一切響いてないのはなんでやねん!
中川:そもそも村本は、アントニオ猪木さんのこと知ってたん?
村本:プロレスでの活躍はあんまり知らんねんけど、前に政治家になってからの逸話を聞いたことがあんねん。猪木さんが外交のために北朝鮮へ行ったときにさ、偉い人に向かって「ミサイル問題について、今あなた方の国のミサイルは我が国に向いている。ただ、喜び組の皆さんがいて、私のミサイルは今、そっちに向いています」って言ったって聞いて大ファンになってん。すごい度胸やわ。
中川:ドキュメンタリー観ていたら、ほんまに純粋な人やったやん。だから、別にウケを狙ってるとかじゃなくて、ご本人は純粋なだけで、ただ思ったことそそのまま言ってるだけかもしれんよな。
一風変わった構成のドキュメンタリー
村本:なんかこのドキュメンタリーは変わった構成やったよな。インタビューとか、懐かしい昔の映像とか、あとは再現ドラマとかも入ってたりしてさ。一般的なドキュメンタリーって全然変わらない画が続いていたりすることもあるけど、この作品はいろいろな要素が入ってるから飽きなかったな。それより、プロレスラーの棚橋弘至選手がインタビューで話しているとこさ、なんか変な空気やったな。なんかむっちゃ怖かったで。
中川:緊張してただけやんか(笑)。変な空気出していたとかじゃなくて、ただ緊張してはっただけやで。そら、大先輩の猪木さんのこと話すってなったら誰だって緊張するわ。
村本:そうなんやろな。オレらはNSC(吉本総合芸能学院)っていう養成所出身でさ、そういう弟子制度をなくすために作られたのがNSCやから師匠がおらんやん。でも新日本プロレスは入門やから、ちゃんと師匠がおるからな。だからあの世界はちょっとすごいって思う。話すだけでも緊張する存在って、吉本にはおらんもんな。
中川:めっちゃ思うんやけど、絶対に痛いのわかってるけど、「ビンタしてください!」って言っちゃうのってなんなんやろな(笑)。もう絶対痛いやん。
村本:でもアントニオ猪木は強いからなぁ。あの強さってみんな憧れるやろなぁ。うちのおとんもプロレス好きやったから猪木さん観てたの思い出したわ。
中川:僕は子供の頃一回もプロレス観たことないわ。だから全然知らんかってん。
村本:夜中におとんとおかんがプロレスしてたのは見たけどね。
中川:なんの話やねん。
アントニオ猪木を知らない人でも楽しめる
村本:でも猪木さんさ、ブラジルでたまたまスカウトされて、日本のスターになるって、(シンデレラストーリーならぬ)イノデレラストーリーすごくない!? 日本の政治家にもなってさ、すごいやん! オレ、日本の政治家の中で一番好きで、ずっと期待していたもんな。だって、普通なら絶対に問題になるビンタをエンターテインメントにできた人なんやから、きっと政治もエンターテインメントにできたはず! 政治家って、最終的には真っすぐで純粋な人がええんやなって思うねん。
中川:真っすぐやったなぁ。なんか、猪木問答みたいなリングの上でのやり取りも強烈でオモロかったしな。「君は何に怒ってるんや!」言うて、聞いてくるくせに、「知らんし」みたいに返すの全部オモロかった。しかも選手の人たちもそんなに怒ってないのに、怒ってるようなこと言わされて、そんで急にはしご外してくんねん。プレッシャー大喜利、オモロかったわぁ。
村本:コンプライアンスまみれのガチガチの世界の中で、表立ってあんなにビンタしまくるって、ほんまにすごくない?
中川:アナウンサーのひとのこともビンタしてたしね。
村本:真面目な話、猪木さんって、本当になんとかしてくれそうな人よな。希望というか、この人にかけてみたくなるところがあるよな。リーダーシップがある人やったなって思った。ああいう人はなかなか探してもおらん、オリジナルな人やったなぁ。
中川:猪木さんのプロレスに、日本中の人たちがワクワクしてたわけやん。それはすごいことよな。亡くなる前のポジティブな姿とか、リングの上の生きざま、死にざまもすべてが美しかったな。この映画、あんまり猪木さんのこと知らなくても面白いと思う。僕も人から聞いた話でしか知らんかったから、実際に猪木さんの人生を知ることができてめっちゃ面白かったわ。
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『アントニオ猪木をさがして』10月6日公開
(C) 2023 映画「アントニオ猪木をさがして」製作委員会 写真:原 悦生
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。