【ネタバレ】『デューン 砂の惑星PART2』のアレはどんな意味?7つのギモンを徹底解説
米作家フランク・ハーバードの傑作小説を、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化したSF映画の続編『デューン 砂の惑星PART2』。すさまじい没入感に圧倒され後、膨大な情報量のストーリーに「おや、アレってどんな意味?」と疑問に思ったシーンがあるだろう。映画をさらに楽しむために、その疑問をスッキリ解決しよう!(文・平沢薫)
※本記事はネタバレを含みます。映画『デューン 砂の惑星PART2』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
1:なぜレディ・フェンリングはフェイド=ラウサを誘惑した?
レディ・フェンリング(レア・セドゥ)が属する女性だけの集団ベネ・ゲセリットの遺伝子交配計画のため。ベネ・ゲセリットは、数十世代に及ぶ遺伝子交配によって、時間と空間を超越する究極的な存在クウィサッツ・ハデラックを生み出そうとしている。主人公ポール(ティモシー・シャラメ)もその可能性があるが、ポールと同じハルコンネン家の血筋であるフェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)も候補者の一人であるため、劇中でレディ・フェンリングが毒針と箱で彼を試す。また、レディ・フェンリングがフェイド=ラウサの遺伝子を手に入れたのは、2人がクウィサッツ・ハデラックではなかった場合も、遺伝子交配計画を続行するため。
2:ガーニー・ハレックが楽器を奏でて歌っていたのはなぜ?
ポールが戦闘の途中で再会するガーニー・ハレック(ジョシュ・ブローリン)は、前作にも登場したアトレイデス家の家臣でありポールの武術の師匠。彼が楽器を演奏しながら歌うシーンがあるのは、原作での「バリセット(=この宇宙の楽器)の名手で詩人」という設定が有名だから。また、ポールは本作で彼に「足音で誰だか分かった」というが、同じセリフが前作にも存在する。
3:なぜアトレイデス家は核兵器を隠していた?
原作では、大領家(力を持つ家)はみな核兵器を所有しているが、お互いに核兵器を人間に向けて使用しないという協定を結んでいる。原作では、ポールは敵の防嵐壁に穴を開けるために核兵器を使う。
4:ポールが<命の水>を飲んだのはなぜ?
<命の水>とは、サンドワームが溺死する際に体外に排出する毒素を含んだ水。この水は、教母だけがこれを飲んで体内で毒素のない形に変質させることができ、その際に、これまでの教母たち全ての意識に連結され、一度に多数の場所に偏在するようになる。ポールは、これに挑んで成功し、未来をより見渡すことができるようになった。また、これにより、自分が教母と同じ能力を持つクウィサッツ・ハデラックであることを証明した。
5:アニャ・テイラー=ジョイが演じたキャラクターは?
続編での出演がサプライズ発表されたアニャ・テイラー=ジョイが演じたのは、ポールの妹アリアが成長した姿。映画では、ポールの母レディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)が妊娠中の胎児の状態で、ポールが未来を見るビジョンの中に登場する。原作では生まれて、小説のラストでは2歳児になっている。母ジェシカが<命の水>を飲んで教母になったときに母の胎内にいたため、教母と同じ能力を持つ。
原作小説の続編「デューン 砂漠の救世主」では、アリアはポール、チャニ、イルーラン姫と並んで、物語の中心となる人物。この小説を映画化する第3作が実現すれば、その映画で間違いなく活躍が期待される。
6:映画と原作、違う点は?
映画の大きな流れは原作と同じだが、違うところも多々ある。最も大きな違いはエンディング。ポールが皇帝の娘イルーラン姫と政略結婚し、チャニに結婚は形式であり、愛しているのはチャニだと語るところは原作と同じ。映画ではチャニはこの状況を拒否してその場を去るが、原作はジェシカがチャニに「自分と同じく歴史では妃と呼ばれる」と言うところで終わり、続編小説ではチャニはこの状態を受け入れている。また、原作ではポールの政略結婚の前に、ポールとチャニの間に息子レトが生まれるが、まだ赤ん坊の息子は、ポールやチャニと離れてフレメンの居住地にいた時、皇帝の親衛隊サーダカーの攻撃により死んでいる。
原作は、ポールの結婚の場面で終わるが、映画では大領家連合がポールの皇帝即位を認めずに戦いを仕掛け、ポールもフレメンと共にその戦いに身を投じていく。この状況は、原作では小説「デューン 砂の惑星」ではなく、その続編小説「デューン 砂漠の救世主」で描かれている。
もう一つ大きく異なるのは、チャニの考え方や人物像。映画のチャニは、フレメンたちの集会で「救世主を信じると救世主に頼るようになる」と発言し、人々に救世主伝説の危険性を警告する。また、ポールの政略結婚にも納得せず、その場から去る。これらは、原作にはない映画オリジナル。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が製作を希望する第3作でも、チャニは、ヴィルヌーヴ監督がこの映画化作で描きたいテーマを象徴する人物になっていきそうだ。
他の女性たちも、原作以上に自分の意思で積極的に行動する。ポールの母ジェシカは、原作ではポールが救世主になることの危険性を懸念するが、映画では率先してベネ・ゲセリットが広めた救世主伝説を補強していく。イルーラン姫が皇帝から意見を求められる立場なのも、レディ・フェンリングがフェイド=ラウサを毒針と箱で試すのも、映画オリジナルだ。
もう一つの大きな違いは、映画には、皇帝・領主会議と並ぶ政治面での三大権力の一つ、航宙ギルド(=香料メランジを使って宇宙を航行する人々の組織)がまったく登場しないこと。原作では、この組織に属するギルドマンは、代理人たちにも姿を見せないことから、姿が著しく変形して人間のようには見えないとも言われているため、ヴィルヌーヴ監督は、リアリズム重視である映画の世界観に似合わないと判断したのかもしれない。
7:「砂漠の救世主」映像化の可能性は?
気になるのは、映画第3弾の進捗状況。現時点では、スタジオからの公式発表はない。しかし、映画公開前からヴィルヌーヴ監督は、第3弾として続編小説「デューン 砂漠の救世主」を映画化したいとさまざまな場所で発言しており、昨年12月には、第3作の脚本はもうすぐ完成すると公言している。
監督と同じく原作ファンで、映画の音楽を担当したハンス・ジマーも、Varietyの取材で「本作の撮影2日目にドゥニ(・ヴィルヌーヴ監督)がやってきて、黙って私のデスクの上に『デューン 砂漠の救世主』の本を置くのを見て、私の仕事が終わっていないことが分かった」と語っている。
さらに、前作でポールと仲良しのアトレイデス家の忠臣ダンカン・アイダホを演じたジェイソン・モモアも、「ダンカンの未来は明るい……おっと、それを言っちゃいけないんだった」「前作に使われなかったすごくクールなシーンがあった。第3作でそれを取り戻したい」と Mens Health で意味深な発言を残している。ダンカンは前作で命を落としたが、続編小説「デューン 砂漠の救世主」で意外な形で復活し、中心人物の一人になることを踏まえた発言だろう。
そして、映画を製作したレジェンダリー・エンターテインメントのCEOジョシュ・グロードも、全米公開後に「もしドゥニが適切な脚本を書き上げて、本作に匹敵するような経験を観客に提供できると考えるなら、そうしない理由はないだろう」と語っている。今後の公式発表に注目しよう。
映画『デューン 砂の惑星PART2』は全国公開中