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話題沸騰!!鳥山明さん「SAND LAND」アニメシリーズ、その魅力とは?

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(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND製作委員会

 Disney+ (ディズニープラス)「スター」で配信がスタートしたアニメ「SAND LAND: THE SERIES」(以下「SAND LAND」)が大きな話題を呼んでいる。原作は「DRAGON BALL」や「Dr.スランプ」などの作品を送り出し、先日惜しくも逝去したマンガ家の鳥山明さんによるコミック。全13話のうち、前半6話が2023年に公開された映画『SAND LAND』に新たなシーンを追加して再構築した「悪魔の王子編」、後半7話は鳥山が新規キャラクターデザインとエピソードなどを提案した新作「天使の勇者編」となる。4月25日には、PlayStation 4/5・Xbox Series X/S用ゲームがリリース予定で、さらに話題が広がりそうだ。本作の魅力に迫る。(文:大山くまお)※本文には一部内容に触れる部分があります。

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あらすじ

 舞台は、戦争をはじめとする人間の愚かな行動と天変地異が重なり、荒れ果てた砂漠と化した国・サンドランド。川が枯渇してしまった上、国王が水資源を独占して私腹を肥やしていたため、人々は水不足に苦しんでいた。初老の保安官・ラオは“幻の泉”を探すため、悪魔の王子・ベルゼブブとお目付け役の魔物・シーフとともに冒険の旅に出る。これが「悪魔の王子編」のおおまかなストーリーだ。

 「天使の勇者編」は、サンドランドの隣国・フォレストランドが舞台となる。とてつもない力を秘める奇跡の物質・アクアリウムをめぐり、国を支配してサンドランド侵攻を企てるブレット大将軍、将軍と手を組んだ天使・ムニエルと、レジスタントに協力するベルゼブブたちが戦いを繰り広げる。

キャラクターの魅力

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(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND製作委員会

 主人公のベルゼブブは、人間の子どもに水を分けてやるようなピュアな悪魔。彼が自慢する悪行は、「夜ふかししたうえに歯も磨かずに寝てやった」「トイレの後、30回に1回ぐらい手を洗わない」などなど。なんとも可愛いらしい。とはいえ、闇のパワーを得ることで強大な力を発揮する。演じる田村睦心の快活な声が、ベルゼブブの真っ直ぐさを表現している。

 水不足の人々を救うために行動を起こした保安官のラオは、正義感の塊のような男だ。男の渋みがギュッと凝縮されているようなキャラクターだが、だからといって偏屈ではなく、魔物に協力を求める柔軟さも持ち合わせている。「老人と戦車が描きたかった」と語っていた鳥山の一種の理想像が込められているのかもしれない。山路和弘の声がラオのキャラクターに奥行きを与えている。

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(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND製作委員会

 ほかにも、怠け者で臆病だけど調子に乗りやすいシーフ、砂漠の悪党・スイマーズなど、ユニークなキャラクターが次々と登場し、特徴的なメカや巨大生物などとともに暴れ回る。これだけでも「SAND LAND」は十分楽しいのだが、本作に魅力はこれだけではない。

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絵の魅力

 もともと原作は、鳥山がアシスタントを使わずに一人ですべての絵を描いたという作品。それだけ“鳥山明の色”が濃厚に出ている(本人も「好みを優先してしまった」と認めている)特に顕著なのがキャラクター、そしてメカニックだ。

 たとえば、ラオたちが乗り込む戦車は、非常に車高が高く、丸っこくてどこか可愛らしい。それでいて細部まで描きこまれており、いかにも鳥山らしいメカだと言える。この戦車が、自在にぐるぐると動き回り、戦車戦を繰り広げるのだからたまらない。ほかにも、四輪駆動車、ホバーバイク、巨大空母などが次々と登場する。

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(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND製作委員会

 作画は2Dと3Dのハイブリッドだが、違和感はまったくない。とにかく「鳥山明の絵をそのまま動かそう」というスタッフの執念が実を結んでいる。監督は神風動画に所属し、「ドラゴンクエスト」シリーズのオープニングムービーを手がけてきた横嶋俊久、キャラクターデザインと総作画監督を、長きにわたってアニメ「ドラゴンボール」シリーズの作画を担当してきた菅野俊之が担当している。

テーマの魅力

 「SAND LAND」は子どもから大人まで純真な気持ちで楽しめる冒険活劇だが、同時にいくつもテーマが内包されている。鳥山が描いたテーマは、いずれも非常に現代的であり、高い政治性も持っている。

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(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND製作委員会

 まずは“偏見”。ラオのセリフに「偏見は正しい判断を狂わせてしまうぞ」というものがある。「魔物だから信用できない」と言う相手に語ったものだ。しかし、ベルゼブブはピュアな魂の持ち主であり、ラオの“幻の泉”探しにも協力してくれている。

 ラオがこう語ったのには理由があった。かつて戦争で異民族を虐殺してしまった過去があったのだ。国王と政府は、異民族が大量破壊兵器を作っていると喧伝し、ラオはそれを信じて攻撃命令を出した。しかし、高度な技術を持った異民族は水を作り出そうとしていただけだった。異民族に対する偏見によって虐殺を行ってしまったラオは、今でもそのことを悔い続けている。“戦争犯罪と贖罪”も本作のテーマの一つだろう。

 “権力の腐敗”も大きなテーマだ。権力者が富を独占して国民を苦しめた上、水を高く売りつけて、さらに富を増やしていく。国民の不満から目をそらすため、都合の悪いことはすべて魔物や異民族のせいにして、歴史を隠蔽し改ざんする。まるでどこかの国で、現在進行形で起こっている問題のようだ。このような欺瞞と不正を繰り返す権力者に怒りを燃やして打ち倒すのが、鳥山が描いた「SAND LAND」の物語である。

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(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND製作委員会

 「天使の勇者編」では、天使のムニエルが前国王の公開処刑を行うとき、「正義は必ず勝つ」「正義のセレモニー」と「正義」という言葉を繰り返して民衆を扇動していた。これだって近年SNSなどでよく見かける光景だ。ベルゼブブが叫んだ言葉が耳に残る。

「そもそも悪魔がなんで悪いんだ!?」

 繰り返すが、「SAND LAND」は明るく楽しい冒険活劇であり、きわめて高い政治性を帯びた物語であると言える。だからこそ、多くの人に観てもらいたい作品なのだ。

スターオリジナルシリーズ「SAND LAND: THE SERIES」はディズニープラス「スター」で世界独占配信中

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