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映画たて・よこ・ななめ見!

役所広司のおっちゃん感が唯一無二!必要な無駄がある映画

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 ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、ヴィム・ヴェンダース監督がメガホンを取り、役所広司が主演の映画『PERFECT DAYS』。役所の演技力と、監督の演出力にウーマンラッシュアワーの2人も衝撃! “何も起きない“魅力の本作を村本が語り尽くす!(取材・文:森田真帆)

今回の映画は『PERFECT DAYS』です。

 『世界の涯ての鼓動』などのヴィム・ヴェンダース監督と、『ファミリア』などの役所広司が組んだヒューマンドラマ。東京・渋谷の公衆トイレ清掃員の何げない日常を映し出す。『スラッカーズ』などの柄本時生のほか、麻生祐未石川さゆり田中泯三浦友和らがキャストに名を連ねる。第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最優秀男優賞を受賞した。

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好みが正反対のウーマンラッシュアワー

村本大輔(以下、村本):この映画は、めっちゃ自分のタイプの映画やったわ。オレ、基本的にインパクトが強い、何か大きいことが起きるタイプの話じゃなくて、しっとりとしたロードムービーみたいな、何事もない優しい日常を描いた作品が好きでさ。パラダイスは物足りないやろ。パラダイスは大味の映画が好きやからな。

中川パラダイス(以下、中川):あ、そうそう。僕は、ドッカーンってなんか爆発したり、いきなり人が死んだりする映画が好きなんやからな。まあいつも映画の前知識なしで観てるから最初は誰かいきなり死なんかな、殺されんかなって期待して観てたけど、だんだん、あ、これそういうのちゃうわってわかったよ。しかも観ていくうちに、今回は結構真面目に映画のメッセージをちゃんと感じ取りたいって思ったわ。今までは思ったことなかったのに、初めて思った!

村本:お前は感情を取り戻したピノキオか! 

中川:いや、ピノキオは嘘つきやん! 今までこんなんなかったのにさ、やっぱり映画からはちゃんと感じ取らなあかんなって。こういう地味な映画で、トイレ掃除する50代の夜寝る前に本を読むのが趣味のおじさんを描いた映画なんて、ほかにないやんって思ったんよ。エイリアンの映画とか、パターン化されたのっていっぱいあるやん。地味な映画でも人の心を動かす、唯一無二の映画があるんやって感動したわ。

村本:え? どう心が動いたん?

中川:いや、この映画は唯一無二やってことに心動かされたんやって。トイレ掃除するおっちゃんの映画なんて唯一無二やわーって思ったってこと!

村本:お前はうっすいな!

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役所広司のおっちゃん感がすごすぎる!

村本:この話はさ、1人の50代のおじさんの日常の話やねんけど、このおっちゃんがすごいミニマリストで毎朝仕事行って、とくに無駄口もたたかず、真面目な人やねん。自分の世界をすごく大切にしてるというかさ。なんかつい日本って、正規雇用されてる人が正義みたいなとこあるやん。でもそうじゃなくて、このおっちゃんは幸せやねん。別に正規雇用じゃなくても、40代、50代で自分の好きなことをしながら普通に生きている人がすごいええなって。普通やったらそういう人を可哀想に描きがちやけど、この監督は自分のペースをちゃんと持ってるおっちゃんを描いていて、そこがええなって思ったわ。

中川:そうそう。別に暗いおっちゃんってことでもないやん。孤独なおっちゃんっていう感じでもなくてさ、日々の生活に不満持っているわけでもなくて、自分がしたいことしてるだけ。だからしゃべりかけたらしゃべってくれる系な無口な感じやねん。だからコミュ障ではないわけ。心は躍っているけど口に出さへんっていうキャラクターがめっちゃリアルでさ。1日一言も話さず過ごしているけど、全然不幸じゃなくて楽しく生きてんねん。それがええわ。

村本:たまーにしゃべんねんな。あれがいいよな。日本にいるとさ、SNSで周りの人と比べたりして、周囲に自分のペースって乱されがちやん。でもそのペースを守って大事にする人ってすごい幸せと思うねん。やっぱり役所さんの演技ってすごいわって思ったわ。あの無口で、50代のわざとらしくない、独身のおっちゃんのナチュラルさがすごすぎてめっちゃリアルやった。柄本時生さんの演技もめっちゃええねん。今の若者と、おっちゃんの会話劇が素晴らしい。こういうやつおるわ! って。若い女の子にキスされて、ポッとするような顔とかさ。

中川:ポッとするけどさ。でも童貞じゃないっていうのもわかるやん。ちゃんと女抱いてきてるおっちゃんやねん。50代の人がちょっとチュッとされて、うれしいけどでも別にそれ以上何かをするっていうほどでもないという。ちゃんと彼の人生のバックグラウンドまで見えてくんねん。

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巨匠ヴィム・ヴェンダース監督が描く美しい世界と会話劇

村本:普通の日常なのに、なんでこんなにええんやろって思っていたら、映画『パリ・テキサス』の監督なんやろ! オレ、あの映画めっちゃ好きやねんけど、なるほどなって思ったわ。

中川:たしかに、無駄がないよな。

村本:映画観てるとさ、いらん無駄と必要な無駄があるやん。多分この監督は、必要な無駄だけ入れてんねん。いらん無駄は切っていて。会話がすごくたまにボソボソっと話すんやけどさ。そのほんまに日常のようなちょっとした掛け合いがすっと胸に入って、映画に馴染むっていうな。それがすごい。あと音楽もいいのよ。この映画のサントラめっちゃかっこよかった。

中川:めっちゃ少ないセリフなのに、そこからそれ以上の情報量が入ってくんねん。さっきも言ったけどさ、このボソボソっていうセリフだけで、めっちゃその人がどう生きてきたのかがわかってしまう。あーこのおっちゃんは無口やけど、でも人から好かれるんやなっていうね。そういう人柄が見えるっていうのがすごかったわ。

村本:絶賛やんか。

中川:いや、好みではないけれど、たまにはこういうのもいいなって。あと村本が好きそうやなって思いながら観てたよ。映画観ていてさ、雨降っているシーンとか、なんか街並みが映ってるとなんか村本好きやろなって思うねん。

村本:うれしいわ。さすが相方やな。オレも新宿行って風俗の看板見るたびに中川のこと思い出して、あーあいつ好きやろなって思い出してるよ。

中川:映画と関係ないやん! 仲良しやん!

村本:そういえば、和牛の川西を狙ってるって聞いたで。お前は、金になるならすぐに股を開く男やからな!

※記事内容には個人の意見が含まれています。

『PERFECT DAYS』12月22日公開
(C) 2023 MASTER MIND Ltd.

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ウーマンラッシュアワー・プロフィール

2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。

村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。

村本大輔X(旧Twitter)

中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。

中川パラダイスX(旧Twitter)

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