嫌われ教師の決断…衝撃のラストに大号泣!『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』って?
提供:ビターズ・エンド
第96回アカデミー賞で作品賞をはじめ主要5部門にノミネートされ、助演女優賞に輝いた『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』。全寮制の名門校を舞台に、学校一嫌われ者の先生と、超ひねくれ者の問題児、相性最悪な2人と寮の料理長で一人息子を亡くしたばかりのメアリーがこともあろうことかクリスマスと年越しを一緒に過ごすハメに……。予測不可能なアクシデントが続出する3人の休暇は可笑しくて、でもどこか切なくて愛らしい。そんな3人がたどる思いがけないラストには、思わず誰もが涙する。人生を変えてしまうかもしれないプレシャスな本作の魅力を徹底解剖します。(文:鷺沼よしお+シネマトゥデイ編集部)
“不快コンビ”と息子を亡くした料理長、孤独な3人の人生を変える休暇
主人公は、いつも不機嫌で無愛想、学校で一番嫌われている非常勤教師のハナム。演じるポール・ジアマッティの名演はさすがで、彼が一体どんな人生を送って来たのか……とたちまち引き込まれます。そんな彼をざわつかせるのが、優秀だけど性格に難ありで、誰とでもすぐに衝突する生徒のアンガス。思わずハッとするような美貌で観客の心をわしづかみにしますが、好感度はゼロ。こちらもかなりワケありの様子でグイグイ物語に引き込まれていきます。お互いに興味もなければ反りも合わない2人が、ひょんなことから広い学園で冬休みを一緒に過ごすことになります。というのも、アンガスの母親が突然再婚相手とハネムーンに行ってしまったから。そしてハナムは、有力議員の息子を忖度ナシに落第させたことから、休暇中も寮に残る生徒の子守役を押しつけられるのです。
顔を合わせればいがみ合う2人が安穏とやり過ごせるわけもなく、見かねた寮の料理人メアリーが2人に寄り添います。全身で哀しみを漂わせるメアリーの存在感といったら! 言葉を発さずとも、“居る”だけで泣けてきます。戦争で一人息子を亡くし深い悲しみを抱える彼女は、彼女なりのぶっきらぼうなやり方で、せっかくのクリスマスや年越しをムダにしないよう心を砕きます。やがて3人は“課外授業”と称して大都会ボストンに向かうのですが、それぞれに事情を抱えた小旅行は思ってもみない大事件を引き起こすことになります。ことごとくトラブル&アクシデントの連発で、一体どうなってしまうのかと胸のざわめきが止まりません。
品質保証の名優&超イケメンの新人!料理長役女優はアカデミー賞を受賞!
無愛想すぎる教師ハナムにふんするのは、ハリウッド随一の名脇役として活躍。日本でリメイクもされた『サイドウェイ』(2004)や低予算ながら賞レースを席巻した『アメリカン・スプレンダー』(2003)などの良作で主演も務めてきたミスター“品質保証”の名優ポール・ジアマッティ。『サイドウェイ』で“ゴールデンコンビ”と絶賛されたアレクサンダー・ペイン監督と20年ぶりのタッグを組んだ本作では、不器用で人付き合いが苦手、でも学問や教育には確かな情熱を持っている初老の男を絶妙な愛嬌を交えながら繊細に演じて、アカデミー主演男優賞にもノミネートされました。
問題児のアンガスを演じるのは、本作で応募者800人の中から抜擢され映画デビューを飾った21歳のドミニク・セッサ。撮影した学校の一つで演劇を学んでいた彼ですが、カメラの前に立つのは初めて。ティーンエイジャーならではのはつらつさと思春期の悩みを見事に演じ、いま最注目の大型新人となりました。そして哀しみと慈愛に満ちたメアリーを好演した歌手、女優のダヴァイン・ジョイ・ランドルフは前評判の通り、本作で初のアカデミー助演女優賞を手にしました。そんな卓越した演技力を持つ3人だからこそ、本作を比類なき名作に押し上げているのです。
ユーモアと悲哀…アカデミー賞常連監督の手腕
監督はホロ苦い人生の悲哀をユーモアを交えて綴ってきた名匠アレクサンダー・ペイン。『アバウト・シュミット』(2002)、『サイドウェイ』(2004)、『ファミリー・ツリー』(2011)、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)など、これまでに8本の長編映画を発表し、そのほとんどがアカデミー賞候補に選ばれており、累計のノミネート数はなんと19回! 特に役者から名演技を引き出す演出力は傑出しています。また、本作は時代設定である1970年代の質感にこだわっており、どこか懐かしいノスタルジックなムードもたまりません。
思いがけない秘密が明かされるラストに号泣必至
映画で描かれているのは、彼らの人生のうちのごくわずかな数日間にすぎませんが、やがてかけがえのない時間に変貌していきます。ハナムとアンガス、お互いに嫌い合っていた二人の誰にも言えなかったそれぞれの“秘密”とは……? そして、最愛の息子を亡くした哀しみと混乱を抱えるメアリーがこの風変わりな休暇を経て見いだすものとは……? 冒頭からはまったく想像つかない方向に物語は転がっていきます。とりわけ他人と関わることを避けて自分の世界に閉じこもっていたハナムが、人生をかけた大きな選択をするラストは、号泣する準備をしておいた方がいいかもしれません。
世代も性格もバラバラ、お互いにいけすかないはみ出し者たちに大切な絆が芽生える『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』。スクリーンからあふれ出る優しさと、誰の人生にも起こりえる貴重な瞬間をぜひ映画館のスクリーンで堪能してください。劇場を後にするときには、あなたの人生にとっても忘れられない一本になっていることでしょう。
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は6月21日より全国公開
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』予告編>>
配給:ビターズ・エンド
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