【ネタバレ解説】「ロキ」シーズン2第2話:ラストに登場したアレって?
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマシリーズ「ロキ」シーズン2(全6話)の第2話では、ロキ(トム・ヒドルストン)とメビウス(オーウェン・ウィルソン)がTVA(時間変異取締局)の捜査官を追って1977年のロンドンへと向かう。TVA内にも異変が見られる第2話の重要ポイントを、小ネタと合わせて確認していく。(平沢薫)
※ご注意:本記事はネタバレを含みます。「ロキ」シーズン2第2話をまだ見ていない方はご注意ください。
オスカー常連のVFXマンが監督初挑戦
今回のロキとメビウスは、前回に増してますます仲が良い。TVAのハンターX5(ラファエル・カザル)の尋問では、お互いがキレないかと心配そうに見守り、メビウスがキレるとロキが慰め、二人で一緒に作戦を練り協力して行う。
このエピソードは、映像の色彩が印象的だ。二人がキーライムパイを食べながら語り合う空間の明るいグリーン色を筆頭に、パイの自動販売室とO.B.(キー・ホイ・クァン)の作業部屋は明るいグリーン、X5の取調室は暗い赤、そしてロンドンとロキの変異体シルヴィ(ソフィア・ディ・マルティーノ)が働くマクドナルドはオレンジ色と黄色。三つの色調が対比され、それぞれに際立つ。
そんな第2話の監督はVFXマンのダン・デリーウ。『アイアンマン3』(2013)からMCUに参加し、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で三度アカデミー賞視覚効果賞にノミネートされた猛者である。本作のVFXスーパーバイザーも務める彼が、このエピソードで監督業に初挑戦。あえてVFXだけに頼らず、感情を描くドラマを演出した一方で、ロキが何人も登場したり、壁に映ったロキの影がX5を捕まえたりと、VFXが得意な監督らしい演出も楽しい。
ミス・ミニッツはどこへ…?今回もトラブル続出
O.B.が時間織り機を修理するためには、防爆扉を開けなくてはならず、そのためには製造者の生体スキャンまたは人工知能ミス・ミニッツによる鍵の無効化が必要。製造主である"在り続ける者"(ジョナサン・メジャース)は死んだが、その変異体のスキャンでも可能なのか? ミス・ミニッツはどこにいるのか? また、かつてTVAを指揮していたラヴォーナ・レンスレイヤー判事(ググ・バサ=ロー)のタイムパッドに反応があった。彼女は何をしているのか。
そして、心配なのは時間軸。神聖時間軸以外の分岐がほとんど刈り取られてしまったが、このままで問題ないのか。
さらに気になるのは、ラストでシルヴィが持っていた光るアイテム。これはシーズン1最終話で在り続ける者が手首から外して机の上に置き、それをシルヴィが奪ったもの。このアイテムはタイムパッドの一種のようだが、どんな機能があるのか。シルヴィがこれを触りながら何かを考えているのも気に掛かる。
ラストシーンからエンドクレジットにかけて流れる曲は、1970年にヘロインの過剰摂取によって27歳の若さで亡くなった伝説的シンガー、ジャニス・ジョプリンの楽曲「コズミック・ブルース」(1969)。時間が過ぎ去り、友人たちはいなくなるが私は前に進むという歌詞だが、これが今のシルヴィの心境なのだろうか。
ブラッド・ウルフはコミックが元ネタ
第2話は、エピソードタイトルにジョークが盛り込まれている。タイトル「ブレイキング・ブラッド」は、冴えない高校教師がドラッグディーラーに変貌する大人気テレビシリーズ「ブレイキング・バッド」(2008~2013)のモジリ。ロキがブラッド(=X5)をブレイク(壊す)しようとすることと、ロキがその時にブレイキング・バッド(道を踏み外す)しそうになるので、その2つの意味を重ねたネーミングだろう。
そのブラッドは、今回の注目キャラクター。第1話で登場し、シルヴィの行方を追ったTVAのハンターX5が、1977年のロンドンで消息を断ち、ロキとメビウスが追跡する。X5はブラッド・ウルフという名の映画スターになり、シリアルキラーを描く映画『ザニアック!』(Zaniac!)に主演していた。この元ネタはマーベルコミックで、ブラッド・ウルフは1982年刊行の「Thor #319」に初登場。コミックでは、幼少期に母親に虐待されたトラウマを持つ俳優で、映画でシリアルキラーのザニアックを演じていた際、ダーク・ディメンションから送られて来たクリーチャーと融合し、実際に連続殺人鬼ザニアックになってしまう。
X5/ブラッド・ウルフを演じた俳優ラファエル・カザルは、幼馴染のアフリカ系男性とヒスパニック系男性の複雑な関係を描き、オバマ前大統領がその年のベストムービーの1本に選んだ『ブラインドスポッティング』(2018)に製作・脚本で参加し、主人公の一人も演じている。同作のテレビ版ではクリエイターを務め、同じ役を担っている。
映画スターといえば!MCUとのリンク
ロキたちが『ザニアック!』のプレミア会場に向かう途中、路地の壁面に貼ってある映画のポスターは、『エターナルズ』(2021)に登場した不老不死の種族エターナルズの一人・キンゴ(クメイル・ナンジアニ)が主演した作品のもの。キンゴは、インド映画の世界で父から息子へと何代にも渡って同じ名前を継承するボリウッドスターを装っているので、これもこの時代のキンゴに違いない。
MCUのリンクはセリフにも見られた。ロキに尋問されるX5が「お前が何かするほど事態は悪化する メビウスにも B15にも 母親にも」と言うと、ロキの表情が変わるが、これは『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)でのロキの母の死のことを指す。また、ロキが尋問中に思わず感情的になったメビウスを慰める時に言う「私がスタークを窓から投げたのは作戦じゃない」は、『アベンジャーズ』(2012)での出来事。MCUファンなら誰もが思わずニヤリとするセリフだ。こういう小ネタがまたありそうで、次回も楽しみ。
「ロキ」シーズン2はディズニープラスにて独占配信中
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