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シネマトゥデイが選ぶ映画ベスト20(2023年版)

 2023年1月1日からの1年間に劇場、そしてストリーミングサービスで日本初公開された全ての映画から、シネマトゥデイ編集部がベスト20作品を決定! ストーリー、キャスト、演技、映像、社会性、エンターテインメント性、観客動員数、話題性などあらゆるポイントを踏まえて議論し、今年を代表する20作品を選び出しました。

第1位『ゴジラ-1.0』

 『ALWAYS 三丁目の夕日』などの山崎貴が監督・脚本・VFXを担当した東宝ゴジラシリーズ第30弾。戦後で焼け野原になった日本をさらに破壊するゴジラの非情さ、スペクタクルな破壊描写、計算し尽くされた音響・映像美は国内外で大絶賛。日本映画のさらなる可能性を世界中に知らしめた。敗戦後の日本の明日を信じてゴジラに挑む元軍人たちのドラマにも胸が熱くなり、泣けるゴジラ映画としても話題をさらった。コロナ禍を抜け出した映画館を、さらに活気づけたことも評価に値する。今年の映画界を象徴する作品として文句なしの1位だ。

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第2位『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

 アメリカで暮らす中国系移民の中年女性が、ひょんなことからマルチバースに意識を飛ばすことができるようになり、カンフーマスターをはじめとした“別の宇宙の自分”の力を得て悪と対峙する姿を描いたSFアクションコメディー。れっきとしたエンタメ作でありながら、マルチバースという設定を巧みに使い、移民、そして家族のドラマが感動的につづられるという新しさがあった。今年のアカデミー賞を席巻して映画界に新しい風を吹き込み、アジア系俳優の再評価につながった点でも時代を象徴しているといえ、この高評価につながった。

第3位『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

 巨匠マーティン・スコセッシ監督がレオナルド・ディカプリオと6度目となるタッグを組み、アメリカの黒歴史に切り込んだ超大作。クズ野郎を演じたディカプリオのハマリぶりをはじめ、黒幕ロバート・デ・ニーロ、圧倒的な存在感のリリー・グラッドストーンといったキャスト勢の名演、そしてストーリーのテンポの良さで、3時間26分という大長編ながら長さは感じず、没入させてくれる。スコセッシの名匠たるゆえんを感じさせる作品であり、本年度のアカデミー賞候補の大本命としても注目の一作。

第4位『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

 銀河を救ってきたはみだし者ヒーローチームが、今度は仲間を救うため、完璧な世界を作ろうとする支配者に立ち向かうシリーズ最終章。ロケットの悲しい過去と共に、疑似家族を形成してきたメンバーそれぞれの成長を見つめ直し、彼らがほろ苦くも前向きな旅立ちを決心するまでを描く。爆笑ギャグやマーベル映画屈指のアクションシーンも満載で、最終章でありながら、物語は湿っぽくならずに感動の大団円を迎える。DCスタジオCEOに就任したジェームズ・ガン監督のMCUにおける集大成としても申し分ない一本として4位にランクインした。

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第5位『PERFECT DAYS』

 名匠ヴィム・ヴェンダース監督が名優・役所広司とタッグを組み、日本で撮り下ろしたヒューマンドラマ。公共トイレで清掃員として働く平山を通して、淡々とした日々の中にある喜びや美しさを描き出す。本作でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞した役所の演技には、セリフではなく表情だけで喜怒哀楽の全てを表現する凄まじいまでの迫力があり、その主人公の日常の営みを光・音・画角を自在に操って切り取ったヴェンダース監督の手腕は圧巻。完成度とクオリティーは段違いで、映画史に刻まれるべき傑作としてトップ5入りを果たした。

第6位『フェイブルマンズ』

 巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督による自伝的作品。世界中で愛される作品の数々を手掛けてきたスピルバーグ監督が、映画に夢中になった自身の原体験を描く。しかし、単なる自伝ではなく、万人に受け入れられる物語として脚本や演出を成立させた手腕は鮮やか。楽しむことや身近な人を喜ばせることが原動力になるという根本的な思いから映画愛まで、どの場面にも魅力があふれ、心が躍る。第47回トロント国際映画祭で観客賞(最高賞)を受賞し、支持を得たことも納得の逸品で、構成要素のバランスの良さからこの順位に落ち着いた。

第7位『マイ・エレメント』

 火、水、土、風のエレメントたちが暮らす世界を描いたディズニー&ピクサー作品。エレメントの質感が繊細に表現され、映像のクオリティーの高さはピクサー随一。特に火と水が重なり合う瞬間は、湿度まで感じさせるほどリアルで美しい。メッセージ性も強く、“触れる”ことの重要性と必要性を描いた点は、コロナ禍を知る現代人にとって意義深い。さらに監督の実体験が投影された“愛の物語”には、世界共通の真理が込められており、多くの人から共感を得た。映像と物語ともに高水準であることから、ベスト20の中でアニメ作品としてはナンバーワンに輝いた。

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第8位『君たちはどう生きるか』

 宮崎駿監督が、約10年ぶりに発表したスタジオジブリの長編アニメーション。第2次世界大戦中を舞台に、不気味なアオサギに導かれた青年が異世界に足を踏み入れる冒険活劇で、集大成とも言うべき宮崎ワールドに圧倒される。洗練された映像美、『風の谷のナウシカ』などへのオマージュも満載で、世界の批評家からも高く評価された。公開初日まで情報を一切明かさない挑戦的な宣伝手法を試みるも“吉”と出て、大作映画の宣伝手法の一つとして世に知らしめた功績も大きい。手描きアニメの底力を証明した力作として、トップ10入りにふさわしい。

第9位『バービー』

 時代を超えて愛されるバービー初の実写映画化。古くから女性の美の象徴とされてきたバービー自身が、女性の生きづらさに気がつき、自分らしさとは何かを追い求める姿が斬新だ。テーマは重いがタッチは軽く、万人受けするエンタメ作品になっていることが、ヒットの要因になった。監督・脚本・製作総指揮を務めたグレタ・ガーウィグと、主演だけでなく製作も手掛けたマーゴット・ロビーの熱意の賜物であり、2人の功績は大きい。今だからこそ観るべき作品として、トップ10入りにふさわしい作品だ。

第10位『月』

 宮沢りえ石井裕也監督とタッグを組み、不都合な真実に真っ向から取り組んだ野心作。重度障がい者施設で働く元作家の女性が、同僚の男性が抱く正義感や使命感が思わぬ形で変容していく様子を目の当たりにする。人間として否定される感覚を味わってきたメインキャラクターを演じるキャストたちの熱量は凄まじいものがあるが、中でも”普通”と”狂気”の共存を見事に体現した磯村勇斗は強烈な印象を残しており、見るものの心に深い杭を打ち付ける。障がい者介護の深刻さを提起する意味でも“今見るべき映画”として選出された。

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第11位『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

 さまざまな次元のスパイダーマンたちが集う世界を舞台に、コミックがそのまま動き出したかのような斬新なアニメーション表現で話題を呼び、アカデミー賞にも輝いた『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編。前作でスパイダーマンとなった主人公マイルスが、歴代スパイダーマンも抗えなかった運命に立ち向かおうとする物語は感動的と高評価。実質二部作の前編ながら、歴代ソニー実写版『スパイダーマン』シリーズだけでなく、MCUともつながる展開でファンの長年の夢をかなえた点も評価されランク入りした。

第12位『首』

 北野武監督による、本能寺の変が題材のバイオレンス時代劇。権力の中枢にいた武士たちが、いかにバカバカしく、狂ったことをやっていたのか。現代社会への批判にも通じる北野監督のシニカルな視線がさえわたり、強烈なバイオレンス描写、アドリブを生かした笑いのバランスも絶妙だった。西島秀俊加瀬亮中村獅童浅野忠信大森南朋をはじめとした日本を代表する俳優陣の振り切った演技も素晴らしい。惜しむべきは、カンヌ国際映画祭でのお披露目から日本公開まで半年ほど空き、注目度の高さを興行成績につなげられなかった点で、この順位となった。

第13位『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

 ハリウッドの大物プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタインの長年にわたる性的暴行事件を暴いた記者2人によるノンフィクションを映画化。世界的な「#MeToo」運動のきっかけとなった告発記事が世に出るまでの軌跡をスリリングに描く。絶対的な権力者に立ち向かう記者や被害者の苦境がひしひしと伝わり、誰もが他人事ではいられなくなるほど真に迫った名作。巧妙な駆け引きから緊迫感を生み出す俳優陣の演技も素晴らしく、人間の尊厳に関わる深い感動が込み上げる。映画化した意義のある作品としてこの順位に選出された。

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第14位『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

 キアヌ・リーヴス演じる伝説の殺し屋ジョン・ウィックの死闘を描く人気シリーズ第4弾。ドニー・イェン真田広之による夢のチャンバラ対決をはじめ、本格派のアクションスターたちが、過去に類を見ないほどの規模で集結。日本人スタントチームも尽力したアクションシーンの完成度は極みに達しており、文字通りのエンドレスバトルで、シリーズ最長となった2時間49分の上映時間はあっという間に過ぎる。まさにシリーズ最高傑作と言える完成度で、今年のアクションを代表する一本として選出された。

第15位『怪物』

 第76回カンヌ国際映画祭で坂元裕二が脚本賞を受賞したこともあり、上半期の注目作の一つとなった是枝裕和監督作。何といっても物語の軸となる2人の子供を演じた黒川想矢柊木陽太が圧倒的に素晴らしく、是枝作品における演出の妙を痛感させられる。加えて、本作の公開を前に亡くなった坂本龍一さんによる音楽が、美しい映像を鮮明に脳裏に焼き付け、見終わった後に余韻を残し続ける最強の相性を見せ、心を掴んだ。結末には賛否両論ながら、是枝作品としては珍しい外部脚本を採り入れた意外性も新鮮で、高評価へとつながった。

第16位『別れる決心』

 男が転落死した事件を追う刑事ヘジュンと、被害者の妻で容疑者のソレ。取り調べを行ううちに二人は惹かれ合っていく……という禁断の恋をにおわせるシチュエーションから始まる。女は本当に男を愛しているのか? 罪を逃れるための芝居なのか? 観客は疑わしいソレの一挙手一投足に振り回されて謎を膨らませ、ネット上で考察が展開されるほどの反響を呼んだ。タン・ウェイが妖艶に演じたファムファタール、カメラワークの斬新さや、サスペンスとしてクオリティーの高さ、そしてアジアの才能の勢いを感じさせる一本として選出された。

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第17位『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

 日本発の人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」の世界を映画化。世界的に有名なゲームを完璧に再現し、文句なしに親子が一緒に楽しめるファミリームービーに仕上がっている。ただ、ストーリーに厚みがなかったことから、批評家からは酷評されてたのも事実。問うべきテーマなどが盛り込まれていれば、さらに評価は高くなったはず。評価は賛否両論だったが、マリオのファンがマリオのファンに向けて作った、ファンムービーの成功例だということは間違いない。正真正銘の “マリオ愛”が随所に感じられることに敬意を表し、ベスト20入りとなった。

第18位『エゴイスト』

 2020年に亡くなった高山真さんの小説に基づく本作で、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と恋に落ちる主人公の浩輔を演じた鈴木亮平が圧巻。ニューヨーク・アジアン映画祭ではライジングスター・アジア賞を受賞している。松永大司監督が鈴木や宮沢らとセッションを重ねて作り上げた生々しい芝居、1シーン1カットのドキュメンタリータッチのカメラワークなど、スクリーンだからこそ伝わる醍醐味が詰まっていることが選出の大きな理由。LGBTQ+インクルーシヴディレクターなど専門家の協力を得た表現も評価につながった。

第19位『枯れ葉』

 フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキ監督が引退を撤回して撮り上げた一風変わったラブストーリー。これぞカウリスマキ監督の集大成といえる内容で、無口な労働者階級の男女が出会って愛を見つけようとする姿が、朴訥と、ユーモラスに、懐かしさを感じさせるカラオケ音楽とともに描かれている。小ぶりで見過ごされがちな映画ではあるものの、心をぽっと温かくさせ、世知辛い世の中に一筋の希望をもたらす特別な輝きを持った作品として、ベスト20入りを果たした。

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第20位『市子』

 杉咲花演じる主人公が、恋人にプロポーズされた翌日に姿を消すショッキングな展開から始まる本作。彼女の壮絶な秘密が徐々に浮かび上がっていくスリリングな展開、その秘密を通して“見えない弱者”を描く社会問題を内包した脚本がまず秀逸。とりわけ、関わる者によってガラリと顔を変えていく杉咲の演技が圧巻。“普通に生きたいだけなのに”という切実な思いを伝える真に迫った演技は、間違いなく彼女の代表作として刻まれるはずだ。自身の戯曲を映画化した監督やキャストの熱量が作品に大きな影響を与えており、ランキング最後の1本として選出した。

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