傷心のウーマン村本、胸がキューッと苦しくなる乙女な瞬間を告白
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、リリー・フランキーが演じる妻を亡くした男が妻を弔おうとイギリスに渡り、旅をする姿を描いた日英合作映画『コットンテール』。村本と中川は、相変わらずまったく違う目線で、映画の魅力を語る!(取材・文:森田真帆)
今回の映画は『コットンテール』です。
『万引き家族』などのリリー・フランキー、『ベルファスト』などのキアラン・ハインズらが共演した、イギリス、日本合作の家族ドラマ。イギリスにある「ピーターラビット」発祥の地に遺骨を散骨してほしいという亡き妻の願いをかなえようとする、夫と息子一家の姿を描く。監督はパトリック・ディキンソン。『羊の木』などの錦戸亮、『東京島』などの木村多江のほか、高梨臨、イーファ・ハインズらが共演する。
一気に入り込めた瞬間
中川パラダイス(以下、中川): この映画はリリー・フランキーさんがイギリスを旅するって話やったから、今渡米中の村本のこと思い出したわ。今回はなんでこの映画を選んだん? やっぱり旅する映画やったからなん?
村本大輔(以下、村本):オレはもともと『あなたへ』っていう映画が好きでさ。高倉健が奥さんの遺骨を持って、九州をキャンピングカーで回るロードムービーな。この映画のストーリーを読んだときにその映画を思い出して、めっちゃええなと思ってん。
中川:ロードムービーって僕があんまり好まんタイプやん。結局、何も起きないやつ。でも、今回は奥さんが認知症になるやん。そしたら、急に怖くなってきてさ。僕は嫁さんの方が若いからさ、僕の方が先に認知症になる可能性あるなあと思ったら、急に入り込めるようになったわ。やっぱり身近に感じることがあると一気に入り込めるよな。だから、ラストはめっちゃ感動したわ。前にこの連載で観たアンソニー・ホプキンスの『ファーザー』もホラーみたいに怖かったやん。
村本:え? オレは中川と漫才していたときからずっと認知症やと思っていたで。気づいてなかったん? 今オレがいる国の大統領も認知症の噂あるしな。こないだ日系人の収容所のことまるで昨日のことのように謝っていてさ、もしかして赤ちゃん返りみたいに、マジで最近のことやと思ってたんじゃないかと思ったほどやわ。
女子力高めの村本の注目ポイント
村本:オレはさ、なんか電車に乗ってるときに人と出会っていくのがめっちゃ良かったわ。後ろに流れる景色もイギリスの田舎のキレイな景色でさ。ああいうのを観て、楽しく感じるというかさ。
中川:へー! なんでなんやろな。そこなんやー。
村本:なんか回想シーンで、付き合いたてで行ったお寿司屋さんのとことかさ、ああいうのめっちゃええわ。オレは常に女の子の目線やからさ。あの初めて出会ったときの甘酸っぱい感じがええやんか! そういえば、あの若い俳優、めっちゃリリー・フランキーに似てたよな。
中川:あーこの人がおっさんになって、リリー・フランキーになるんやなって容易にわかる感じやったよな。
村本:お前はさ、この映画みたいに奥さんとの思い出の場所とかないわけ?
中川:そやなー。付き合いたての時はラブホばっかりやったからな。湖のほとりでうさぎのまねしたかな。そんなおしゃれなことしたことないし。あの若いカップルみたいな会話なんてしたことないわ!
村本:最悪やな。ラブホって。不倫カップルか! なんかいい思い出ないん? 一緒にうどんをすすったとかさ。
中川:奥さんと付き合いたての頃は、村本とコンビ結成して、ちょうどめっちゃ人気が出てきて忙しくなり出した時期だったから、会うとなったら夜中とかやったんよ。それが嫁さんとのいい思い出。夜中の12時から朝の5時まで一緒にいて「ゆっくりしていっていいよ」って言うねん。
村本:ラブホでそのセリフはおかしいやろ。オレは、ああやって奥さんのこと思い出すって言ったリリーさんの気持ちわかるよ。別れた恋人のことを毎回思い出すもん、そんで毎回思い出しては胸がキューッてなんねん。
中川:乙女やん。
村本:乙女なんやって。
共感できる?全く異なる2人の目線
村本:嫁が、「わたしの遺骨を大国町のバーにまいてください」っていったらどうする?
中川:(お笑いコンビ)わんだーらんどのたにさかのバーやんか。やめとけその話は!
村本:オレのおかんなんて、海に自分の遺灰まいてくれって言っててさ。いろいろ調べてんねん。
中川:村本はおかんに、もし外国に骨まいてほしいって言われたらこの映画の主人公みたいに行く?
村本:行くと思うわ。そらおかんの願いは無碍にできんやろ。
中川:それやったら村本は主人公の気持ちわかった? 僕は主人公の男の動きがめっちゃ独りよがりすぎて、なんなん? っておもたって言うか。でも最後まで観ているとだんだん理解できたから、最後は共感できたんやと思う。奥さんと息子は血繋がっているから絆が深いけど、なんか結局は家族といえども夫婦は他人やな。
村本:オレは家族のシーンもめっちゃ気になったわ。オレは子供いないし嫁もおらんから、あのときちっちゃかった息子がこんなことになるんやって思うとめっちゃ怖くなった。
中川:でもそれって子供がいない人の意見でさ、僕は息子が小さい時から大きくなるのも見てきているから、反抗期な時もあったし、そうじゃない時もあったのはわかる。ずっと流れがあるから、そんないきなり大きくなったわけじゃないねん。だからそこは僕の経験から、主人公の気持ちがわかったとこやわ。
村本:めっちゃええこと言うやん。
中川:それよりさ、「遺灰をご希望の場所にまいてきます」っていうビジネスもうかりそうやない? 行きたいけど行けないって人の代わりにまくねん。面白そうやけどな。
村本:こんな素敵な映画を観たのに、ようそんなひどい話できるわほんまに!
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『コットンテール』3月1日公開中
(C) 2023 Magnolia Mae / Office Shirous
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。